フィールド1、始まり、その1(上)
猫山ことりです。こんにちわ。
本格トリップファンタジーです
ワタルはどこにでもいる、ごく普通の中学一年の男の子。
現実世界の日向ワタルは突然トリップした。
だがそこは科学に生きる人間と、魔法使いの獣人族が
互いにいがみ合う異世界だった。
ワタルはその争いに巻き込まれて。
だがその世界でワタルは強力な魔力を持つ少年ゼオンと
獣人族の少女ユウリィと出会うことになる。
ワタルは元の世界に帰れるのか?ワタルの冒険が始まる。
よろしくお願いいたします。
――――― 5月晴れの季節。
なのに珍しく、朝から雨が降っている。
あの日。
僕はどうしても言えなかった言葉を、言うつもりだった。
その日もいつも通りの日々が過ぎるはずだった。
なのに僕はその日、つまらない事で彼女と喧嘩して、
謝ることさえできないまま放課後が過ぎていった。
でも偶然、帰り道で彼女の姿を見つけたんだ。
「ワタル。あれって由羅じゃないか?」
マサハルの声も無視して僕は走り出した。
だいたい昼間、喧嘩したのだって、アイツが僕と由羅ちゃんの
2人を冷かして茶化したからだ。
だから僕は心にもないことを言って、彼女を怒らせてしまった。
背後でマサハルのはやす声が聞こえる。
アイツは親友だけど男友達が女と仲良くするのを見ると、
俄然ワルぶりに拍車がかかる。
中学の男達によくある事で、他人の恋の邪魔ばかりするのだ。
雨はますます激しくなる。
交差点の向こうで彼女の赤い傘が見えた。
もう少しで追いつく!
その時、誰かが僕の中で声をかけた。
〈ワタル、止めて。)
〈そっちに行っちゃ危ないわ〉
訳が分からなかった。
幻聴だと思った。
でも、その声の険しさに僕の胸が騒ぎ出した。
だから信号が赤に変わるのも、かまわずに僕のスニーカーは速さを増した。
あの日。
僕はどうしても言えなかった一言を言うつもりだった。
ずっと彼女を見てきたから。
ずっと好きだったから。
「由羅ちゃん!」
だけどその言葉は、とうとう最後まで伝えられなかった。
何故なら。
僕の声に振り向いて、赤い傘越しに彼女の顔が見えた。
交差点の真ん中で。
帰り道の雨の交差点で彼女に声をかけた瞬間、
彼女はトラックにはねられ、死んでしまった。
あっけないほど突然に。
僕の悲鳴に驚いて人ゴミが野次馬に変わった。
アスファルトをきしませた、タイヤの跡と
後に続くクラクション。
救急車の音。
野次馬の中で僕を見つけて走り出たマサハルが、パニックになった僕を
羽交い絞めに止めて、救急車!救急車!!」と叫ぶのが聞こえた。
……後は訳が分からない。
夢だ。これは夢なんだ。
こんな現実があるわけがない。
僕はまだ、彼女に何も言っていない。
何も言っていないのに。
「ワタル・・ワタル。しっかりしろ」
マサハルの声が呪文みたいに聞こえる。
ああ、これは悪い夢だ。
夢なら、どうか覚めてくれ。




