十八話 立ちはだかる王者(2)
調査開始から随分と時間がたったが未だに何も見つかってはいない。副隊長の班からも分かれてから連絡がない。
「泉隊員、一度副隊長に連絡を入れましょうか?」
「うん。そうしてみて。このまま何もないなら帰ることも考えないといけないから」
「わかりました」
悔しいが、本当に何も見つかっていない以上、いつまでも調査に時間を割いている場合ではない。僕は副隊長に連絡を…。
「あ、あれ?」
通信機の故障?まるで通信が繋がる様子がない。何度も通信を試みるも全く繋がらず、ただザーというノイズが響いている。
「い、泉隊員!通信ができません!」
「え?嘘でしょ?……えっ?なんで?私の通信機もダメ!」
まさか、副隊長から連絡がないのはこの為だったのか?まずい、僕たちが気がつくのが遅過ぎた!
僕と泉隊員は急いでほかの機器を確認する。すると通信機器以外の機器も殆ど使い物にならなくなっていた。生きているのはサーモのみだ。
「ど、どうしましょう」
「…そうね。とりあえず先に進みましょう。私達より副隊長の班の方が異変に気づくのが早いはずだから、待っていれば信号弾を上げてくれるはずよ。それまで待てるようなひらけた空間を探しましょう」
「了解」
ひらけた場所を探しながら出来る限り調査もすることにした。結果を出さなければという気持ちもある。しかさ、それよりも巨大生物のことを知りたいという気持ちが強かった。
イズナミリュウは生物の進化ではないと教えてくれた。進化ではなければ考えられるのは突然変異くらいしかない。だが、突然変異だとしても理由がわからないのだ。そのヒントがこの地にある
はずなのだ。
「間宮くん。ここにしましょう。って、なんかやけに焦げ臭いわね」
そこは先程まで鬱蒼としていた森とは思えないほどにひらけた場所だった。しかも何やら焦げ臭い。…まてよ。
「泉隊員。ここですよ。イズナミリュウの放った火球はここに着弾したんですよ。ということはここに巨大生物の正体に迫るヒントがあるはずです!」
「よし、じゃあ早速調査しましょう!」
僕たちは火球の着弾したであろう場所の中心部に走った。大概こういう場合、中央に重要なものがあるものだ。
着弾点の中央は他の場所より深くえぐれており、他の場所より焦げていた。
「ちょっと掘ってみましょう。とりあえずこの焦げた部分を取り除くわよ」
「はい」
僕たちは荷物から携行用の折りたたみスコップを取り出して地面を掘り出した。すると何やら硬いものに突き当たった。
「石かしら?」
「取り出してみましょう」
硬いものに傷をつけないように周りを掘り起こし地面から取り出してみる。
硬いものは直径10cmほどの球形の塊だった。ただの石のように見えるが何か違う。確かに硬いことは硬いが、石ほど硬くないように思える。
「これが巨大生物の正体に迫るものなんでしょうか?」
「うーん。それはわからないけど不思議な物質ではあることは確か。とりあえず持ち帰って科学班に調査してもらいましょう」
っと話していると、上空に赤い信号弾が打ち上げられた。どうやらそう離れた場所ではないようだ。
「あそこね。間宮くん。帰るわよ」
「はい。わかりました」
僕は謎の物体を手に持ち信号弾の上がった場所に向け歩き始めた。
その時だった。突然地響きが起こり、森から鳥が一斉に飛び立った。
何事かと思っていると木々をかき分けて巨大なカブトムシが姿を現した!




