十三話 捨て身の作戦!エースの力!(3)
作戦車に急いで行くと、先に墜落した山内隊員と小林隊員がいた。山内隊員は腕を布でつっていた。
「山内隊員!どうしたんですか?」
「おお、間宮か。あのあとなんとか不時着したんだがその時に腕を思いっきりぶつけてな。骨にヒビが入ったらしい」
ヒビが入ったということはしばらく戦闘隊では活躍できない。山内隊員が抜ける穴はかなり大きい。
「おお、第三作戦室の諸君ご苦労。すまんがすぐに我々の援護にまわってくれ!そこにフォトンバスターがある!持っていってくれ!」
作戦車で指示を出している鷹木隊長がこちらに気がつき、指示を出す。
鷹木隊長の指差す方には大型の銃が5丁置いてある。
「「了解!」」
僕たちはフォトンバスターと替えのカートリッジを持って戦場に向かった。
前線ではフォトンバスターでの援護射撃が続いていた。グレイターの後部に装備されているグランドレーザーのチャージはどうやらかなり進んでいるようだ。
「よし、俺たちもこいつで副隊長を援護だ!」
僕はフォトンバスターを構えた。威力がよくわかっていないのでとりあえず両手で構えてマキシベアめがけて撃ち込んだ!
巨大なレーザーが打ち出された。かなり反動が大きく、少し後ろに押し戻された。
第二作戦室の隊員はこれを撃ち続けているのか…。
いやいや、感心している暇はない。今は副隊長の援護に集中しなければ。
再度フォトンバスターを構えて引き金を引く。やはりとんでもない反動だ。何発も連射できるものじゃない。
「おい、こっちを向いたぞ!!」
誰かが叫んだ。恐る恐る上を見上げてみると、マキシベアの顔がこちらを向いている。
何という威圧感だ。咄嗟に逃げなければと思ったのだが、恐怖で体が動かない!
周りを見渡すと、誰もがそうであるようだった。
マキシベアの腕がこちらに向かって伸びてくる。
だめだ……。死んだ……。
僕は諦めて目を閉じた。
ズドォーン!
突然の爆発音に目を開けた。
恐る恐る目を開ける。
開いた目に飛び込んできたのはバランスを崩して僕らから反対方向によろけたマキシベアの姿だった。
「一体何が?」
『地上部隊、大丈夫か?』
高橋副隊長だ!そうか、高橋副隊長の操縦するシューティングスターにのみ、無誘導のミサイルを積んでいた。高橋副隊長はそのミサイルを全弾一気に打ち込むことで態勢を崩して僕たちを助けてくれたのだ。
「はい!大丈夫です。助かりました!」
『ならば良い。それで?グランドレーザーのチャージはまだ終わらないのか?鷹木隊長』
『ああ!あと5パーセント。時間にして約3分というところだ!』
『了解。では、引き続き私が奴を引きつけておこう』
通信が切れるとほぼ同時にマキシベアは態勢を整えて、シューティングスターに攻撃を仕掛ける。
高橋副隊長は急発進して華麗に攻撃をかわし、バーミリオンプラスターを眉間に撃ち込み注意を引いた。
「すごすぎる…」
「あったりまえよ!副隊長は特別攻撃隊の中でも屈指の実力者だぜ?」
「そりゃあそうかもしませんけど、それにしても凄すぎです」
「たしかに凄いけど、大丈夫かしら……。もうかなり長い時間戦ってるし、集中力も切れ始めてるんじゃない?」
「おいおい泉隊員。不吉なこと言うなよ……」
でも、泉隊員の言う通りのような気がする。
いくら副隊長でもここまで長い間集中力を持続させることは難しい筈だ。
その予感は見事に的中することになった。
グランドレーザー発射可能まであと1分となった時だ。マキシベアの爪がシューティングスターの左翼とエネルギータンクに命中した。
「っんな!泉〜お前不吉なこと言うから!」
「私のせいじゃないですよ!っていうか小林隊員!そんなこと言ってる場合じゃないですよ!」
「そうですよ!エネルギータンクと左翼がやられたってことはもう数分しか飛んでいられない。しかも、早く不時着するか、脱出しないと空中分解するかもしれませんよ!」
「マジでヤバイじゃねーかよ!副隊長ー!!」
『おい!高橋副隊長!グランドレーザー発射可能だ!よくやってくれた!もういい!脱出をしてくれ!』
鷹木隊長の通信が入った。チャージが終わったのだ。それならもう脱出してもいい。しかし……
『いや、まだ奴の頭を上げてない。一撃で仕留められない可能性がある。私が頭をあげる!』
『なにっ!無茶を言うな!その機体では無理だ!』
『まだエネルギーも残っている。まだ飛べる。問題ない!……グランドレーザーは発射準備を!』
『おい、高橋副隊長!高橋!』
高橋副隊長はそういうと通信を切ってしまった。
「嘘でしょ?無理よ。あの翼じゃあ攻撃を回避できない。叩き落とされちゃう!」
「高橋副隊長……」
副隊長操るシューティングスターはマキシベアをうまくグランドレーザーの射線に誘導すると大きくターンして、真っ向から向かっていく!
