二十九話 あの日の再来(4)
僕が奴の目論見に気が付いたと思った瞬間、無線機からノイズがかかった声が聞こえてきた。
『どうも皆様ごきげんよう……。反町隆史です』
「反町……隆史……」
『世界中に配信するというのは何かと時間がかかるものでね。こんな時間になってしまって申し訳ない』
現時刻は7時30分。本来はもっと早い段階で世界中に配信する予定だったのかこの男は。
『まず、今から全世界に私の細胞の力を、巨大生物の力をお見せしよう!当然、その相手にはふさわしい男を用意している。4年前巨大生物を打倒した男、私にとっても憎き男。世界最強のパイロット高橋和正!』
「やっぱりか!」
僕の考え付いたとおりだ。奴は細胞に売りさばくために最初の巨大生物を倒した高橋副隊長を打ち倒すことでアピールするつもりなのだ。そのためにわざわざ強靭で一機ではどうすることもできない相手と一機でもどうにかなる相手を用意して、高橋副隊長と僕たちを分断したのだ。クマ型巨大生物が真っすぐフェイルノートに向かっていたのも対処させざるをえない状態にして、しかも副隊長と距離を離して援護に行くのも難しい状態にしたのだ。反町隆史が副隊長の性格などを知っていてどういう判断をするのかも知っていたのだ。
「山内隊員!副隊長を助けに行かないと!」
『そうしたいがコイツをほおっておくわけにもいかないだろう!くそ、反町の野郎に完璧にはめられちまった!』
クマ型巨大生物は動きは鈍っているが前進を止めはしない。ここで戦力が減ってはコイツを食い止めることは非常に難しい。
『高橋副隊長に無線繋がるか?』
『ダメっすね。繋がらない!』
戦闘機の無線ではなく基地からなら繋がるのではないかと考えて僕は飯塚隊長に通信を入れた。
「隊長!高橋副隊長に無線繋がりませんか?」
『こちらからもやっているのだが、まったく繋がらん。恐らく反町の仕業だ』
それでは副隊長の状態を知ることができない。
『すみません隊長少しいいですか』
突如若宮隊員の声が無線から聞こえてきた。
『高橋副隊長のシューティングスター付近に新たな反応を確認!かなり大きいです!これまで出現した反応の中でも最大のものです』
「隊長!」
『私たちが今からビッグスターで出動する。お前たちはクマ型巨大生物に集中しろ』
「了解……」
『間宮……高橋副隊長のことは隊長の任せよう』
「はい」
『もう一度スーパー3を体内に撃ち込む。いいな!』
「了解!」
僕は不安を感じながらもクマ型巨大生物に向かっていった。




