十四話 迷子のゴマ(3)
ゴマ上陸から2時間が経過。あいも変わらず僕たちはゴマとにらめっこを続けていた。
「……いつまでこうしていればいいんですかね?」
「さあ……。立ってるだけっていうのもだいぶ辛くなってきたんだけど……。まだ作戦はたたないみたいね」
……まさかこれほど作戦たてるのに時間がかかるとは思ってもいなかった。
普段なら50分くらいで決まるのに……。
やはり隔離、捕獲ということとなると慎重にならざるを得ないのだろう。
ゴマはその場でのっぺりと寝っ転がっている。流石にここまで泳いできて疲れたのだろう。
「泉隊員、今もし戦闘機があれば輸送できるんですよね?」
「ええ、あっという間に事は終わってるわね」
「ですよね……。そういえば、第一作戦室の隊員は何してるんですかね?」
「あー。さっき小林隊員が北条さんに確認したら今こっちに母親連れて向かってるんだって」
「母親ですか?」
「なんでも保護施設を逃げ出したのは母親と喧嘩したからみたいでね。仲直りさせて戻ってもらおうってことらしいけど……。うまくいかないと思うのよね……」
どうやら第一作戦室の方で作戦はたてていたようだ。なら隊長が2時間も何も命令しなかったのもわからなくもない。だが、できることなら報告してほしいものだ。
「同感ですね。……母親が来たらこの場所から離れた方がいいですね。巨大生物の喧嘩に巻き込まれたら死んじゃいますから」
「そうね。親子喧嘩に巻き込まれて死ぬなんて間抜けな死に方は嫌だしね」
まあ、そうだけども……。
さて、となると第一作戦室到着までもうしばらく待つことにしよう。
しばらく待っていると海面からブルーシーが現れた。第一作戦室が到着したようだ。
『第二、第三作戦室の隊員達は直ちに退避せよ!繰り返す!第二、第三作戦室の隊員は直ちに退避せよ!』
通信機から第一作戦室の大野副隊長の声が聞こえて来た。直ちに避難ということはつまり母親が陸地に上がるということなのか?
僕たちは急いで退避する。
退避する中、ふと海面を見ると100mはあろうかという巨大なアザラシ型の巨大生物が現れた!これがゴマの母親か。
子供のゴマでもでかいと思ったのにゴマの母親はその3倍はある。今まで見てきた巨大生物の中でも最大の大きさだ!
ゴマは目を覚ましてキョロキョロする。後ろにいる母親に気づくのには時間はかからなかった。
目が合った瞬間に二体の巨大生物の目つきが変わった。
「これ、大丈夫なんですかね?」
「どうなんだろうね?大丈夫じゃあないと思うわよ」
睨み合いを続けていた二体は少しずつ近づいて
グエーーー!!と大きな叫びを上げた!
「……ほらね」
今、巨大生物の親子喧嘩が始まった!




