三十二話 流星の如く……(3)
戦闘空域まで戻ってくることはできたが、ビッグスターの鈍重な動きではいい的にしかならない。
あの不可視の攻撃を回避するのはまず不可能であること、僕自身の操縦技術を考えても不時着をするのも難しいと考えて、かなり離れた位置から高橋副隊長の援護をするほかない。
効果のある武器は両端部長距離ビーム砲、チャージに時間がかかるものの、一発で巨大生物を焼き尽くす威力を持つBG砲のみだろう。
「高橋、今間宮のスターライトを撃墜した謎の攻撃について解析中だ。こちらも援護はするがあまり無理はするなよ」
『了解。援護よろしく頼む』
「間宮、シューティングスターに当てないよう援護射撃開始!」
「了解」
望遠機能でシューティングスターの動きをよく確認して、攻撃後の後隙を消すように砲撃を加えていく。スターライトのトライブラスターをはるかに上回る威力で反町の攻撃をそらすことは可能なようだ。
副隊長の操るシューティングスターは先ほどより速度を落としているが、空中機動の激しさは増している。僕が落とされた攻撃を副隊長なりに考察して、単純な読みやすい挙動だと攻撃を食らうと判断してのことだろう。
しかし、このままではじり貧になってしまう。現在の反町は並大抵の兵器では歯が立たない。現状ダメージを与えられそうなのはスーパー3かBG砲。急所に当てられれば倒せる可能性のあるフェイルノートくらいだ。
スーパー3以外はチャージ時間があり、それまでの時間稼ぎが困難であるうえ、あまりにも威力が高いがために射線上の被害も考慮して使用する必要があり使いどころがかなり限られる。それに、フェイルノートは固定兵器で大型と遠くからでもよく見えるため、破壊される可能性が高いというのも問題だ。
たとえ二射目が撃てたとしても、反町は先ほどの一射目でフェイルノートの射角を理解しているだろう。そうそう当たってはくれない。
ずっと攻め続けているのに、だんだんこちらが不利な状況になっている。
援護射撃でビーム砲を撃ち続けていると、エネルギー生成が間に合わなくなってきていた。BG砲を撃った影響だろう。ビーム砲の威力を80%まで減少させなければならなくなった。
威力を押さえたビーム砲では反町の攻撃をはじくことができなくなった。反町の射程距離内まで近づけば効果はあるだろうが、いい的になるだけで高橋副隊長に負担を増やすだけだ。
「隊長、このままでは援護ができません」
「エネルギーがダウンしたか。……仕方がない、増設したミサイルポットを使おう。特殊弾頭スパイクミサイル発射用意」
「了解!」
スイッチ類を見渡した。MISSILEと書かれたスイッチがあったのでそれをオンにした。発射ボタンは操縦桿横のスイッチを押すと発射される。
4発のミサイルが水平発射されて着弾地点で大爆発を起こす。通常のスパイクミサイルをはるかに超える爆発力で少しバランスを崩したように見えた。
残弾数は残り20発、エネルギーが回復するまでこれでつなぐしかない。
[鬱陶しいな。そこの、落とすか]
反町がこちらを向いて、手を伸ばし、指を突き出す。その瞬間アラートが鳴り響いた。このビッグスターが攻撃を受けたようだ。
「見えない攻撃か」
何とか落ちないよう保っているが、ジェネレーターをピンポイントに狙われたようだ。これではビーム兵器はおろかこのままでは飛べても何もできない。
「間宮、一度基地に引き上げるぞ」
「わかりました」
「高橋。すまんが後を頼む……。増援は向かわせる」
『了解だ。任せておけ』
操縦桿が重く、操作性が悪いが何とかできる範囲だ。着陸に気を遣うだろうが基地までたどり着けば着陸の補助をしてくれる。なんとかそこまで向かうしかない。急がず、慎重に撤退を始めた。




