十一話 第一作戦室ー対海洋巨大生物専門部隊ー(3)
トビウオ型巨大生物は猛スピードで日本本土に向かって来ている。その速度は180ノット。時速約333km/hである。
確かブルーシーの最高速は185ノットなのでなんとか対応可能であろう。とにかく僕たちは飛び出したところを撃ち落とすことに集中しよう。
「間宮くん、小林隊員はちゃんと誤解といたの?」
「いやそれが、誤解を解こうとしたんですけど言い訳だって言って突っぱねちゃって話にならなかったんです」
「ありゃりゃ……そりゃあ相当北条さん怒ってるよ。もうダメかもね」
「……そんな気がします」
ピピピと着信が入る。副隊長からだ。僕は通信機を取った。
『泉、間宮両隊員。今作戦の目的はあくまでも第一作戦室の支援だ。よって我々の仕事はトビウオ型巨大生物が飛行に使用する胸ビレの破壊だ。いいな』
「了解です」
胸ビレの破壊。となればミサイルではなくレーザー兵器によるピンポイント攻撃の方が有効だろう。
僕はバーミリオンブラスターの発射準備を整える。いきなり水中から飛び出されては手に負えない。
「間宮くん、現れたみたい」
生体反応装置に巨大な反応がある。おそらくこれだろう。
この海域に鯨のような巨大な生物はいないはずなので間違いないはずだ。
『各機戦闘態勢!いつ飛び出しても対処できるよう常にバーミリオンブラスターは発射可能状態にしておけ!海中では既に戦闘が開始された!』
「「了解!」」
僕は海に目をやる。突如爆裂音とともに水柱が立つ。ブルーシーの魚雷攻撃が直撃したようだ。
『飛び出すぞ!航空部隊、よろしく頼む!』
『了解』
通信がはいってすぐだ。トビウオ型巨大生物が海面から飛び出した!天高く舞い上がると胸ビレを広げ、グライダーのように滑空する。想像以上に速い!
「泉隊員!」
「わかってる!回り込むわよ!」
泉隊員はウィッシュスターを反転させて一気に加速させる!
瞬く間に巨大生物の側面をとることに成功する。僕はすかさずバーミリオンブラスターを発射した!
バーミリオンブラスターは胸ビレの付け根に命中し、滑空する巨大生物のバランスを崩した。
バランスを崩したところに今度は山内隊員の操るウィッシュスター二号機が攻撃する。
僕が撃ち抜いた箇所と同じ場所を見事に撃ち抜き、胸ビレを焼き落とした。おそらく撃ったのは小林隊員だろう。
完全に飛行が不可能になった巨大生物はきりもみ回転しながら海面に激突した。
『落としたぞ、あとはよろしく頼む』
『おう助かった。あとは任せておいてくれ!』
『よし、総員退却。あとは第一作戦室に任せる』
「「了解!」」
僕たちの任務は終わった。倒してくれると信じて、僕たちは帰還した。
その後、基地に戻った頃に第一作戦室が見事巨大生物を討伐したと連絡が入った。
どうやら片側の胸ビレがなくなったために、水中での移動速度も落ちて倒しやすくなったそうだ。
「役に立てて良かったですね」
「そうね。……あれ、そんなことより小林隊員は?」
そういえばいない。どこに行ったのだろう?
「あー、小林なら北条の誤解を解きに行ったよ」
「……解けるんですかね?」
あの様子だと相当な頑張らないと誤解は解けそうにないけど……。
「さあねえ?それは神のみぞ知るってところか……」
「無理だと思うんですけどねぇー。私」
……。
「なんで皆さん黙るんですか?」
「いや、なんか考えてみるとなかなか可哀想な幕切れだなと」
まだ別れたと決まったわけでもないのに随分な言われようだ。
「とりあえず帰ってくるの待ちますか?」
なんだか気になるということでみんなで小林隊員を待つことにした。
しばらくすると小林隊員が顔をうつむかせてやってきた。
まさか…ダメだったのだろうか?
「どうだったんですか?」
しばらく間を開けて小林隊員は顔をばっとあげた!
「誤解解けたぞー!はー危なかったぜー!誤解の種をまいた女友達に電話して証言してもらえなかったらガチで別れてたかもな!あー良かった」
なんと、誤解を解いてきた!
「…なんか別れて欲しかったな」
「なんでだよ!」
「冗談だよ。理恵の機嫌も戻ったのなら良かったじゃないか」
「僕あれ見てたのでダメだと思ってしまいましたけど、本当に良く誤解を解きましたね」
「おう。早速食事の約束も取り付けたしな」
「なんだよ、自慢か?羨ましい野郎だな」
なんにしても、いつも通りの小林隊員に戻って良かった。その日の仕事は最近の中では一番面白かった。
巨大生物が東京に降り立つ。かつてない危険な巨大生物。害悪を超えた災厄巨大生物がついに出現!
次回、災厄巨大生物!
クマ型災厄巨大生物マキシベア登場!




