十八話 立ちはだかる王者(3)
巨大生物の突然の出現に驚きを隠せないが、僕たちは信号弾を頼りに森の中を走る。
木々の生い茂る森の中をかき分けて、戦闘機を目指す。火球の着弾点から見つけ出した謎の物体を落とさないように十分な注意を払いながら止まることなく走り続ける。止まれば、巨大生物に踏み潰されてしまうだろう。
無我夢中で走っていると戦闘機が見えた。
小林隊員がこちらに手を振っている。
「急げ!急げ!発進するぞ!」
小林隊員は僕たちを急かすとウィッシュスター二号機に乗り込んだ。
僕と泉隊員は自身の搭乗する戦闘機に向かって走る。
急いで乗り込むと急いで発進させる。スターライトのエンジンを最大出力で稼働させると一気に飛び上がった。
『間宮、泉、無事なようだな。それで、何かあったか?』
「はい、火球の着弾点と思われる場所で謎の物体を確保しました」
『そうか。よくやってくれた。……っ!?まずい!全機回避行動をとれ!』
副隊長が突然叫んだ。驚いて操縦桿を引いた。結果的にそうしてよかった。なんとすぐそばまで巨大生物が飛んできていたのだ!
副隊長が叫んで命令してくれなければ確実に落とされていた。
『くそっ!あんなのに正面衝突したら木っ端微塵だ!』
『まずいな。……副隊長、指示を』
『……。間宮、お前は今すぐ基地に飛べ。スターライトの最高速ならばそうそう追いつかれない。お前は謎の物体を持っている。落ちてもらっては困る。いいな!これは命令だ!』
副隊長は強い口調で僕に命令を出した。納得しにくかったが、たしかに僕が謎の物体を持っている。副隊長の判断は正しい。
「……はい。わかりました」
『ウィッシュスター各機、俺に続け!奴を討伐する』
『『了解!』』
僕は一人、基地に向かって飛んだ。
基地に着くと、僕はすぐに謎の物体を化学班に回して解析してもらった。結果が出るのは数日後と言われたので大人しく作戦室に戻る。
そうこうしている間に戦闘隊の皆さんが巨大生物を討伐して帰ってきた。多少苦戦を強いられたようだが、新兵器のクラスタースパイクを広げた羽めがけ打ち込むことで胴体を吹き飛ばしたようだ。
数日後、謎の物体の解析結果が届いた。
飯塚隊長が解析結果を読み上げる。
「当物資は生物の心臓が変化してできたものである。この物質は巨大生物特有の細胞であるα−biocellという細胞と巨大生物の元の生物の細胞で構築されいる。これはどの巨大生物にもら見られるが、心臓という臓器からはかけ離れたものでもある。つまり、この心臓の変化したこの物質に生物巨大化の答えが隠されていると考えられる。ここからは更に詳しく調査する必要があるため巨大生物特別攻撃隊本部に送らせてもらうこととします。だとのことだな」
「うーむ。よくわかんね!」
「小林、お前はもうちょい頭回して考えろよ」
山内隊員のツッコミがいつも通りはいる。
「でも、難しい話ですよ?私も生物学とか苦手で話がよくわからなかったですし」
「僕も何言ってるんだかさっぱりです」
僕は含め殆どの隊員が話を理解できていなかった。本当に専門的な話だから仕方がないかとかもしれないが。
そんな中、副隊長は難しそうな顔で解析結果を見ていた。理解できるのだろうか?
「……なるほどな。飯塚隊長、よろしいですか?」
「……うむ」
副隊長と隊長は作戦室から出て行ってしまった。……どうしたというのだろう。
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巨大生物特別攻撃隊ある個室
「結果から見て、どうやら飯塚さんの仮説は正しいみたいですね」
「ああ。上層部がひた隠しにしたい訳だ」
「今後、どうしますか?」
「とりあえずこのまま様子を見る。頼むぞ高橋」
「はい。わかりました……」




