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買いますあなたの記憶

作者: PeN

《memory》


20XX年のいま、誰もが一度は耳にしたことある店だ。


なにしろ、殆ど時間をかけずに大金をもらえるというため、沢山の人が利用する


一見してみるとそりゃ危ないし、危険な仕事みたいに見えるかもしれない。

しかしこれは国公認のシステムであるため、なんら心配はしていない


人は誰しも過去に沢山の経験をしているが、誰もが共通した経験というわけではない。

様々な理由からやりたいことがやれなかった人も世の中には沢山いる。



例えば、生まれつき足が悪く今まで1度も走ったことがなかった人と陸上部で毎日走っている高校生がいたとすれば


この時点で売り手と買い手の関係が成り立つわけだ。


売り手である陸上少年は毎日走っているわけだから、その内の1日、走っている10秒間くらいと思いその10秒間を売り


1度でもいいから思い切り走りたいという願いを持った人が買う




双方得をするといった考え方のもと構成された、よく出来たシステムだ







……リリリリリリン


窓から差し込む光に目を眩ませながら、ゆっくりと体を起こし目覚まし時計に手をかける


いつも通りの朝を迎え、きっといつも通りの生活を送る




時計に目をやりながら仕事の支度をすれば、星座占いが良かったって自慢する人もいない



机にあった1枚の紙切れ



高校の同窓会の知らせだろうか



今更行ったところでなにがどうというわけではないが、僕は心にひっかかるものを感じた


ハガキにプリントされたクラス写真を見ても、

写真の隅から伝わってくる想いを僕は思い出すことはできない



ただ今も僕は、知らない誰かを想う

忘れることの出来ない知らない人を


きっと高校最後の夏




あの日から僕の時間は止まっていたんだ




((がやがや


『よーし今日も授業やっていくぞ~、教科書開けー』



人と関わることはあまり好きじゃない

遠くにいた君は、今日そんな僕の隣にやってきた




「ごめん!!教科書一緒に見てもいい??忘れちゃってw」


「ん」


「ごめんありがと!!今度なんか奢るね!」



いつもクラスの中心にいるこの子は、きっと僕とは全然違う世界にいて

いつもまっすぐにどこかを見つめている



授業はとても退屈で、進路だって正直やりたいことが見つかったわけでもない


今のままでいいのかなんて、そりゃきっとダメなんだろうけど

自分にはそんなことわからないって、そう考えてないと頭がおかしくなりそうだ


「コソコソ……ごめん、ここのノートみせてっ」


スッ


「わぁ、分かりやすい!字が綺麗なんだね!女の子みたい」


「別に」


「んーーー、ありがと!」


きっと僕はとても無愛想で、つまらないやつだ。

何事にも一所懸命で明るい彼女と僕は目を合わせることはできなかった



キーンコーンカーンコーン



授業終了を知らせるチャイムが鳴る



『もうすぐ夏休みだぞ~、今年は受験だ!呑気に遊んでなんかいられないからなーー』




担任の言葉をなんとなく聞き流し



帰り道部活に入ってない僕はいつもと違う道で帰った


一面に海を眺めることができる、波の音を聞きながらゆっくり落ち着ける道



なんとなく気分が上を向かない日、決まってこの道を通る



陽の光を反射させてキラキラ光る海を見ると、優しさに包まれる気持ちになる



今日も片耳にイヤホンをつけ、英語のリスニングを流しながら

1人帰るはずだった



いつもと違うこと、ささいなことだった



後ろから肩をポンポンと叩かれ振り返ると

彼女がいた


「やっほーー」


「う、うん」


「今日は色々迷惑かけちゃってゴメンネ、w

いつもこの道通ってるの??」


「たまたま」


「ふーん、この道私けっこう気に入ってるんだー、風が気持ちよくて広い海見てると悩みとかどうでもよくなる」


「わかるよ」


「受験勉強とか、部活とか色んなこと考えてるともう嫌になるw」



いつも明るい彼女にもやはり悩みはあるようだ、

少しホットしている自分に嫌気がさした


「暑い、」


「だねーー、もうすぐ夏休み!でも今年はなーんかなんもできなさそうだなーー」


「仕方ないよ」


「でも高校生活最後だよ??やっぱ夏らしいことしたいよね〜」


「んーーー、まあ仕方ないよ」


「それ二回目w。でもね私、今しかできないことがある気がするの」


「思い出作り、か」


僕がそう言うと彼女はどこか寂しそうな表情を浮かべた


すぐにいつもの笑顔に戻り、なにか思いついたような顔をする




「ねーねー!花火しようよ!!」


「今から?」


「そう!!今から!!!時間ある?」


「まあ、あるけど」



そう言うと彼女は僕の手首を掴んで走り出した



手を繋ぐ(?)ことは初めてだった、



近くのコンビニで花火とライターを買った僕らは、さっきまでいた海の砂浜まで歩いた


「花火なんて、何年ぶりだろ」


「えーーそんなにやってなかったの???」


「小さい頃にやった記憶があるだけで、それ以来かな」


「でも私もここ何年かはやってなかったかもw

高校に入ってからは結構忙しくてさ~」




「あ!!!w」


どうやら砂に足がハマったようだ


一生懸命足を動かす彼女



「引っ張ってもらってもいい?w」


「あー、うん」


彼女の居る方へ手を差し出した


彼女はギュッと手を握り、握ったことを確認してから僕は力いっぱい引っ張った



