三十話 最強対最凶(3)
0-1の吹き飛んだ頭はみるみる回復していき、10秒も経つと完全に修復してしまった。完全回復を果たした0-1は大きく両腕を大きく水平に広げると爪が三倍にも伸び背中からは鋭くとがった突起が皮膚を引きちぎって姿を現した。
『これが0-1の攻撃特化の形態。細胞の分裂速度を遠隔で調整する装置を作り上げる事でこれを可能とした。その攻撃力をお見せしよう』
0-1がこちらに背を向けた。瞬間的に危険を感じ瞬時にシューティングスターを急激に加速させた。機体に振動が伝わってきてガタンという音が後ろから響いた。計器類を見ても異常がないところを見ると何かがかすったようだ。0-1を見る限り背の突起を何らかの方法で超速射出したようだ。撃ちだす前に緊急回避を開始したこのシューティングスターにかすったところを考えても音速をゆうに超える速度だったのだろう。装甲を強化しておかなければ先ほどの一発で墜落していた可能性は高い。
どうやら初期形態の0-1を仕留めそこなったのは大きな失敗だった。今の奴は再生力があれば何発でも撃つことができる広範囲遠距離攻撃、近づいてきた敵を切り裂く両手の爪。しかも動きが機敏になっているようだ。
随分と不利な状況下だがここで引くわけにはいかない。ここで引いてしてしまったら死んでいったあいつ等に顔向けができない。
このまま距離を取っていては突起の射出をかわしきれなくなる。勝負を決めるには近づいて急所を撃ち抜く以外にはない。
「次の突起射出をかわして突っ込むか。……うん?」
既に突起射出をしてから10秒は経過している。しかし未だに半分も回復していない。これは回復速度が低下している。攻撃に特化させるために回復速度を犠牲にしたということなのであろうか。
とにかくチャンスだ。いま攻撃を加えることができれば今の火力でも倒せるはずだ。反町隆史の思惑通りなのであろうことは分かっている。例えそうだとしても攻め時を逃すわけにはいかない。
呼吸を整え旋回して真正面から突っ込む。再装填が完了した突起がこちらを向き射出される。撃ち落とすような時間はない。俺は繊細な操作で弾幕を紙一重のところでかわしきって背中に向けてクリムゾンレイを連射した。赤く染まった背はさらに赤黒くなり肉が飛び散った。
0-1は雄たけびを上げる。先ほどまでよりもダメージを受けているようだ。どうやら射出した後の背中は肉がむき出しで防御力は低いようだ。
かなり危険ではあるがあの突起は目視して回避は可能だ。倒すための道は見えた。
「さあここからだ」




