三十四話 決戦(3)
フェイルノート発射後の余波が消え、空から陽の光が雲間からのぞいた。
反町の討伐地点に僕の足は向かって歩みを続けた。灰のような反町の体の欠片が積もる中に蠢いている者の姿を見た。
「あれだけやられておいて、まだ生きているのかあんたは……」
ホルスターから銃を取り出して既に人とは思えない異形へとなりはてた男に向けた。
「……この先、同志が必ず現れるさ。……私の改良し続けた細胞は、とてつもない金を動かす。死の商人共は、この私の姿を見た。この世界に、解き放たれるのだ。私の細胞が……」
「そんなことにはさせない。この細胞は人類を救うために利用するものだ」
「神山や貴様の祖父と同じことを言う。……人は、争いから逃れられはしない。争いによってこそ、死があるからこそ、我々人類は繁栄した。あの細胞は、争いを起こせる。そして終末に向かわせることができるものだ。正しいのは、私だ!」
僕は引き金を引いた。反町隆史の口腔内を貫いて地面に焦げ跡を残す。もう再生されない穴から黒く炭化し始める。
「万能の医療細胞など、エゴだ……死ぬことの決まっている……人間が……生きながらえようなどと……おこがましい。それを、わかっていない……」
「そのエゴで救われるものもある。不幸や悲しみを生むようなものより、生きているうちは希望に縋る。僕は両親のエゴでこうして生きている。あなたの言うことは正しい部分もあるのだろう。でも、それでも、僕はあなたを否定して、巨大生物という恐怖を拭い去って、新たに万能の細胞で希望を見せる。その様をあの世で見ているんだな」
「……ンぐ、それ、は、タ……ッくりゅっがっ……」
言葉にもなあらない言葉を残して反町隆史は完全に消滅した。
遠くから隊員たちが駆け寄ってくる。
構えていた銃をホルスターに収めて、やってきた飯塚隊長に向き反町隆史の消滅を確認したことを伝えた。
「そうか、本当によくやってくれた。……任務ご苦労であった」
各員が一斉に僕に対して敬礼をする。僕も急いで敬礼を返す。
7月8日 午前11時12分において反町隆史及び巨大生物の掃討が完了した。そしてこれが巨大生物特別攻撃隊における最後の戦いとなった。




