二十四話 闇に蠢く蟲(1)
巨大生物特別攻撃隊日本支部の上層部、もしくは神山研究所の所員が巨大生物出現の原因を作り、そして、世界中に巨大生物を意図的に発生させている。
そんなことが本当にあるのか否か。そんなことが頭から離れなかった。
副隊長は早速行動を起こしているようだし、僕たちの知らぬところで隊長とも話し合いを続けているらしい。
未だに決定打に欠けているからか中々大きく出られない今は慎重に調べていくしかなさそうだ。
「いくら探しても何にも出てこないな」
「流石に基地のコンピュータ内部を探ると確実に上にバレそうだし、迂闊には無理だ。ウィルスでも潜り込ませてみるか?」
「武田よぉ、そりゃもっと危険だろ?」
「なら小林、お前もっといい案あるのか?」
こういう時は武田隊員が一番頼りになるのだが、そう上手くはいかない。何週間もやって調査できているのは神山研究所関連の事の一部が限界であるようだ。
情報統制でもされているのかもしれない。国絡みならあり得る話だが……。
いや、なにはどうあれ、ここまで情報が出てこないということは何か隠しているように感じてしまう。でも、
「本当に上層部がやっている事なんでしょうか……」
「……間宮、副隊長も言っていたけど、ありえない話じゃあない。大体俺たち一般隊員は上層部と接触することはできないんだ。上層部が何か企んでいても俺たちにはわからない。だからこそ、間宮の面接時、参謀が出向いたことが異例中の異例。だから怪しんでいるんだか」
「情報がこんなに出てこないのもおかしいしね」
「…………。まあ、お前の気持ちがわからない事もない。俺たちだって混乱してるし、何処かで副隊長の言ってる程陰謀めいた事なのか?って少し思ってる。だけどな、そう考えると辻褄が合うところが多い。間宮、お前は上層部と俺たち第三作戦室の飯塚隊長、高橋副隊長のどちらを信じる?どう考えてもそれはお前の自由だし、どちらを選択しようとそれを反対しようなんて俺たちは思わない。よく考えてみろ」
僕は少し早めに仕事を終えて家に戻ってきた。
風呂と食事をすませるとすぐにベットに横になった。
寝ようとしたが、先ほどの山内隊員の言葉はずっと僕の頭にこびりついていて眠れない。
上層部と第三作戦室どちらを信じるかよく考えてみろ……か。
副隊長の言うことは正しいと思う。副隊長の言った通りに考えれば巨大生物が世界各地に出現する理由も、僕の入隊試験時の対応も納得できる。
だけど、巨大生物特別攻撃隊という正義の部隊が裏で巨大生物を出現させているなんて思えない……いや、思いたくないのか……。
僕が巨大生物特別攻撃隊に入隊したのは昔憧れた正義のヒーローになりたかったなんていうピュアでベターな理由からだ。
実際僕は巨大生物特別攻撃隊として巨大生物と戦って人々を守ってきた。
でももし、巨大生物特別攻撃隊が巨大生物を故意に出現させているのだとしたら、僕たちは何のために戦っているんだ?
巨大生物生物特別攻撃隊日本支部の上層部が巨大生物を出現させて、それを僕達が駆除する。つまり僕達は組織が放った化け物を処理させられているようなものじゃないか。そこに何があるというのだ!僕達の存在価値は?
もしそうなら、僕は、ヒーローじゃなく利用されてるだけの操り人形か何かじゃないか!?
「そんなの!そんなのあるかよ!」
僕は起き上がって枕を思い切り壁に向かって投げつけた。
結局夜が明けるまで体育座りで座っていた。途中記憶がないから多少は寝たらしい。
僕は食パン一枚を焼かずにそのまま口にくわえるとテレビをつけた。
いつも平日にやっているニュース番組。どうやら速報が入ってきたばかりのようだ。
『速報です。先程5時12分、山口県宇部市にて、巨大で奇妙なくぼみが見つかったとのことです。巨大生物のものという可能性があるため……』
僕はテレビを切るとすぐさま着替えて基地へと急いだ。




