十四話 迷子のゴマ(1)
災厄巨大生物マキシベア討伐から二週間。僕は戦闘の傷跡の残る街に来ていた。
破壊された街は瓦礫が取り除かれて、建物の建設ができるまでになっている。
隊長の話だと全て復旧するには五年はかかるとのことだった。三年前の巨大生物災害の時の復旧にもまだ終わっていない中の復旧だ。時間がかかるのも仕方ないだろう。
さて、のんびりもしていられない。僕は基地に向かう。
隊員服に着替えて第三作戦室へと入った。作戦室内に入ると怪我をして長期休暇をとっていた山内隊員がいるのが目に入った。
「おはようございます山内隊員。怪我はもういいんですか?」
「おはよう間宮。怪我のことか?医者曰くまだ完治はしてないんだがもうほとんど治りかけだし、仕事復帰しても問題ないだろうとのことだったんだよ。だから今日から仕事復帰することにしたのさ」
「そうですか、よかったです。……そういえば他の皆さんは?」
「うん?ああ、戦闘隊のみんなはトレーニングルームでトレーニングしてる。他のは見てないな」
「そうですか。じゃあ僕もトレーニングルームに行ってきます」
「おう。ああそうだ。トレーニング終わったらシュミレータールームに来いよ。新しい空中機動教えてやる」
「本当ですか?ありがとうございます」
「いいってことよ。ほれ、行ってこい」
「はい」
僕は作戦室を飛び出してトレーニングルームに向かおうとしたちょうどそのタイミングで飯塚隊長が作戦室に入ってきた。
僕は危うくぶつかりそうになりながらもなんとか立ち止まる。
「おっと間宮。張り切っているな。そんな中申し訳ないが、仕事だ。みんな集めたからトレーニングルームには誰もいないと思うぞ」
「えっ?でも報告来てませんよ?」
「ああ。それはちょっと特別な事情があってな。まあそれは全員揃ってから話す」
特別な事情?一体なんなのだろう?
程なくして隊員達が集まった。
「よし全員揃ったな。それでは話すぞ。先ほど第一作戦室から連絡があった。なんでも日本基地の海洋無害巨大生物保護施設からアザラシ型巨大生物が逃げ出して神奈川県に向かっているようだ。そこで我々への依頼だ。依頼内容は町に入り込まないように隔離、できれば捕獲してほしいとのことだ」
「隊長、そうは言いますが、現在我が第三作戦室の主力戦闘機が全機修理中。隔離することも今の我々には厳しいと思うのですが」
「確かに高橋副隊長の言う通りだ。よって今回は第二作戦室と合同で行う」
まあ、そうするしかないだろう。でなければ隔離なんてできっこない。
「あのー。ところでなんで全体に報告が来なかったんですか?」
僕が聞きたかったことを泉隊員が隊長に質問してくれた。特別な理由があるとはなんなのだろう?
「うむ。一つは無害巨大生物であったため。もう一つ、というよりほとんどこれのせいなのだが、実は基地の大型通信機が壊れていてな。俺も今日知ったんだ」
「……。え〜〜」
まさかの理由だった。それは仕方がないとしか言いようがない。
「……。あーそうだ!今回の巨大生物ってコードネームあるんですよね?なんていうんですか?」
小林隊員が話の話題を変えるように質問をした。アザラシ型巨大生物というのも長いのでコードネームは知っておきたい。
「コードネームか?えっとだな。コードネームはゴマというようだ。どうも第一作戦室の隊員がつけたらしい」
……ゴ、ゴマ?もしかしてゴマアザラシみたいな姿なのだろうか?だとしたらなんとも安直な名前だ。
「コードネームゴマ?相変わらずネーミングセンスないなぁ第一作戦室の隊員達は」
小林隊員が呆れたような口調で言った。
つまり第一作戦室の隊員の皆さんは全員ネーミングセンスがないってことなんだ……。
「ま、まあ可愛らしい名前だからいいんじゃあないか?さ、さあ出動しよう!早くしないと上陸されてしまうぞ!」
隊長もネーミングセンス無いと思っているんだろうな。一様フォローするところやっぱり飯塚隊長は優しい人だ。
「「了解!」」
僕たちは作戦室から飛び出して、第二作戦室の戦闘車格納庫へと走った…。




