十六話 悪魔の怪鳥(4)
百里基地から西に飛び立った僕たちは広範囲にわたって烏巨大生物の捜索を行っていた。
百里基地の自衛官の全面協力を受けて捜索しているのにもかかわらず、捜索開始から早2時間。発見どころか足取りすらつかめていない状況だった。
『間宮、そっちは何か見つけたか?』
「小林隊員。それがサーモやソナーにもまったく反応がないんです。...いったいどこに消えたんでしょう?」
『俺に聞かれてもなぁ...。まあいい。とにかく捜索を続けようぜ』
「はい。そうですね」
しかし、このまま探していて見つかるのだろうか?今登場しているスターライトには最新鋭の機器がそろっているのだ。この装備で見つからなければ他の戦闘機では余計見つからないはずだ。いったいどうすればいいのだ...。
『どうもかなり困っておられるようですね』
「若宮隊員?」
『おっ!若宮!頼むあの烏型巨大生物をどうやったら見つけられる?』
『烏をとらえたければ、罠を仕掛けるのが一番早いと思いますよ。烏っていう生き物は警戒心が強いのでエンジン音や衝撃音なんかを聞いてしまうとすぐに逃げてしまいます。それに烏は頭がいいですからすぐに物事を覚えてしまいます。罠を仕掛けたとしても次からは通用しなくなるでしょう。なので、無害か害悪かを素早く判断して、害悪巨大生物と断定した場合すぐに倒す必要があります』
『失敗は許されないってことか...』
『そうです。とにかくすぐにでも罠を作って巨大生物をおびき出しましょう。早くしないと本当に逃げられてしまいますからね』
『よし。では、全隊員百里基地に帰還。若宮の指示のもと巨大生物をおびき出すための罠の設置にかかる』
「「了解」」
僕たちは百里基地へと帰還した。
百里基地に帰還すると、補給を自衛官に任せ、僕たちは罠の設置を行った。
罠は大きなМ字型の建物で中に大量の餌が入っている。どうやら普通の烏を捕るときのものよりも数十倍の大きさらしい。待っていれば来るようだが...本当なのだろうか?
「きたー!おい本当に来たぞ!」
まだ作って数分しかたっていないというのにもう来た。僕たちの2時間強は何だったんだ...。
僕たちはすぐ各戦闘機に乗り込みすぐに発進した。騒音を立てないようにできる限り静かに発進する。マーキング弾を装備しているスターライトに搭乗する僕は他の戦闘機より早く烏型巨大生物に接近した。すぐに気づかれたが、速度は圧倒的にこちらのほうが上なのであっさり追いつきマーキング弾を撃ち込んだ。
これでいくら逃げられようと場所を把握できる。若宮隊員の通信を聞いた後に装備を確認しておいてよかった。マーキング弾が装備されていることなんてさっきまで知らなかったし。
「よし。やりました。マーキング弾の着弾を確認」
『間宮、よくやった。さて、こいつが害悪巨大生物かどうか判断しなければな』
『結果はすでに出てますよ。奴は害悪巨大生物です』
『若宮か。どういうことだ?』
『報告を聞いてみるとどうやら奴は茨城県内で既に数百頭の家畜を捕食しているようです。このままだと人間の被害が出るのも時間の問題でしょう。よって害悪巨大生物と判定されました』
『わかった。では奴を討伐する。各機戦闘態勢!』
『『了解!』』
即座に僕は全兵器のセーフティーを解除して倒しにかかる。
烏も鳥だ。翼の機能を奪ってしまえば倒すのは容易だ。
僕は山内隊員の操るウィッシュスターとともに左翼を攻撃する。やはり音速。音速を超えた速度で飛行可能なこちらの戦闘機を振り切ることなどできるわけもなく、あっさりと翼の付け根に攻撃が命中した。
『おいおい、あっさり落ちたぞ。やっぱ、災厄巨大生物を見た後じゃあ害悪巨大生物がかわいく見えるな』
山内隊員の言う通りあっさりと終わった。だが、僕はなんだか妙な違和感に襲われた。
『副隊長、目標は沈黙しました。帰りましょう』
『うむ...そうだな。総員巨大生物特別攻撃隊基地に帰還しよう』
『『了解!』』
副隊長の命令に従い、僕たちは帰還することになった。
だがしかし、僕の抱いた妙な違和感は全く消えることなく残っていた...。




