十一話 第一作戦室ー対海洋巨大生物専門部隊ー (1)
ここ最近ずっと第三作戦室には巨大生物の目撃情報が来ない。隊員達は訓練やパトロールくらいしかすることがなく、意外と暇だ。
今日という日も暇な一日となるのだろうと思って出勤した。
第三作戦室に入ると、小林隊員が既に椅子に座っていた。自分が一番早いと思っていたので驚いた。
「おはようございます。小林隊員、早いですね」
「うん?あー間宮か。おはよう。……ハァー」
あれ?なんだかいつもの小林隊員じゃあない。いつもなら気さくに話しかけてくれる人のいい隊員なのだけど、どうかしたのだろうか?
「どうかされたんですか?」
「いんや別に。なんでもないよ」
何でもないわけないと思うのだけど……。とはいえ、言いたくないことを無理に言わせてもと思いそれ以上聞くのはやめておくことにした。
僕も自分の席に座って、新聞を広げる。しばらくしーんと静かな空間となった。
「おはよう!」
「おっはよー!」
「あっ。武田隊員、泉隊員。おはようございます!」
武田隊員と泉隊員は基本いつも同じ時間に出勤してくる。最近やる事がないからか出勤時間は普段より20分遅い。
「……はぁー。ぶつぶつ」
小林隊員が大きなため息をついた。なんだかぶつぶつ言っている。何を言っているのだろうか?ここからでは聞き取れない。
「えっなに?間宮くん!小林隊員に何かあったの?」
「それがわからないんですよ。聞いてみてもなんでもないって言われちゃって……」
「……怪しいな」
「ええ。怪しいですね……」
武田隊員はぶつぶつと一人喋り続ける小林隊員に近づくと、しゃがみ込んで小林隊員の顔を覗き込んだ。
「……なんだよ」
「小林お前……。理恵をまた怒らせたな?」
武田隊員がそう言った瞬間に小林隊員の顔がどんどん赤くなっていくのが目に見えてわかる。
「えー!小林さんまた怒らせたんですか⁉︎」
「っだぁーー!声がでかいってば!他の隊員に聞こえるだろうが!」
「えっ?どういう話なんですか?」
話が全くわからない僕は泉隊員に聞いてみた。
「小林隊員が彼女を怒らせたのよ。さっきみたいになった事が前にもあってね。その時は……」
「あー駄目駄目駄目!間宮!聞くな!これ以上聞くな!泉!お前も喋るな!」
小林隊員は大声をあげて泉隊員の言葉をかき消す。そんなに恥ずかしい内容なのだろうか?
「えー!」
「えー!じゃねぇんだよ!もう喋るな!それ以上は駄目だ!絶対駄目だ!」
「うっす。おはようってなに?すごい騒がしいな」
「山内隊員!おはようございます!」
「山内さん!小林隊員また彼女怒らせたらしいですよ!」
「彼女って第一作戦室の北条さんか?あらら。まぁた怒らせたのか?」
「手当たり次第に広めるなぁ!」
第一作戦室?って確か。
「 第一作戦室。別名、対海洋巨大生物専門部隊。その名の通り海中に潜む巨大生物専門の部隊で隊員の殆どが元海上自衛隊の者達である海のスペシャリストの揃うエリート集団。朝っぱらから騒がしい。少しは静かにしろ」
「た、高橋副隊長…。っは!おはようございます!」
「ああ。おはよう。んで小林。お前は彼女を怒らせないと気がすまないのか?」
「そ、そんな事ないですよ!誤解なんですよ」
「誤解ねぇ。本当なんだか……」
だ、誰も全く信用していない。プレイボーイなんだろうか?だったらちょっと引いてしまうな。
「一体なにやったんだ?」
一呼吸置いて武田隊員が問い詰める。
「いやぁ……、それは、その……」
小林隊員は口ごもる。それは余計怪しく写ってしまうと思うのだけれど。
「……。わかったよ言うよ。ただちょっと高校時代の女友達と男友達とで食事してただけなんだよ。んでたまたま男友達がトイレに行って、女友達と二人きりになった時に偶然見られてよう……」
「小林さん。それは早く誤解とかないとまずくないですか?」
「泉隊員の言う通りだよ小林。今からでもいいから謝ってこい」
「今からって、行けるわけないだろ?もう他の隊員きてるし!恥をかけと⁉︎」
「大丈夫だ。小林隊員がよく彼女を怒らせるって話は結構伝わっている。心配するな」
皆さん結構酷いことを言っている。見ていて可哀想になってくる。
「謝るのは少し後にしてもらおうかな」
「飯塚隊長!」
いつ作戦室に入ってきたのだ?全く気がつかなかった。
「みんな聞いてくれ!たった今第一作戦室に巨大生物出現との一報が届いた。巨大生物はトビウオ型巨大生物。この巨大生物はかなり長時間飛ぶ事が出来るとの報告もある。そこで、飛んだトビウオ型巨大生物に対応するために我々第三作戦室に救援に来て欲しいとの事だ。久々の戦闘だと思うがしっかりやってくれ!」
「「了解!」」
「小林隊員。謝るならその後にね。ちゃんと誤解は解いておいてくれよ」
「は、はい……」
かくして、僕たちは久々の戦闘に赴くこととなった。




