十三話 捨て身の作戦!エースの力!(2)
午前7時。僕たちは補給と仮眠を終えて、作戦準備を開始した。
偵察に行った山内隊員と小林隊員によると、今現在、炎は消えてしまっているが巨大生物は眠っているため動き出すまでまだ時間はある。とのことだった。
とはいってもいつ起きて暴れ出すかわからない以上、早めに準備を終わらせて臨戦態勢をとるのが得策だろう。
作戦会議で僕たちはマキシベアの注意を引きつけておく囮役に決まった。グランドレーザーという兵器のチャージ時間にどれほどかかるのかによるが、かなり危険な役回りだ。
武装はできるだけ機体を軽くするためにバーミリオンブラスターのみ。注意を引くならこれでも十分だという副隊長の判断だ。
装甲は急発進、急停止にある程度なら耐えられるよう補強。旋回能力の低下はあるが、垂直降下に使用する両翼下部に取り付けられている小型ジェットエンジンを使用することにより補えるため実質装甲強化がおこなわれただけで、特に駆動に問題のないレベルではあるようだ。
作戦決行前、僕たち戦闘隊は副隊長のに呼ばれ、集まっていた。
「第三作戦室戦闘隊!聞け!今から作戦を決行するが、かなり危険な作戦だ。いくら軽量にして機動性を上げたとはいえ、攻撃の回避は容易ではないだろう。だが、我々はグランドレーザー発射まではなんとしても持ちこたえなければならん!俺からは作戦中の指示はとてもできん。全て各戦闘機乗組員の判断に委ねる。では健闘を祈る!」
「「はっ!」」
僕たちは姿勢を正して敬礼をする。
「うん。よし!各機発進!臨戦態勢をとれ!」
「「了解!」」
ウィッシュスター一号機に乗り込むと、すぐに下部エンジンを使用して垂直上昇すると、メインエンジンを点火した!
副隊長のシューティングスター、ウィッシュスター二号機も上昇したところで、一斉に発進した。
マキシベアは戦闘機のエンジン音で目を覚ました。
僕たちは散開した。副隊長は真っ直ぐ突っ込んでいき、眉間にバーミリオンブラスターを打ち込んで注意を引くと、マキシベアの顔の横すれすれを通って地上部隊のいる方向から反対側を向かせることに成功した。
しかし、いきなりかなり危険な事をしている。副隊長の腕なら問題ないとは思うが、もし反応されていれば一撃で撃墜させられている。
「副隊長、いきなり攻めすぎじゃないですか?」
「不意打ちだったから成功したようなものね。まあ、副隊長のことだから気づかれてもなんとかするんでしょうけど……こっちはひやっとするわね」
マキシベアは先程の攻撃で目が覚めたのか、動きが良くなってきている。近づけばあの大木のような腕で叩き落される。ここは遠くからちまちまやる方がいいだろう。
おそらく地上ではグランドレーザーのチャージが始まっているはずだ。とにかく耐えるだけなら遠くからちまちまやっていても大丈夫なはずだ。
「泉隊員。距離を開けて攻撃しましょう。今はその方が安全です」
「ええ。そうかもしれないわね。でも昨日みたいに瓦礫を投げつけられることだって考えられるわ。常に注意はしておかないと。間宮くん。攻撃はお願いね」
「了解です」
マキシベアの周囲を回り、隙をみて攻撃する。こちらに注意を向けつつ、上手くグランドレーザーの射線に追い込み、顔を上げさせて首を出さなければならない。まったく骨の折れる任務だ。
下からフォトンバスターという大型銃による攻撃が行われているが、マキシベアはそちらには目もくれない。
効いていないのだろうか?いや、効いていないというより、気にしていないのか?おそらく、マキシベアは地上より、先に空を飛ぶ鬱陶しい戦闘機を落とすつもりなのだろう。
マキシベアは腰をかがめると瓦礫を掴み投げつけてきた。思った通り、こちらを落とすつもりだ。
瓦礫を上手く回避して態勢を立て直すと、再び攻撃を行う。
グゥアアアア!!!
マキシベアはかなり頭にきたのか怒号を上げて、瓦礫を連続で投げつけてきた。しかも先ほど投げつけてきた瓦礫より明らかに速い!
「間宮くん!バーミリオンブラスターで撃ち落として!」
「はい!」
飛んでくる瓦礫をバーミリオンブラスターを連射して落としていくが、駄目だ。処理が追いつかない。泉隊員もなんとか回避しているがこのままではいずれ直撃する!
『泉、間宮!今援護するぞ!おい熊!こっちをむけ!』
山内隊員のウィッシュスター二号機からだ。有難い!
マキシベアにバーミリオンブラスターが撃ち込まれた。マキシベアはギロっと睨むと、腕を突き出した。なんだ?腕を突き出しても当たらないはずだが……。
そう思った瞬間、ボカンという音が聞こえた!見るとウィッシュスター二号機は煙を上げて落ちている!どういうことなのかわからなかった。だがマキシベアの爪を見て理解した。
なんと爪が伸びている!まったく予想していなかった攻撃。回避できるわけがないではないか!
くそう。僕はトリガーを引いてマキシベアにバーミリオンブラスターを連射した。
目の前で味方が落とされるのを見て僕は動揺していたのだ。適切な状況判断ができていなかったのだ。
バーミリオンブラスターでマキシベアの注意をこちらにまた向けてしまった。
マキシベアは大量の瓦礫を巻き上げた。泉隊員は回避しようとしたが、見事に両翼と右翼の小型ジェットエンジンがやられてしまった。
「うっ、間宮くん捕まって……。不時着するから!」
「…は、はっはい」
幸い大きくて真っ直ぐな道路があるのでなんとか不時着はできるだろう。だが、まだグランドレーザーのチャージが終わっていないにもかかわらず、既に副隊長操るシューティングスター以外は撃ち落とされてしまった。
作戦の成功確率はかなり下がってしまった。副隊長だけで、あのマキシベアの猛攻に耐えることはできるのだろうか……。
不時着した僕たちは、地上の第二作戦室に合流することとなっている。僕たちは作戦車に向かった。




