四話 戦闘開始!
『目標ポイントに到達。これよりコルスーラ討伐作戦を開始する。各機戦闘態勢に入れ』
『了解!』
副隊長の無線が入る。あっという間に目標ポイントまできてしまった。流石は音速だ。
「間宮隊員、これから戦闘を行うことになるわ。作戦によってはかなり高度なアクロバットを決めなきゃいけないこともあるから、覚悟はしておいてね」
「はい!」
高度なアクロバットなんてされたら意識が飛んでしまいそうな気がするが、慣れねばならない。
僕自身が戦闘機を操縦する時がいずれくるのだから。
『皆さん。これからコルスーラ討伐作戦の作戦内容を話します。まず蛇という生き物は目と耳は良くないですが、そのかわりに、嗅覚と味覚、皮膚感覚能力は非常に鋭いです。特に蛇特有のヤコブソン器官と、ピット器官は厄介です』
『ピット器官といえば、毒ヘビが持つ赤外線センサーみたいなものだったっけか?』
小林隊員はピット器官というものを知っていたようだ。僕は動物の特徴なんてよく知らないので、ちんぷんかんぷんだ。
『小林隊員、その通りです。しかも蛇のピット器官はかなり高精度で、軍用機器並みと言われています』
『成る程。それじゃあヤコブソン器官とはなんなのだ?若宮隊員』
今度はウィッシュスター二号機を操縦している山内隊員が質問する。
『はい、ヤコブソン器官というのは蛇特有の器官で、空気中の匂いや味を舌で捉えて、それをヤコブソン器官に送り判断しているのです。既に匂いを感じ取ってる可能性がありますね。つまり簡単にまとめるとかなり高精能なレーダーと赤外線センサーを持っているということです』
『成る程。かなり厄介だな』
今の話を聞いていて、流石に僕でも厄介な相手だということは理解できた。
『それで作戦は?』
『よし、ここからは私から説明しよう。先程若宮隊員が説明した通りコルスーラはかなり厄介な相手だ。となると、まずは厄介なピット器官とヤコブソン器官を破壊するのが得策だ。とはいえ、そう簡単にはいかん。そこでまずは奴の舌を吹き飛ばす』
『確かに舌がなくなればヤコブソン器官は脅威ではなくなる。そうなると後はピット器官』
『ピット器官の破壊は頭部めがけて目標の真上から垂直にスパイクミサイルを撃ち込む。うまくいけば頭部を吹き飛ばして倒せるだろう』
『了解。ピット器官の破壊は俺がやる。舌の破壊を泉、山内、両隊員機に任せる』
『『了解!』』
とうとうコルスーラ討伐作戦が決行された!
『泉隊員、俺たちで奴の注意を引く。口が開いたら即座にミサイルを打ち込め』
『了解。お願いします』
ウィッシュスター二号機が僕たちの戦闘機から離れ、どんどん高度を下げコルスーラに向かっていく。
「間宮隊員、私たちも行くわよ」
「りよ、了解ぃぃぃ!?」
僕の返事を待つ前に泉隊員は戦闘機の速度を上げる。
僕の体にGが襲いかかる。
一瞬だが意識が飛びかけた。
先に突撃したウィッシュスター二号機はコルスーラの攻撃をかわしながら、なんとか口を開けさせようと、かなり口に近づいている。
「あれ大丈夫なんですか?下手すれば食べられちゃいますよ?」
「大丈夫。山内隊員の操縦技術があればそうそう攻撃は当たらないわよ」
泉隊員は何やらスイッチを操作しながら答える。
僕は再度ウィッシュスター二号機の様子を見る。
ウィッシュスター二号機は何度も急旋回を繰り返して、コルスーラを翻弄する。コルスーラは大きな舌を伸ばして近づいてくる。恐らく距離を舌で位置をたしかめているのだろう。
『泉隊員聞こえるか?』
どうやらウィッシュスター二号機に山内隊員とともに搭乗している小林隊員からの無線のようだ。
『はい聞こえています。どうぞ』
『今から奴の口を開けさせる。ウィッシュスター一号機は俺たちの進行方向に向かってくれ』
『了解しました』
通信が切れると、泉隊員は即座に向きを変えてウィッシュスター二号機の進行方向に向かう。
僕たちはすぐにコルスーラとウィッシュスター二号機を追い抜き360度急旋回する。速度を下げずそのまま突っ込んで行く。
『泉隊員、行くぞ』
『了解!』
前から突っ込んでくるウィッシュスター二号機が、急に上に急上昇する。すると、目の前から大きな口を開けたコルスーラが現れる。
「ミサイル発射!」
泉隊員が操縦桿のスイッチを押すと四つのミサイルが一直線に飛んで行く。
ミサイルはコルスーラの口に入り、爆発する。
「離脱!」
泉隊員は直撃を確認するとすぐに操縦桿を傾けて、急上昇する。
『よし。よくやってくれた。コルスーラの口はズタズタだ。これでヤコブソン器官は潰した。後は副隊長。よろしくお願いしますよ?』
『任せておけ』
上を見上げるとコルスーラの頭上に向けて副隊長操るシューティングスターが猛スピードで垂直降下してくる。
狙いを定めるとシューティングスターから先が針のように尖ったミサイル、スパイクミサイルを発射される。
発射されたミサイルはコルスーラの頭部に突き刺さり、爆発した。
「やった…んですか?」
「どうやらそうみたいね。みて」
下を見るとコルスーラの頭部のない亡骸が横たわっている。辺りには大量の血が飛び散って真っ赤に染まっている。そのグロテスクな光景に吐き気を催した。
『よし、皆よくやってくれた。後は死体処理班に任せて帰投してくれ』
『『了解』』
基地に帰投する頃には僕はもうヘロヘロになっていた。まさか、一回の出撃でこんなになるとは思わなかった。
「間宮隊員大丈夫?戦闘機の訓練もせずにいきなり乗って疲れちゃったかな?」
泉隊員が、優しく声をかけてくれたが今は返事をする余裕もない。
「間宮隊員お疲れ様。訓練なしでいきなり出てもらって悪かったな」
顔を上げると隊長が歩いてくるのが見えた。
「どうやらかなり体にきてるようだな。すぐに静養室に向かおう。泉隊員。一緒に来てくれ」
「はい」
僕は隊長と泉隊員に連れられ静養室に運ばれた。
こんなことでこれから先大丈夫なんだろうか?
僕はこの仕事の大変さを感じていた。
次回予告
戦闘隊員として仕事をするために。僕は訓練に励むことに。しかし、訓練もとてつもなく厳しいものだった。
次回、新人隊員用訓練開始