十二話 災厄巨大生物!(3)
マキシベアに接近して改めて今までの巨大生物とはレベルが違うことを実感する。大木のような足、なんでも噛み砕けそうな大きな顎に牙。体全身が武器といってもいい。
マキシベアはこちらを見つけると体を持ち上げて二足歩行となる。完全に戦闘態勢に入ったようだ。
僕は即座に武装のセーフティーを外し、発射可能状態にする。
ブン!
巨大な何かが風を切る音が聞こえた!即座に音が聞こえた方を向くとマキシベアの腕がウィッシュスター一号機めがけて突き出されていた!
どうやら当たっていないようだが、もしあれが当たっていたらと考えるとゾッとした。
『っく!各機すぐに散開!目標から離れて攻撃だ!』
「「了解!」」
「泉隊員!大丈夫ですか⁉︎」
「だ、大丈夫。大丈夫よ…」
無理もない。後ろにいる僕と違って一番席にいる泉隊員は腕が突き出されたのが見えていたのだから。
「間宮隊員、攻撃を任せるわ。操縦に集中していないとあんなのかわせっこない」
「わかりました!任せてください!」
「ありがとう」
泉隊員は操縦桿を強く握りしめると、一気に速度を上げた。
そうだ!いくら災厄巨大生物といえど生物である以上目で追える速度には限度がある。
ウィッシュスター一号機はどんどん速度を上げていく。
マキシベアはウィッシュスターの発する爆音を聞いてこちらを向いた。
泉隊員はそのことを確認すると一気に高度を下げてちょうどマキシベアの顔の前を通過する。
マキシベアは腕を振ったが、カスリもしない。
こちらの動きに対応できていない!いまだ!
速度をそのままにすぐさまターンして背後を取ると、僕はすかさずスパイクミサイルを撃ち込んだ!
撃ち込んだのを確認すると即座にその場を離れる。
ズドォーン!
スパイクミサイルが爆裂し、煙が上がった!
「どうだ⁉︎」
爆煙が消え、着弾箇所があらわになる。
「う、嘘でしょ⁉︎」
「ほとんど……きいてない」
『お、おい泉隊員、間宮、ありゃ冗談だろ?スパイクミサイルがきかねぇなんて』
小林隊員からの通信だ。声から動揺が伝わってくる。それもそのはずだ。そもそもスパイクミサイルは装甲の硬い甲虫の巨大生物などにも致命傷を与えられるような兵器だ。それがほとんど効果なしなのだ。
「信じられないですけど、でも、事実ですよ……」
『おい待ってくれよ!ならどうやって倒すんだよ⁉︎スパイクミサイルであれってことは今ある武器は使い物にならないってことじゃねーか!』
小林隊員の言う通りだ。手の打ちようが……。
『馬鹿者!そうそうに諦めてどうする!』
あまりに迫力のある声が急に通信機から聞こえてきた。高橋副隊長の声だ!
「た、高橋副隊長!」
『全くお前らは……。いいか聞け!さっき俺の元に連絡があった。第二作戦室の戦闘隊がもう五分でこちらに到着する。まずはそれまでの間、我々でこいつを足止めする!いいな!今は倒すことは考えるな!足止めすることを考えろ!危険を犯して攻撃するときではない!……わかったか泉、間宮!』
「「は……はい。すみません……」」
『いいな!さっきも言ったように離れて遠くから攻撃しろ!そして、狙うのは奴の足元だ。わかったか⁉︎』
「「りょ、了解!」」
さすがは高橋副隊長。状況判断から指示までとても的確だ……。
僕たちは副隊長の命令通り足元めがけてバーミリオンブラスターで攻撃を開始する。
あらゆるところから飛んでくるレーザーによってマキシベアは思うように動かないようだ。
『よう!待たせたな!第二作戦室到着だ!よく足止めてくれた!』
鷹木第二作戦室隊長から通信が入った。どうやら第二作戦室が到着したらしい。しかし、相変わらず騒がしい部隊だ。
『こっからが本番だ!隊員全員!気ぃ引き締めて行くぞー!』
『第三作戦室戦闘隊!足止めは終わりだ、攻撃に移るぞ!』
各戦闘隊を率いるリーダーの言葉に隊員全員が奮起した。
そうだ!ここからが本番だ!




