二十五話 強大な暴食(4)
玄関から飛び出した時、謎の人物は車に乗り込んでいた。
「待て!」
「くそ、間宮車だ!車で追うぞ」
高橋副隊長が車に近づくと何処からか大量のハエが飛来してきた。
「ハエ?でも、それにしては大きすぎませんか?」
「さっきの奴が放したんだろう。恐らく放っておけば巨大化する!」
「え?」
「俺の予想だが、さっきの奴が巨大生物出現の黒幕だろう」
「それじゃあ奴は、反町博士って事ですか?」
「その可能性は高い。だが、それでは説明できないこともある」
「なんなんですか?それって?」
話を遮るようにハエが向かってくる!
「話は後だ。コイツらを落とす」
僕たちはフォースガンに虫によく効くフレイムカートリッジを差し込んで、火炎弾を発射した。
ハエは次々に燃え落ちてものの数秒で殲滅することに成功した。
急いで車に乗り込むと、高橋副隊長は急発進した。
ハエで時間を稼がれたせいで謎の人物の車から離されてしまった。
「それで、説明できないことってなんですか?」
「考えてもみろ。俺たちは極秘裏に茨城県のお前の実家に来たんだ。それをどう知った?」
「あ、そうか。そうですよね……」
「……まあ、そんな事は奴を捕まえてみればわかる事だ。急ぐぞ!」
高橋副隊長は更にスピードを上げた。
みるみる距離は縮まっていきとうとうあと500mまで距離を縮めた。
謎の人物は焦ったのか県道方面ではなく、山の方へと進んでいく。
「何か考えがあるんですかね?」
「わからないが、県道に出て車に紛れない分追いやすい。こちらとしては好都合だ」
山に入るにつれてどんどん坂が急になり道も細くなっていく。
僕たちは道が狭いせいで抜かして道を遮る事が出来ずただただ後ろをついていくしかない。もしかしたてこれが狙いだったのだろうか?
根気よくついて行くと、とうとう諦めたのか広い草原に入り、車を乗り捨てた。
僕たちも車を降りてフォースガンのカートリッジを実弾発射のできるマグナムカートリッジに変更した。
「観念しろ!」
僕と高橋副隊長はフォースガンを構えて謎の人物に向けた。
謎の人物は黒いフード付きのパーカーを着ていて髪で目元が隠れていて顔は確認できない。
身長は170cm程で体型は普通だと思われる。
謎の人物は手を挙げて諦めたようだ。
「何者だ。フードを取って顔を見せろ!」
「そうはいかない」
低い声からどうやら男性であるようだ。
しかし、何故だろうか?その声からは余裕が感じられる。
「何?」
「情報が漏れたのは仕方がない。私の処分が遅かったのが問題なんでな」
フードの男はポケットに手を突っ込んで何かを操作した。
すると、男の乗っていた車が爆発して中から巨大なハエが現れた。
「こいつ、車の中に」
「さて、こいつをどうにかしないと死人が出るぞ?」
「き、貴様!」
高橋副隊長はフォースガンを発砲したが弾丸の軌道がハエの羽が生み出す風のせいでそれて命中しなかった。
「あとは頼むぞ、ベルゼブブ」
「あっ、待て!」
男はそういうと走って山の中に消えていった。
「くそっ!逃げられた!」
「間宮、奴のことは諦めるぞ!今はこいつをどうにかする方が先だ。一旦車で逃げて、基地から応援を呼ぶぞ」
「了解!」
車に乗り込むと急いで方向転換をすると坂を一気に下っていった。
僕はすぐさま車の中の無線機を手に取り基地に連絡を入れた。
「第三作戦室!応答してください!」
『こちら第三作戦室武田。間宮どうした?』
「ハエの巨大生物が茨城県に出現!付近に避難勧告と第三作戦室から応援頼みます!」
『わかった!すぐに向かわせる!』
「応援呼べました!」
「よし、近くでビッグスターの着陸できる場所まで移動するぞ」
基地との連絡を終えて少しして、隊長から連絡がかかってきた。
『巨大生物が現れたそうだな』
「はい。今、応援要請をしてビッグスターの着陸できる場所まで移動しています」
『わかった。俺たちもすぐに向かう。巨大生物は移動していないか?』
「移動していません。現在巨大化中で、まだまだ大きくなりそうです」
『うむ、わかった。気を付けろよ』
「はい」
通信を切ると無線機を置いた。
「隊長か?」
「はい。すぐに合流するそうです」
「わかった」
道が開けた所で高橋副隊長は速度を一気に上げた。
僕たちは近くの大きな公園に到着するとその地点をビッグスターと飯塚隊長に伝えて、僕たちは巨大生物の様子を伺う事になった。
「奴はあのハエ巨大生物をベルゼブブと言っていたな」
「ええ、確か暴食を司る悪魔の名前です。見た目もまんまハエみたいですから、相応しい名前ではありますね」
「しかし、あの大きさは今まででは一番だ。100メートルは超えているだろう」
「それでもまだ大きくなっているから恐ろしいですね」
僕達はいつ襲い掛かってきてもいいようにフォースガンにはフレイムカートリッジを装填している。
炎に弱いのは確認済みである。
小型の火器でもダメージを与えることはできるだろう。
ビッグスターの到着が遅くなれば僕達は死を覚悟しなければならないだろう。
「間宮、この仕事は今まででもトップクラスに厳しいぞ」
高橋副隊長の顔は強張り、怒りにも似た空気と凄まじい殺気を放ち、巨大生物を睨みつける。
僕は高橋副隊長のことを恐ろしく感じた。