翼の損傷とエネルギータンクの破損で真っ直ぐ飛ぶのも厳しい状況であんな飛行が出来るだけでも奇跡だ。そんな状態でマキシベアの顔をあげること……いや、それどころかその前に叩き落とされずに懐に潜り込めるのか?
いや、無理だ!副隊長だけでは絶対に不可能だ。
僕はマキシベアの左側面に回り込むように走り出した!
「お、おい、間宮!」
小林隊員が制止しようとしているようだが、僕は無視して走りながら通信機で鷹木隊長に連絡を入れた。
「鷹木隊長!ストライクカートリッジの使用許可をください!」
『な、なに?ストライクカートリッジでどうするつもりだ⁉︎』
「お願いします!時間が無いんです!」
『何だか知らんが、わかった!使用を許可する!』
「ありがとうございます!」
僕はフォトンバスターのカートリッジを抜き取ると、ストライクカートリッジを差し込んだ。
何とかマキシベアの側面に回り込むと、フォトンバスターを構える。
マキシベアに副隊長操るシューティングスターが近づく。
マキシベアは右腕を振り上げた!
やはりそうきた!思った通りだ!
僕は足を広げて力強く踏ん張って、フォトンバスターの引き金を引いた!
「リミットストライク!ファイア!!」
超巨大なレーザーがマキシベアの右腕めがけ飛んでいった。先ほどなんかとは比べ物にならないくらいの反動だ。僕は思いっきり地面に倒れてしまった。
起き上がり見てみるとマキシベアの腕は跳ね上がり、シューティングスターは懐にはいりこんでいた!
シューティングスターはマキシベアの顔面の前まで来ると、突如急上昇した。
あの破損であんな動きができるなんて誰も思わなかっただろう。僕もまさかあんな風に顔を上げさせるとは思っていなかった!
『今だ!グランドレーザー!発射ぁ!』
グレイターから一斉にグランドレーザーが発射された!発射されたグランドレーザーはあらわになったマキシベアの首を貫いた!
マキシベアはグランドレーザーを受けて後ろにズドォーンと地響きを上げて倒れた。
『……災厄巨大生物マキシベア沈黙。作戦成功だ!!』
鷹木隊長の通信が聞こえた。24時間にも及ぶマキシベアとの戦いが今、ついに終わったのだ……。
『第三作戦室戦闘隊員。今から不時着する。誰でもいいから救急キットを持ってきてくれ』
『了解!』
「了解!」
他の隊員達と合流すると僕はシューティングスターの不時着場所に向かった。
シューティングスターは不時着の衝撃でボロボロになっている。もう修理もできないだろう。
「おい、こっちだ!」
副隊長だ!シューティングスターの近くで座り込んでいる。
「副隊長!……あ、頭から血が……」
「不時着の時に打ってな。まあそれ以外にも傷があるからな。救急キットを持ってきてもらった」
そうだったのか。って、それよりもなんでそんな怪我で済んでいるのだ?結構派手に不時着した気がするのだが……。
「ああ、そうだ。右腕を弾いたあの攻撃、間宮か?よくやってくれた。お陰で助かった」
「いえ、あの時は必死で……」
「あれがなければ落とされていたんだ。間宮。ありがとう」
「あーあー俺もあの時間宮についていけばよかったぜ!」
「そんなこと言って〜、小林さんあの時びびって動けてなかったじゃないですか?」
「んな、い、泉隊員も動けてなかったじゃないかよ!」
「そんなことないですよー!」
なんで泉隊員と小林隊員が口論してるんだ……。
「……さて、とりあえず基地に戻るぞ!」
救急措置を終えた副隊長が言った。
「しかしどうやって?」
「第二作戦室の車を一台借りていけばいい。小林!運転しろ!」
「えー!そんなぁー!」
「文句言うな!山内は骨にヒビ。間宮は今回の功績があるし、泉も戦闘機の操縦で疲れているんだ」
「く、くっそー!」
小林隊員の悲痛な叫びがこだました。
僕たちは基地へと戻っていった。
報告
災厄巨大生物マキシベア討伐作戦完了。
死者0名
負傷者8名
被害総額150兆円以上(巨大生物特別攻撃隊の被害込み)
被害は最小限にとどめることに成功。
巨大生物特別攻撃隊日本支部の兵器の強化を急ぐ必要あり…。
巨大生物の子供が迷い込んだ?
アザラシ型の無害巨大生物ゴマが神奈川県に上陸してしまった。母親の元に送り返すため、巨大生物特別攻撃隊の総力をあげた作戦が開始される!
次回、我ら、巨大生物特別攻撃隊! 迷子のゴマ
アザラシ型巨大生物ゴマ
アザラシ型巨大生物マザーゴマ登場!




