二十五話 強大な暴食(1)
山口県宇部市の蟲討伐から1ヶ月もの時間が経った。
何か手がかりを掴もうと慎重に基地内のスーパーコンピューターにハッキングを行なっているが重要な情報は得られぬままであった。
「くっそ、駄目だ」
ここのところずっとパソコンと睨めっこしていた武田隊員が椅子に寄りかかりうがぁーっと声を上げた。
「拉致があかない。セキュリティーが固すぎるし下手をすればハッキングがバレるし、ったく!冗談キツいぜ!くっそこの!」
あまりにも疲れているのか口調が普段より荒くなってしまっている。
「まあまあじっくり行こう。とりあえず武田はしばらく休め」
山内隊員が優しく声をかけて淹れたてのコーヒーを手渡した。
「あーすみません。ありがとうございます」
「しかし、拉致があかないのは事実だ。せめてもうちょっと神山研究所のもっと詳しい情報があれば良いんだけどな」
「確かにそうですよね。隊長とか何か持ってないんですかね?」
「さぁな?確か神山公造博士が大学教授だった時の教え子だったっとは言ってるけど」
「大して情報は持っていないぞ」
タイミングを見計らったかのように飯塚隊長が第三作戦室へと入室した。
「今手元にあるのは神山研究所の研究員名簿と以前の捜索で手に入れた手記だけだ」
一番接点のあるであろう飯塚隊長が言うのだからそれだけしかないのだろう。
……一番接点のある?
「すみません、いいですか?」
僕はあることを思いついて手をあげた。全員の注目が僕に集まった。
「もしかしたらなんですけど、実家に行けば僕のお爺ちゃんの遺品か何か残っているかもしれません。それに父はお爺ちゃんから神山研究所について聞いているかもしれません。……証拠はありませんけど」
「確かに間宮のお爺さん、間宮一郎さんは研究所で神山研究所で研究員として勤めていた。もしかしたらもしかするかもしれんな」
「すこしでも情報が欲しい時だ。行ってみる価値はあるんじゃないか?」
「行ってみましょう」
話は決まった。僕は早速父に巨大生物特別攻撃隊として聞きたいことがあるから今から家に向かうと連絡を入れた。
「父の承諾は取れたのでいつでも行けますよ」
「早速だが向かおう。行くのは俺と間宮、泉、それからトレーニング中の高橋を無理やり連れて行く」
懸命にトレーニングをしている高橋副隊長を無理やり引っ張るのはどうかと思うが、頭の回転が速く頼りになるのでいた方が良いだろう。
戦闘機で行くわけにもいかないので普段あまり使われない基地の一般車両を運転して向かう事になった。
「運転は間宮に任せる。お前が運転した方が手っ取り早いからな」
「わかりました。それじゃあ行きましょう」
「山内、留守を頼むぞ。何かあればすぐ連絡を入れてくれ」
「そこは任せといてください。あ、あも、こっちはこっちで色々調べときますよ」
サムズアップをして山内隊員が答える。
「よろしく頼むぞ!さあ行こう」
第三作戦室を出て、僕達は実家のある茨城県の片田舎へと向け出発した。




