prologue
小学校を卒業し、自宅の近くに在る市立中学校に通い始めて、約2週間が過ぎた。
小学校よりも当然厳しい規律に規則。少々窮屈に感じるも、少しは慣れてきた方だと思う。朝には強いから寝坊して遅刻などというヘマはしないし、成績もそこそこ良い方だ。私の中学1年は、平穏かつ順調なスタートを切っていた。
ところで、私には最近気になることがある。だが気になることと言っても、例えるなら本棚の上にうっすらと埃がかぶってしまった、位の、潔癖症でもなければ放置するその程度のものだ。
どうやら私は、この中学校の一部の人間に『地味の象徴』などという可笑しな肩書きを付けられてしまったらしいのだ。はっきり言って派手の象徴だろうが地味の象徴だろうが、私の気分や日常を害される訳では無いのだから正直どうでもいい。だが、『地味の象徴』…即ち、私が地味そのものであると言われているのだから、私が気になっているのは、その一部の人間の『地味』の基準である。
私は、父が小説家で、自宅には書斎が二箇所存在していたこともあって、幼い頃から本とは幾度も向き合ってきた。
勿論、フィクションやノンフィクション、ファンタジーに推理小説等、人それぞれで好みは変わってくる。何より、根本的に文字と向き合うこと自体が嫌、という者もいる。
だが私は、本という本はどんなジャンルでも読み漁りたい、という人間なのである。登場人物の言葉に励まされたり、自らがその登場人物に成り代わった気分になれたり、何より『自分が知らない世界』を文字として感じられる事が、私にとってはとんでもない快感だった。
…話が反れてしまった。
要するに何が言いたいのかというと、私は読書が好きである。