三十二話 流星の如く……(4)
基地でなんとか到達することができたのだが機体は限界が近かった。
急遽、滑走路に20人のメカニックと10人の消火員が準備をしていて、何が起きても大丈夫なようにされていた。ゆっくりと垂直降下して、何とか火災を起こすことなく着陸することができた。
「よし、すぐに脱出するぞ」
機体前方にある緊急用の脱出口から出ると、機体の状態がよく分かった。機体前面から、斜めに何かが突き抜けた穴が開いていて、機体発艦口とBG砲砲門、ジェネレーターが破壊されいている。燃料タンクと翼付近の機関はダメージがなかった。
整備士が言うには修理には最短でも2か月かかるという。航空母艦と強力な戦力を失ってしまったのは非常に大きな損害だ。
「間宮。今すぐ出撃行けるか?」
「はい。行けます」
「……よし、ウィッシュスターで発進。高橋を援護してくれ」
「了解!」
僕はすぐに格納庫に走った。
格納庫のウィッシュスターに乗り込もうとすると、大貫整備士長がやってきた。
「間宮、そのウィッシュスターは大幅な改良を施しておいた。推力が30%、積載量が15%増加させた。各種装甲を軽量化してある。最高速度も少しばかり上昇してる。操作性は少々ピーキーなものになっている。スターライトのように高性能な姿勢制御の翼下ブースターはついていないし、可変欲もない。スターライトの感覚で飛ばすなよ」
「わかりました。武装類は最新のものですよね?」
「ああ、だが、ジェネレータの関係上、クリムゾン・レイはさほど連射できない。常に気を配れ」
「了解!すぐに発進ます」
「よし、発進だ!カタパルト準備!近くにいる奴はすぐに離れろ!」
コックピットに入ってエンジンを作動させて計器を確認した。操縦桿の感覚はスターライトより少し軽い。
『間宮隊員。いつでも発進どうぞ!』
「はい。行きます!」
カタパルトで加速して空へと飛び出すとすぐさま、高橋副隊長の援護のため飛んで行った。
最高速で飛んでいくと地上からの攻撃が行われている。しかし、反町は一切気にせず、高橋副隊長操るシューティングスターだけに注意を払っている。
僕はしょっぱなからスーパー3を右腕にめがけて撃ち込んだ。
「副隊長。援護します」
『了解。簡単に落ちるんじゃないぞ』
先ほどの状況から考えて、奴の指先から攻撃が行われている可能性が高い。伸ばした指先からの直線的な攻撃ならば腕の動きに注意しておけば見えない攻撃を食らうことはないだろう。しかし、反町は手の内を小出しにして、戦闘をあえて長引かせている節がある。
巨大生物の兵器としての有用性を裏社会のブローカー、大規模なテロリスト集団に見せ付けるのが目的。副隊長を討つつもりでいる反町にはまだ奥の手が残されているような気がしてならない。
副隊長の攻撃の合間を縫って再度右腕にスーパー3を撃ち込んだ。爆風の中から見えた奴の腕からは骨がのぞいていた。しかも再生が少し遅い。
「効いているのか?」
『奴の言う究極の細胞の特性は急速な細胞分裂。細胞分裂は有限なものだ。何度も再生を繰り返せば最終的には細胞分裂は止まる。まあ、現実的じゃあないが、勝つためにはそれも狙う』
それなら、これまで効いていないと思っていた攻撃も無意味ではなかったのだ。
『だが、今は、フェイルノートの一撃必殺の一矢を奴に確実に見舞うことだけを考えろ。とにかく射線上に留まらせる。攻撃を足元に集中する。間宮、連携攻撃だ。上手く合わせろ』
「了解!」
高橋副隊長と訓練したことを思いだせば、ついていけないこともないはずだ。とはいえ、機体の性能と練度の差はかなり大きい。
副隊長の攻撃に合わせるには一手早く動かなければ間に合わない。
『用意はいいな?』
「はい、行けます」
シューティングスターの後ろについて攻撃を開始した。




