二十七話 死闘の予感(4)
高橋副隊長との特訓の後、ヘトヘトな体で医療チームの大木さんの元に向かった。
「大木さん」
「間宮か。また随分と疲れているな。栄養剤でもやろうか?」
「いいですよ……。それより、反町若菜は?」
「ああ、マイクロチップは取り除けたよ。うまく出来ているから後遺症、障害は残らないという可能性も出てきた。目が覚めて元の人格に戻ればいいが……」
「ええ。そうですね」
本来の反町若菜に戻れば何か聞き出せるかも知れない。
反町隆史という男がどういう人物なのか、どういった家庭環境だったのか、聞きたい事はあまりにも多い。
「まあしばらくは絶対安静だ。話をするなら1週間は期間を開けてもらわないと困る」
「わかりました。しばらく僕も大変なことになりましたからちょうど良いです」
「なんだそりゃ?」
「スパルタ特訓です」
「…….あまり聞かないことにしよう」
「ははは……。じゃあ僕はこの辺で」
「ああ、いつでも来い。できれば倒れる前にな」
僕は千鳥足で仮眠室に向かうとベットに倒れるように寝転んだ。
とんでもなく辛い。高橋副隊長の特訓は鬼のような特訓だ。
とにかく自分の動きについてこいとやったこともないマニューバをひたすら繰り返しやるというものだ。
何度酔ってリバースしたか覚えていない。
そんなものは最初のうちだけと言われたが本当にそうなのだろうか?
そして、あんな動きを身につけられるのか不安で仕方がない。
「でも、やるしかないんだろうな……」
僕は目を閉じて仮眠を取ることにした。
反町隆史の言うそう近くない未来とはいつなのかわからない。季節はもうすぐ初夏となる。あの日が近づいてきている事に今更ながら気がついた。