「あっ!」


コケそうになる彼女



握ったままだった手をそのまま引き寄せる



「ありがと」



お互い少し顔を赤くした


「それじゃ、火つけよっか、、」


「うん、w」



ロウソクに火をつけ、そのまま花火に火を移す


少し経ってから先端から綺麗な火花が溢れ出した




「わあぁーー綺麗ー」


「そうだね」


「火頂戴!!」


「あ、うん」



彼女は両手に花火を持っていた、さらには口で咥えようとしてる




「見てて、!三刀流、フガっ!!」


「刀じゃないし、三刀流って、、なにこれ危ない笑」


少しビビリながら必死に花火を持つ彼女を見て思わず笑ってしまった



「そんなに必死にやるものだっけ花火って笑」


「あw」


「?」


「笑った顔見たの初めてかも」


「いやいや、怪我するからやめとけって笑」



「フ、フガガw」



遠くて、きっと関わることなんてないだろうって思ってた


だけど今日こうやって一緒に笑ってる




「楽しいかも」


「かもじゃないよ!!楽しいよ!w」


「いや、友達(?)とこうやって一緒になんかするの初めてだったから」


「(?)なんて付けないでさw友達だよ友達!」


「うん、ありがとう」


「全然!、こちらこそありがとうねw」


正直嬉しくて、楽しかった

高校に入ってから三度目の夏

これからも頑張ろうって、やっとじゃないけど

友達ができて嬉しかった



「まだまだ残ってるよ、!少し買いすぎたかなあw」


「だから言ったのに笑」


「ま!消費してこーーー」






目が覚める、昨日の余韻がまだこの胸に残ってるみたいだ


友達、心くすぐったい響きに僕は胸をなでる


今日も話せるかな

隣の席だから、きっと




ガラガラガラガラ


「お、おはよう」


「え、?私に言ってるんだよね?wおはよう」


「昨日はありがとう楽しかった」


「あ、ああ昨日ね!!楽しかったね!こちらこそありがとう美味しかった」


「美味しかった、?」


「昨日のは、、花火だよ?」


「あ!そうそう!!花火、!!綺麗だったねーw」


「うん?」


「またいこうね!」



その言葉には、どこか表面ばかりに思え

心と心の距離がぐんと遠くなった気がした。



ただ朝は忙しくて色々テンパってたのかと思ったが、よくよく考えてみるとそうでもない




友達が沢山いる彼女からすれば思い出なんて数え切れないほどある、忘れて当然だ


自分のなかで区切りをつけた


『友達』そんな言葉に浮かれてた自分が馬鹿らしくなり、同時にやるせなく


寂しいなんて、今まで特に考えたことなかったのに





休み時間、僕は机に伏せていた


自分の中で納得しても、納得しきれてない自分がいる

自分らしくない



クラスメイトの会話が聞こえてくる


((ああやって笑顔誰にでも振りまいて、ほんと性格悪いよねえ))


((どうせまた適当に接してるんだろ))


((上っ面の関係って、ああいうことをいうのね、))


((今度は隣の席のやつかよ、朝聞こえてきたぜ))



持ち前の明るさから、クラスの中心にいると思っていた彼女


よく考えると聞こえないはずのない声を聞かないふりして笑ってる


無理してるのかな


僕は昨日彼女がふと見せた寂しそうな表情を思い出した。



もう1度声をかけようかと思ったが、朝の会話を思い出して少し躊躇した


「やめとけやめとけ、あんな尻軽女、近づいたら遊ばれて終わりだぜ」


「そうよ。やめた方がいいわ絶対」


今まで話したこともないクラスメイトに止められる


わけがわからず僕は引き下がった



前まで見ていた彼女と今日の彼女、遠くから見てればきっとなんら変わらない


踏み込んでみて初めてわかったこと



彼女は1人だ




放課後彼女は部活に行かずそそくさと教室を後にした


彼女のカバンから1枚の紙が落ちた



《買いますあなたの記憶memoryへお越しください》


なんだこれ、紙には住所と、ただ一言かかれていた




一応自分のカバンにしまい、彼女を追いかけようかと考えたが


また明日渡すことにした



昨日と同じように海沿いの道を歩いて帰った

片耳にイヤホン、そして今日は失恋ソングを聴いていた




そこに彼女はいた



「あ、!隣の席のw」


「う、うん」


「いつもこの道通ってるの?w」




「この会話、昨日もしたよね?」


「えぁ!そうだっけ!?wごめん、」


「いや、いいんだ全然。それじゃ」


「あ!うんwじゃあね」




家に帰っても、彼女のこと考えてた


誰にでも同じような対応ということは、誰もが僕みたいに忘れられたって思ってるわけ??


なにか理由があるんじゃないかって


で、なんで僕はこんなに真剣に悩んでいるのか考えた




本人に聞くのは流石に気が引けるが、このままモヤモヤした気持ちで毎日過ごせない


聞いてやるって心に決めた





「おはよう」


「お、おはよう」


「急で悪いんだけど、昼休み時間あるかな、」


「昼休みー?う、うん大丈夫だけど、w?」



周囲の視線を感じる

ざわついてるのが分かる



そし





























































































































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