二十六話 疑念の先は……(1)
ベルゼブブ討伐から2週間が経過したころ、反町博士や神山研究所のことを調べていた時に第三作戦室に白衣を着た女性が入ってきた。
「あの、飯塚室長はおられますか?」
椅子に座ってファイルに目を通していた飯塚隊長は立ち上があて女性に近づいた。
「榊か。翻訳が終わったのか?」
「はい。ところどころ既に増田研究員が来られた時に説明されていますが、こちらを……」
榊という人から隊長が受け取ったのは約30枚ほどの書類の束で僕の位置からでは内容が分からない。
隊長は一気に30枚もの書類に目を通して榊さんに礼を言うとまた自分の席についてファイルと書類を見比べている。
「隊長、何ですかその書類?」
山内隊員も疑問に感じたようで隊長に質問する。
「以前、本部から送られてきた書類があってな。それを今来た技術開発藩の榊に翻訳してもらっていたのだ。あまりにページ数が多くて翻訳に時間がかかっていたようでな。既に我々の知っている情報ばかりだ。しかし、ここにある34枚はまだ皆に知らされていないようだ」
「どんなことが書いてあるんですか?」
「簡単に言えば細胞がどのように変化してきたのかが書かれている。この書類によると大きく分けて4回、細かく分けると15回細胞に変化が起こっているようだ。まあこのデータは半年以上前のデータだ。今現在の細胞はさらに進化しているだろうな」
「その細胞の変化に、あの男がかかわっているんでしょうか?」
僕の言うあの男というのは2週間前、ベルゼブブを操っていたフードを被った男のことだ。
「恐らくそうだろう」
「うーん、やはり反町博士が怪しいのでは?」
「そう単純でもないかもしれない」
そう言って会話に入ってきたのは武田隊員だ。
武田隊員は巨大モニターにパソコン画面を投影させた。
「見てください。最初の巨大生物との戦いの後、神山研究所に調査が履いているようでその時に反町と思われる遺体の一部が見つかったようです」
「なに?それじゃあ反町博士はもう死んでるってことか?」
「どうやらそのようだ」
武田隊員は残念そうに首を横に振った。
「じゃあやっぱり上層部の仕業?」
「泉、そうとも言い切れないんだよ。結構頑張って基地のマザーブレインのデータベースに侵入して上層部のことを調べられるだけ調べたんだけど上層部に細胞学の知識を持ってる人間なんてだれ一人いない」
完全に積んでしまった。
神山研究所の研究員は他にもいるが誰も神山博士の思想に共感した者ばかりだったということが間宮一郎の手記を読んでいる高橋副隊長から明らかにされていた。
「それじゃあいったい誰が?」
「そのことについて俺から少し話がある」
「高橋……」
「隊長、間宮、ちょっと……」
何のことかわからないが、僕は隊長、副隊長とともに第三作戦室を後にした。




