三十一話 科学の悪魔(1)
反町隆史の演説とともに突然おぞましい咆哮が東京中に響き渡った。接敵していたクマ型巨大生物がたじろいでいるのが目に見えてわかった。
『くそ、いったい何だってんだ?!』
『メインイベントと言っていた。恐らくだが反町自身が巨大生物と化したんだ』
「それじゃあなおさら急いでこの巨大生物を倒さなければ……」
『ああ、そうだな。だが……』
ここまでの戦いでほとんどの実弾兵装を使い切ってしまった。残っているのはスーパー3が2発くらいだ。ビーム兵器は高出力ジェネレーターの御陰でまだ使えるが、高威力での発射は無理だろう。それに燃料も残り少ない。
『仕方ない。それなら、こっちに考えがある。本当はまだ使いたくないんだが、高橋副隊長がピンチだし、お前たちももう長くはもちそうにないしな』
『山岡?』
『いいか、いまから収束ビーム砲を奴の心臓部に撃ち込む。かなり強力な一発だ。撃ったら砲身が熔けて使い物にならなくなる』
『それで撃ち抜けるのか?』
『多分な。威力はクリムゾン・レイの10倍以上あるからいけるだろう』
しかし、動く相手のピンポイントを撃ち抜くのは容易なことではない。チャンスは一度きり。失敗すればフェイルノートまでたどり着く可能性が高くなる。確実に成功させなければならない。
『よし……。間宮、収束ビームでぶち抜いたところにスーパー3で追撃、できるか?』
「はい。大丈夫です」
『よし、決まりだな。やるぞ!』
山岡隊員の掛け声とともに、行動開始した。とどめ役の僕は離れて様子を見て、地上では山岡隊員たちが収束ビーム砲の発射準備を整える。ウィッシュスターを駆る山内隊員が時間稼ぎと誘い込みを行う。
クリムゾン・レイを発射して注意を向けようとし続けているが、クマ型巨大生物は気にせずゆっくり前進を続ける。何とか立ち上がらなければ心臓部は狙えない。
『山内、何とか立たせろ!』
『やってる!』
「スーパー3を使いましょう。とどめの一発は残ります」
『しかしな……』
「大丈夫です。確実にやってみせます」
『……わかった。下から撃ちこんで無理やり立たせるんだ』
「了解」
一気に近づいて超低空からクマ型の真正面から侵入する。顔が見えたタイミングで上昇し至近距離でスーパー3を撃ち込んだ。爆風まき込まれないように一気に速度を上げて離脱した。クマ型巨大生は超爆発で体を起こした。
すぐさま旋回してまたクマ型の正面に位置した。
『よし、いくぞ!収束ビーム発射!!』
細く超高熱のレーザーが強固なクマ型の皮膚を焼き、貫いた。開いた穴から白い心臓部が見えている。そこめがけてすーぱー3を撃ち込み吹き飛ばした。
クマ型巨大生物は仰向けに倒れ込み、あたりは血の海と化した。
『よし、上手くいったな!』
「はい、これで高橋副隊長の救援に向かえる」
『その前に、急いで補給に戻るぞ』
早く最前線に出なくては。高橋副隊長も補給なしで戦闘を続けるのは無理だ。ここで向かわないとガス欠になりかねない。急いで基地へと帰還した。




