二十五話 強大な暴食(3)
茂文叔父さんにはすぐに繋がった。
仕事が休みの日であったようだ。
『もしもし、間宮ですが』
「茂文さん、お久しぶりです。コウキです」
『おお、コウキ君か。電話してくるなんて珍しい。何かあったのかい?』
僕は事情を説明して祖父一郎が仕事のことで何か言っていなかったか聞いた。
『あー、言ってた言ってた。俺と親父はよく横浜の中華街で食事してたんだが、その時によく愚痴を言っていたよ』
「その時、爺さんは誰について言っていた?」
『よく言っていたのは反町博士についてだったよ。どうも神山博士や親父とは思想が違っていて衝突が絶えなかったみたいだ』
「反町博士のその後なんて知らない……よね」
『そこまではわからないな』
「ありがとう助かったよ叔父さん。それじゃあ」
僕は電話を切った。
「どう?何かわかった?」
「ええ、どうやら神山博士と間宮一郎は反町博士とよく衝突していたようなんです。理由は思想の違いのようです」
「思想の違いか……。高橋、反町博士に関する事が日記に書いてないか?」
「随分と書いてある。それによるとどうやら反町博士は独自の研究をしていたようでそれが神山博士や間宮博士との衝突に繋がっているようだ。いくら衝突しても反町博士は自身の研究を辞める気はなかったようだな。本来の研究は万能細胞を作り出して今まで助けられなかった生命を救う事だが、反町博士はそれとは別の方向に向かったということか」
こうなると反町博士が怪しくなってくる。
神山研究所で得た知識と培養装置、細胞、そして研究所のような場所があれば巨大生物を生み出す事は可能だろう。
「……よし、泉。武田に連絡を入れて反町博士について調べるよう頼んでくれ」
「了解です」
茂文叔父さんのお陰でようやく進展を見せた。
「こちらはこちらで調べを進める……」
「静かに!」
突然、高橋副隊長が飯塚隊長の言葉を遮って覇気のある声で発した。僕たちは口をつぐんで動きを止めた。
「なんだ、どうした高橋?」
小声で飯塚隊長が訪ねるが、高橋副隊長は口に人差し指を当てて静かにしろとジェスチャーした。
シーンとした部屋の中、外で吹く風の音もはっきりと聞こえてくる。
よく耳をすませると風の音に紛れているが微かに足音が聞こえてくる。
どうやら足音はこちらに近づいて来ているようだ。
高橋副隊長は腰のホルスターからフォースガンを取り出して構えた。
何がなんだかわからない僕はとりあえず高橋副隊長と同じようにフォースガンを構えた。
フォースガンを構えて数秒後、足音がしなくなった。
普通の訪問者ならすぐにインターホンを押すはずだが押さない。それどころか僕達のいる客間のふすまを挟んだ先に誰かがいる。
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
なんとも言えない緊張感が部屋を包んでいた。
危険であることはすぐわかった。父と母は固まって部屋の奥にいる。僕は音を立てないように父と母の前に移動した。
それが正しい判断だった。
突然、三発の弾丸が部屋に飛びこんできた。
僕と高橋副隊長はフォースガンを発砲して反撃した。
すぐさま走り去る音が聞こえて僕たちはすぐさま動き出した。
周りを見渡して誰も負傷していない事を確認した。
「負傷者なしです」
「よし、高橋、間宮二人で追うんだ。泉は基地に連絡して間宮さん夫婦と安全な場所へ!」
「「了解!」」
「行くぞ間宮」
「はい!」
僕と副隊長は急いで玄関に行き靴を履くと発砲してきた謎の人物を追った!




