6話 心
差出人ゲームに進んだ4人。
今までずっと亀裂が入ったままの友情だったが、久しぶりにそんな亀裂など気にならないような普段通りの会話。
その会話が奏の心に変化をもたらした。
しかし変化したのは奏ではなく……。
ある日、私の中で何かがズレて行くのを感じた。
それは幼少期の家庭事情だろうか、学校での人間関係だろうか、私はそれを、ほとんど覚えていない。
しかし、変わってしまったことは覚えている。
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ある日、飼っていた猫が死んだ。
家族は皆泣いている、しかしそれは私には異常な光景に見えた、なんで泣いているのかわからなかった。
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ある日、双子の姉が交通事故により、死んだ。
それでもまた私は、悲しむということはしなかった。
しかし家族はとてもショックだったらしく、なんの感情もなく愛想もない私を、「姉」として接するようになった。
私はそれに躊躇いはなかった。
そうなるのならそれでいい、としか思わなかった。
私は丹生谷麗華だ
丹生谷奏ではない。
しかし周りはそうは思っていない、街を出歩けば、「丹生谷さん家の双子の妹さんの方、交通事故で亡くなったんだって。」
そればかりだ。
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それから不思議なことに、丹生谷奏になってからは心が芽生えた。
初めて感じた喜怒哀楽。それだけで私は丹生谷奏でいる理由になった。
丹生谷麗華は決して人前に出て何かをするような人ではなかったが、丹生谷奏は違った。
私は、それすらも偽った。
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しかし、2年が経つ頃、私は他人を不幸にすることで満足感を得るようになった。
他人を不幸にしたいが故、マインダーゲームという、都市伝説を知った。それはただの都市伝説であり、現実だ。マインダーゲームを、私は作り上げた。
道端で死を待つ人間、生きながら死んでいる人間、全てにおいてアテのない人間。それらをかき集めて管理をさせた。
しかしこれは善人である奏にはありえないことであった。
それは初めて麗華が感じた感情だった。
その頃、私は高校に入学した。当然名簿に丹生谷麗華と書かれることはない。
私は奏になってから、初めて友達を作った。
それも3人も。
彼らは奏をあの「事故で双子の妹を失った可哀想な姉」としてではなく普通の人間として接してくれた。
それが奏は何よりも嬉しかった。
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奏の友達だけど、麗華の友達じゃないんだ。
それに気付いた麗華は、よからぬ事を考えてしまった。
彼らを不幸にしたい。
普通はそんなことをしようとは思わないだろう、思っても、行動に移すことなど絶対にありえないだろう。
しかし私は違った。
今まで奏でいても、不満はなかった。
それは麗華に感情が無かったからだ。
麗華は今までの理不尽さに気付いた。
おかしいおかしいおかしい。
なんで私は私じゃない友達と仲良くしているのか。
おかしい。
友達が出来て嬉しかったのは奏だ、私の友達ではない、私は嬉しくなんて思っていない、私に感情があっても私は嬉しく思わないのに。
どうして。
それだけでは無いが、私はこれ以上考えるのはやめた。
私は彼らを不幸にすることを実行しようと決めた。
それはただの八つ当たりだ。そんなことは知っている。知っていたが、麗華はその八つ当たりに何一つ抵抗は感じなかった。
麗華が罪悪感を覚えるのは近い未来だった。
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そして今、近い未来が顔を出した。
申し訳ない申し訳ない申し訳ない申し訳ない。
彼らの不幸に喜びを感じていたはずの麗華だったが、身に覚えのない感情に頭が押しつぶされそうになり、それと同時に瞼を閉じても感情が形となって溢れ出てきた。
私は何をしていたのだろうか。
私はなぜこんなことをしているのだろうか。
私は、私は。
思考が頭をかき混ぜる、初めてが多すぎて、ついていけない。私が私に置いてかれている。
私を心配する声が聞こえる。私はその声の主を探るが、ぐしゃぐしゃになった頭が邪魔をして分からなくなってしまった。
私はその姿を追うが、視界がかすんで何も見えない。
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パシン、と控えめな音を立てた。
私は目が覚めた、泣いていたはずだ、しかしそれは過去であった。ぐしゃぐしゃになった頭もまた。
それゆえ、私はこの男が言う言葉も、聞き逃すことがなかった。
『もういい加減泣きやめよ、麗華。』
あるいは、衝撃的な内容だったからかもしれないが、私は、そんなことはどうでもよかった。
はい。7ヶ月ぶりです。
どうしてこうなったんでしょうか。
私にもわかりません。
リアルが多忙だったのでしょう。今は暇なので、書く時間はあります!
書くモチベがもっと湧いたらいっぱい書くかもしれません!
露骨ですがコメント稼ぎですw