二十三話 鋼鉄の亀甲(4)
超高高度から帰還した僕たちが見たのは暴れ回る亀の姿だった。
琵琶湖は血に染まり、尻尾が湖畔に浮かんでいる。
「おーおー本当に当たってらぁ」
「結構えぐれてますよね。ダメージは大きそうですけど、ここからどう戦うかですね。っとその前に……」
超高高度まで一気に上昇した結果かなりの燃料を消費しており、ジェネレーター出力を加えればまだまだ飛べるが、ビーム兵器が使えなくなるということになる。
スターライトは機体重量を軽くするために特製スパイクミサイルのみしか格納していなかった。つまり通常兵器がなく、攻撃はビーム兵器に頼るしかない状態なのだ。
「一旦降下して補給をしないといけませんね」
「そうだな。補給の間に作戦を練るだろうし」
僕は降下地点に降下すると第二作戦室の隊員に補給を頼むと第三作戦室の隊員のもとに走った。
「おお、間宮、小林、よくやったな!いやー奇跡を見たな」
「まさか当たるとはな。流石に驚いた」
どことなく隊長も副隊長も興奮気味だ。まあ普通当たらないものだし、興奮もするのか?
「これからどうします?」
「若宮に作戦を練ってもらっているから問題ない」
「はい。お任せください。まず一つ、この巨大生物の甲羅を写真に収めたものです。攻撃前と攻撃後の違いがわかりますか?」
巨大生物の甲羅の写真二枚を見比べてみると、違いは明らかだった。
「攻撃後は結構傷ついてますね」
「そうです。亀の甲羅は確かに硬いのですが、傷がつきやすいのです。……では、傷を広げていけばヒビが入ります」
「つまり?」
「甲羅を割るんです」
「わ、割る!?あの硬い甲羅を?」
小林隊員が大声をあげて驚いた。
それはそうだ、通常のスパイクミサイルも通用しない甲羅を割れるのか?
「ええ。巨大な鉄球でも落とせば可能かと……」
「ほ、本当に?」
「亀の甲羅は皮膚の一部、甲羅さえ破壊すればその下は臓器です。倒すのは容易ですよ」
簡単に言ってくれるがそう簡単にいかないだろう。さっきの特製スパイクミサイルが甲羅に当たっていれば一発で倒せていた可能性はあったということなのだろうが、あんなことはもう起きないと思っていい。
「大丈夫ですよ。そこまで大変ではないです。とりあえず鉄球格納するのでそれを落とし続けてください。そうすれば勝手に割れます」
「本当かよ……」
「もしそれでうまくいくなら苦労しないよ」
隊員方は全く信じていない。
まあそれはそうだ。第二作戦室の火力で何時間も攻撃してやっと傷つけるくらいしかできてないのだから甲羅を壊すなんて……
「大丈夫です。僕の作戦通りにしてくだされば確実に倒せますから」
若宮隊員はニヤリと笑った。




