八話 音速の翼 (1)
その日、旅客機が乗客325人を乗せていつも通り航行していた。
「機長、今日も何事もなく1日を終えられそうですね」
30代ほどの若い副機長が機長に語りかける。
「そうだな。そうだといいな…」
50代半ばのダンディーな髭を生やした機長は答える。
「そう暗くならないでくださいよ。確かに最近は巨大生物の出現で毎日怖いですけど、いつも特別攻撃隊の方達が安全に処理してくださってますから」
副機長は機長の方に顔を向けて、ネガティブな考え方を変えようと試みる。
「そうなのだがなぁ」
機長は冴えない顔ではぁっとため息をつく。やはりそうそうネガティブな考え方は変わらないのだろう。
恐ろしいものは恐ろしい。しかし、もうこの生活にも慣れなければならないと皆心の何処かで思っている。
副機長は前を向いた。そこで副機長はなにかを見つけた。
「うん?なんだあれ、機長、前方に謎の影が見えます!」
「あぁ、確かにあるなぁ。飛行機か?とりあえず通信繋げてみろ」
副機長は素早く通信を開始した。しかし……
「機長、繋がりません!」
「では、まさか…!」
その時、旅客機がグラグラと揺れ、機内が暗くなる。機長と副機長は上を見上げた。
そこには巨大な鳥の姿があった。
巨大な鳥は一瞬でその場から姿を消した。
「なんなんですか?あれは!」
「とにかく、管制室に連絡して、管制室から特別攻撃隊に連絡してもらおう」
副機長は管制室に連絡をした。
「管制室、管制室、応答願います」
『こちら管制室、ボーイング767便いかがしました?』
「巨大な飛翔体、いや巨大な鳥を群馬県上空で確認した!至急巨大生物特別攻撃隊に連絡を」
『わかりました。至急連絡します』
これが今から30分前の話である。