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004

「あ……」

 現国の授業の時から空には少し雲がかかりはじめていて、不安になっていたが、放課後にはその不安が的中し雨が振り始めていた。

 周りが挨拶をして教室を出始めると、リネも鞄に教科書を入れながら帰宅の準備を始めた。

「リ~ネ。じゃあまた明日ね」

「うん。クラブがんばって」

「雨の日に体育館でクラブって蒸し蒸ししてイヤなんだけどね」

 机の横にかけられた体操着の袋をボールに見立てるように両手で掴む。

「そんなこと言ってると、バスケのレギュラーになれないよ」

「わかってるって。じゃあねっ」

 リネの肩をぽんっと叩いてから小走りで教室を出ていった。

「さて、当面の問題は傘をどうするか。だなぁ」

 つぶやきながら少し開けた窓から手を伸ばし雨具合を確かめる。

 濡れて帰るには雨が強すぎる。

「とりあえず、靴箱まで行きますか」


「リネ先輩~!」

 下足箱にいつも聞きなれた声に呼ばれて振り返ると、両手に荷物を持ったカナタが鞄を持ったてを軽く左右に振っていた。

「おぉ!」

 ぽんっと手を叩いたリネは小走りで駆け寄り

「あの……よろしければ一緒に帰りませんか?」

 少し頬を染めながら彼の手をそっとつかんだ。

「いや、いつも一緒に帰ってるじゃないですか! 何で今日だけそんな態度で」

「ぶっちゃけると、主に君のその左手にあるものが目当てです」

 そう言いつつ、左手に持っていた荷物……傘を預かるように取り上げるリネ。

「ぶっちゃけすぎです! 体目当てとかよりもなんかショックです!」

「いや、差した傘を持つのは君だから、体目当てでもある」

「さらに輪をかけてショックですっ!」

 そのような楽しげな会話(?)をしつつ、一旦別れそれぞれ靴を履き替えてから、待ち合わせる場所で再度合流した。

「先輩は傘を忘れたんですね」

「そだね」

 リネは広げた傘の中にそっとお邪魔した。

 彼氏との相合い傘という初めてのシチュエーションで少し緊張したが、彼の態度が普段通りだったので、リネもそれ以上は緊張せず自然に隣に並んで歩きだした。

 いつもより近い距離で、いつものように話をしながら帰路につく二人。

「明日なんですけど、待ち合わせは何時にします?」

「うん。デートだね。ちょっと早めにお昼を摂ってから遊びに行こっか」

 前回のデータでは12時を過ぎた頃に待ち合わせてから食事する場所を探したが、休日ともあり、ゆっくりと食事できる所を探すだけでも苦労した。

 そんな苦い経験をした彼の方も静かにうなずいた。

「では、11時ぐらいですかね? ……でもそのあたりの時間でも食事する所は人でいっぱいそうですよね」

「人が多いとゆっくり話しながら食べるのは無理そうだしね。じゃあ逆に午後1時ぐらいに待ち合わせる?」

 リネの提案に首を縦に振るのを見て

「場所は前と同じ駅前ってことで」

「はい。……あっ」

 いつも2人が分かれる場所にさしかかった。

「今日は家まで送りますよ」

「え? そこまでしてもらわなくても平気だよ」

「いえ、雨に降られて明日風邪になったら僕が後悔しますから」

 リネは傘から手を伸ばして雨の強さを確かめる。

 学校を出た頃よりも多少は弱くなっているが、家まで濡れて帰るには厳しい強さでもあった。

「そうだね。お願いしちゃおかな」

「はい、まかせてください」

 そして、いつもの分かれ道で二人は別れることなく同じ道をあるき始めた。

 少し歩いたところで、リネの足並みが鈍くなる。

「?」

 それに気づき、リネの顔をみると、少し思い詰めた表情で道の先を見ていた。

「どうしました? 先輩」

「……う~ん。やっぱりちょっと寄り道していい?」

 何に対しての「やっぱり」なのかよくわからないが「いいですよ」と快諾した。

 それから少し歩いた道の真ん中で、リネは彼の袖口をつかみ立ち止まった。

「ここで、ちょっと待って」

 立ち止まるが、そこは特に何もない道の真ん中。右手に電柱がある程度だ。

「……はい」

 彼も少し暗い表情をさせながら、リネの後を追って電柱のそばに寄る。

「……」

 無言で電柱のそばでしゃがみ込んだリネはゆっくりと手を合わせた。

 その姿を何も言わず傘を持ち続ける。

 1分ほど経っただろうか。リネは立ち上がって彼に目を向け

「ありがとう。じゃあ行きましょうか」

「はい」

 そして何事もなかったかのように二人は歩きだした。

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