二十四話 闇に蠢く蟲(4)
けたたましいサイレンの音で僕は目を覚ました。
ジャージを投げ捨てると隊員服を着てビッグスター内の作戦室へ入る。
「どうしたんですか?」
入ってすぐの場所にいた泉隊員に問うてみる。
「巨大生物が出たみたい。私もさっき来たばかりだから詳しくは知らないけど……」
時刻を見ると深夜の2時だ。昼間に活動しない夜行性の生き物である事は確定したと言ってもいいだろう。
「すぐに出撃だ。頼むぞ」
「「了解!」」
スターライトに乗り込むと計器類の確認をしてすぐさま発進した。
睡眠をとって体力的にも余裕がある今ならいつも通り操縦できるはずだ。心には今もモヤモヤとしたものが残っているが今は巨大生物を倒さなければならない。
巨大生物が出現したのは宇部市郊外の山の中からだ。今までの巨大生物と比べても大きい部類に入る。
「でかいですね……」
「うぇぇーー!気持ち悪い!なによ!ムシってこういうのなのー!」
明らかに馬鹿でかい百足だ……。確かに足は細長いのであの足跡とも一致するだろう。僕も気持ち悪くなってきた。
『とっととやるぞ!こんな奴巨大じゃなくても抹殺対象だろうがよ!』
『よし、小林クラスタースパイク用意だ。一気に吹き飛ばそう。容赦はいらねぇだろ。あんなキモいやつ!』
この隊、百足が嫌いな人間しかいないのだろうか?この巨大生物に対する殺意が今までの比じゃないくらい高い。
『ちょっと待ってください』
やる気満々の戦闘隊に冷静な声で若宮隊員が制止するよう促した。
『なんでだ!』
『なんでもです。あのですね、一体だけなんて一言も言ってないですよ』
『あん?』
『今回出現したのは百足型巨大生物ギガントセンチピードと……ゴキブリ型巨大生物ブラックグロウです』
コードネームからギガントセンチピードは大百足という妖怪が元だろう。ブラックグロウは見た目そのままだが……というか誰が命名したのだろう?
『不快すぎるぞ!この害虫駆除!』
『小林、一応巨大生物だ。俺たちが処分するしかない……とはいえ、嫌だな』
「僕たちは百足じゃなくてゴキブリ退治になりそうですよ……」
『なんでだよ間宮!』
「いやだって、ゴキブリ飛ぶじゃないですか……」
なんだか全員の気分が一気に沈んだ気がした。
『ご名答だ間宮』
ビッグスターにいる高橋副隊長から残念な連絡が入ってきた。もう高橋副隊長があったら確定である。
『我々はゴキブリ型巨大生物ブラックグロウを倒すぞ。お前たち!気合いを入れろ!……確かにゴキブリは生理的に嫌だろうが、これも仕事だ!』
どうやらあの副隊長でもこの巨大生物を相手にするのは嫌らしい。そりゃあそうだゴキブリが好きな人など数える程しかいないだろう。
『ブラックグロウは今いる場所から山の裏手に回れ。そこにいる』
ライトをつけて言われるがまま山の裏手に回ると、居た。
明らかに黒い何かが蠢いている。
『うげぇーー!キモい!マージで無理!』
「ちょっと無理!本当に無理!間宮くんどうにかしてよ!」
「待ってくださいよ僕だってきついですよ!」
とてもじゃないがこれは気持ち悪い。これを倒すのか……。
戦闘前から先行き不安になってきた……。
「た、戦えます?」
『やるしかないだろう!』
もうみんなやけだった……。




