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我ら、巨大生物特別攻撃隊!  作者: ひぐらしゆうき
三章 巨大生物の真実
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二十二話 巨大生物特別攻撃隊、南へ(5)

 ー神山公造手記ー


 ところどころ破れていたり、汚れで読めない。

 読めるところだけ読んでみることにした。


「19●●年、5月7日


 東京から南下した場所に位置する無人島、佐々間島。

 かつて、この島には高い知能を持った謎の生物がいたとされる。私はその細胞を探していたのだが、大学教授としてこの島の調査をすること早5年。遂に見つけ出すことに成功したのだ。

 数万年前の生物の細胞。

 私はすぐさまこの細胞を大学に持ち帰り研究を始めることにする。」



「1●●8年、8月15日


 ………………………ていた。

 この細胞は細胞分裂をかなりの速度で行なっている。もし、この細胞が人間に適応できるのならば、医療の現場で活躍できるはずだ。

 私は大学教授を辞任し、研究所を創設することを決意した。」



「1999年、5月●●●


 とうとう私の研究所が完成した。

 細胞を発見した佐々間島の中央に作り上げた。

 研究所には私の教え子、そして旧友の間宮の計五人が私の研究を手伝ってくれることとなった。」



「2●●●年、●月8日


 間宮が慌てて私の部屋に入ってきた。

 何かと聞けば、なんでも孫が病気だという。臓器移植をしなければ命が危ないらしい。

 ……私は間宮を落ち着かせ、研究段階の例の細胞を使う事を提案した。

 研究データはマウス実験のものしかない。成功するかどうか、それは私にもわからない。勿論法にもふれる。

 しかし、間宮の顔を見て、男として、友として、見過ごすことはできなかった。」



「2003年、6月12日


 とうとう私の細胞を人間に使う時が来た。

 細胞と間宮の孫、コウキ君の細胞を掛け合わせ、細胞をコウキ君に適合させる。

 私は手術を行うのは私の知り合いの佐野隆医師。

 全てが秘密裏に行われる。

 私はただ、手術の成功を祈るばかりだった。」


「2003年6月13日


 手術は成功した。

 だが、ここからが問題だ。

 もし、適応できず、拒否反応が出ればコウキ君は死んでしまうだろう。

 緊張感はまだ消えない。」





「2003年、6月29日


 コウキ君は元気になった。

 どうやらうまく適合できた様だ。

 思わぬ幸運というべきか、初の人体実験を成功させることができたわけだ。

 私は人体実験と共にあらゆる動物での実験を行い、人間だけでなく、ペットや家畜、動物園で飼育されている動物にも使えるよう、改良を加えることとする。」





「2005年、2月22日


 長いこと手記をとらなかった。

 研究に追われて書く暇がなかった。


 なんとか人間用の細胞を完成させた。


 哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類これらの生物にうまく適合させることができれば、私はこの細胞を世に出すことにしよう。

 医療に革命を起こす。それが私の悲願だ。」



「2006年、5月9日


 ショックだ。

 私の旧友の間宮がくも膜下出血に倒れた。

 間宮の助けがあってこその神山研究所だった。

 この喪失感は消えることはないだろう。」



「2006年、5月10日


 間宮の葬式に出席するため研究所所員と共に本土へと帰還した。

 間宮の出身地までは佐々間島から18時間はかかる。今日は近くのホテルに泊まることとする」


「2006年、5月11日


 間宮の葬式に出席した。

 まだ65歳。早い死であった。

 私は研究を必ず成功させなければならない。」



「2006年、5月13日


 間宮の第二研究室を私が空いた。

 ここを新たな動物用の細胞を研究する部屋としよう。」


 この手記はここからしばらく空白となっていた。

 ページをめくっていくと、最後のページに四年前の日付で何か書かれている。

 2016年、7月7日。巨大生物が東京に現れた1日前の手記だ。


「2016年、7月7日


 なんということだ……。

 細胞適合の際、生物の細胞と試験細胞の割合が多かった場合の危険性を図る試験がこんなことになるとは……

 だめだ。私には止められない。

 このままでは、細胞分裂を繰り返し、別の生命、化け物になってしまう……。


 なぜだ?なぜこんなことになったのだ?」


 ここで手記は終わっている。






 僕達が手記を読み終えると、隊長が話し出した。


「その手記から我々の得た情報は、神山公造先生の見つけ出した細胞はなんらかの改良を加えることで、人間に適応する細胞にする革新的で安全な細胞であること。そして、このことからそれを使った臓器を移植された間宮が巨大生物とならない理由もわかった。そして、この研究所の生き物が巨大生物へと変異したこと。……つまり」


「つまり、この研究所で【バイオハザード】が起きたということになりますね」


 副隊長から出た言葉。

 バイオハザード。

 ゲームや映像の世界とばかり思っていた。

 そんなことが実際にここで起きたなんて、にわかには信じられなかった。


「そうなるな。私も信じたくはない。大学で教鞭をとってくれた恩師でもある神山先生がこんなことを起こしたなんて……」


 日本、いや世界でも有名な細胞学者、神山公造の研究所が起こしたバイオハザードが巨大生物出現の原因。

 そうなれば、日本としてはその事実は隠しておきたいと思うだろう。


 もしかして……


「国は知っていたんですかね?このこと」


「……おそらく、知っている。間宮、お前をこの巨大生物特別攻撃隊への入隊を押してきたのも日本支部の支部長だと聞いている。となれば、国の命令を受けていても不思議じゃない」


 副隊長は腕組みをしながら答えた。

 その顔は赤く、頭の血管が浮き上がって見える。


「隠し通して突然変異として処理したかった……ってところなんですかね?国としては」


 山内隊員が問いかけるように隊長に言った。


「国際的に考えれば当然そうだろう。国の面子が丸潰れだからな」


「我々にも、上層部から極秘にしろと釘を刺されることになるだろう。残念ながらそれに逆らう力は私達にはない。悔しくて仕方がない。だが、私たちは真実を知った。知ったからには責任がある。我々の手で巨大生物を全滅させる。それが使命だ」


「……飯塚隊長」


 ピーピーピー!

 突然、武田隊員の通信機器からアラートが鳴り出した。


「どうした!?」


「隊長、巨大生物がこの佐々間島付近の空に出現しました!」


「よし、今すぐビッグスターに戻るぞ!山内は小林とウィッシュスターで先行してくれ」


「「了解!」」


 僕達はすぐさまビッグスターに走り出した。

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