二十話 緑の死神(1)
災厄巨大生物バーサークブルの死体処理と後始末を死体処理班とともに行い二週間。休みなく働いてようやく一通り終わらせることができた。
毎度、巨大生物の死体処理を行う死体処理班の大変さを身に染みて感じることができた。
死体はどんどん腐敗が進んで臭くなるし、飛び散った肉片の回収や血の洗浄で何度吐きかけたことか……。
もちろんマスクをつけて、全身を真っ白な専用スーツに身につけた完全防備で作業をしている。しかし、それでも強烈な臭いを防ぐことができないのだ。
そんな苦しい仕事もこれでひと段落した。明日からは基地でいつも通りの業務をすることになるだろう。
僕は更衣車で防護服とマスクを脱ぐとゴミ袋に突っ込んだ。
死体処理現場から少し離れたひらけた場所。
僕たちが乗ってきた戦闘機が見える。その近くで第三作戦室戦闘隊の隊員が集まっていた。
「どうも、皆さんお疲れ様です」
「おお間宮、お疲れ!これ俺からのおごりだ」
小林隊員が僕に缶ジュースをひょいっと投げ渡した。
キャッチしてみるとキンキンに冷えている。クーラーボックスにでも入れてきていたのだろうか?
「ありがとうございます。いただきます!」
僕はタブを引っ張って開口する。
最近はステイオンタブ式の缶ジュースしか飲んでいなかったので、プルタブ式の開け方を忘れてしまっていたかと思ったが案外覚えているものだ。
僕は缶ジュースを一気に飲み干した。フルーティーな香りがする甘いジュースだ。結構美味しい。
「しっかしまあ臭かったよな〜。マジで一回吐きかけたぜ俺」
「嘘つけ!本当に吐いただろうが」
「や、山内さん!なんで言っちまうんですか!」
「別に隠さなくていいだろう?」
「嫌ですよ!恥ずかしいじゃないっすか!」
どうやら小林隊員は本当に吐いたらしい。山内隊員はそれを見ていたという所だろう。
僕も泉隊員が吐いているところをたまたま見てしまったわけだし。
「だが、早く作業を済ませることができた。さいたま市は埼玉県の県庁所在地であり政令指定都市でもある。人口も多い。復興は急がなくてはならないのだ。既に避難場所の不足で多くの市民が苦しんでいるという状況だからな」
副隊長が死体処理現場から戻ってきた。
死体処理班にこの後の処理を頼んできたのだろう。
「「お疲れ様です!」」
「うん。さて、後のことは任せてきた。基地に帰還するぞ……うん?」
副隊長の話を遮るように通信機が鳴り始めた。
「……はい、こちら高橋」
『高橋副隊長。今すぐ基地に戻ってきてくれ!』
通信相手はどうやら飯塚隊長のようだ。一体何があったのだろうか?
「今から帰還するところです。何かありましたか?」
『巨大生物が出現した。まだ詳しい情報がないからなんとも言えん。とにかく大至急こちらに帰還してくれ』
「了解しました。……全員聞こえたな!すぐに基地に帰還するぞ!」
「「了解!」」
僕たちは各々の戦闘機に乗り込むと急いで基地へと飛び立った。




