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予言の紅星  外伝  作者: 杵築しゅん
シリーズ5ロームズの反乱の外伝 
9/15

ロームズ領主決定会議(1)

久し振りの外伝です。

この話は、シリーズ5ロームズの反乱の外伝です。

73話以上読み進んでからお読みください。そうとなネタバレになるので、ご注意くださいませ。

ここに来て、レガート国には領地が9つあり、王都ラミルを入れると、上級学校は9校あったではないか!と気付きました。何故今まで8校と思い込んでいたのか・・・すみません。


 1098年6月5日、ロームズに建設中の医学大学の学長として、ハキル・クレマンスが旅立った翌日、レガート国王バルファーは、レガート国全領主8人に手紙を送った。

 その内容は以下の通りである。


*** 領主会議と新領主選定について ***


 すでに決定している6月20日の領主会議において、カルート国内に在る飛び地ロームズの、領主を決定する。

 新領主に推薦したい者がいれば、20日の会議に連れて来ること。


《 新領主となる者の条件について 》


◎ 伯爵以上の爵位を持つ者であること

◎ 現在建設中のレガート国立医学大学の運営も出来る者であること

◎ ハキ神国からの脅威に備え、住民を守れる者であること

◎ 中級学校を建設出来る者であること

◎ カルート国語が完璧に話せる者であること

◎ 年齢の制限はないが、防衛重視の観点から、軍関連の仕事をしている者、又は経験のある者とする


 新領主にはロームズ辺境伯位を授け、レガート国9番目の領主とする。辺境伯は、領主の侯爵と同等位とする。



 手紙を受け取った8人の領主の反応は次のようであった。


【キシ領 キシ公爵 32歳】

 いやいや、今ロームズは存亡の危機だったはず・・・統治官を廃して領主を置いても、ハキ神国とギラ新教の脅威は変わらないだろうに・・・

 あんな危険で大変な所に、うちの貴族を送り出したくないな。

 侯爵は跡取りが居ないし、伯爵家は……フィリップは無理、シュノーも無理、ソウタの兄も家を継いだばかりだ……ヨムは子爵だし……誰も居ないな。


【マサキ領 マサキ公爵 44歳】

 新領主・・・あのハキ神国に2度も攻め込まれたロームズ。何か起こっても誰も助けてくれない。

 確か人口8,000人くらいだったな……税収も見込めず、学校を建設したら赤字だ。

 うちの貴族では無理だろう。一応伯爵家以上の者に声だけは掛けるか。


【ホン領 ネイヤー公爵 49歳】

 うーん……税収は低いがカルート国、ダルーン王国にも近い。ハキ神国ともビジネス出来れば莫大な利益になるだろう。人口8,000人なら学校は小さくていい。医学大学も金持ちの子息から寄付金を取り、授業料も少し高めならやっていけるだろう。

 防衛費が全額レガート国持ちなら、数人は立候補するかも知れない。


【マキ領 マキ公爵 39歳】

 医学大学?いつの間に?聞いてないぞ……そんな重大なことを王は独断で決めたというのか?

 うちは軍関係者は少ないなあ……年齢制限が無いのであれば、60歳の侯爵が居る。まあ本人が望めば連れて行くか。伯爵も希望者が居れば全員連れて行こう。


【ミノス領 ヘーデル侯爵 42歳】

 ロームズに行っているウルファー侯爵はどうしたんだ?統治官として赴任していたはずだが……何かあったのだろうか?

 軍関係者は多いが、領主が務まるのはウルファー侯爵くらいだ。


【カイ領 ラシード侯爵 43歳】

 はあ……領主会議だけでも気が重いのに、誰か出さなきゃいけないのかな?面倒臭いサイシス伯爵はロームズに居るから、他の伯爵かぁ……鉱山の仕事を任せている者はダメだし、うちの領地には暇な貴族は居ないな。


【カワノ領 ラーレン侯爵 50歳】

 うちは貴族の数が少ないし、今は領内の立て直しの最中だ。とても他所に出せる余裕はない。変な欲を出して、再びカワノ領の信用を失うことはできない。2度と内乱とかクーデターには関わりたくない。


【ヤマノ領 ヤマノ侯爵 25歳】

 ははは、うちには伯爵は1人しか居ない。イツキ君ならロームズだって治められるだろう。しかし、まだ上級学校の学生だ。ヤマノ領には関係のない話だな。

 久し振りに父上(ホン領の領主)に会える。ホンは誰か連れて行くのだろうか……



そんなこんなの領主達は、3ヶ月に1度開かれる領主会議に出席するため、王都ラミルを目指し領地を出発した。




 今回の領主会議の議題は、ギラ新教についての注意と、ハキ神国オリ王子によるロームズ乗っ取りについて、それに伴い新領主を選定することだった。




 6月19日、1日早く国王から呼び出しを受けたカイの領主ラシードは、謁見の間ではなく王の執務室に通され、いつもとは違う様子に緊張していた。

(ラシード侯爵は、イツキの上級学校の先輩であり風紀部隊長インカの父親である)


 執務室には秘書官のエントンとキシ公爵アルダスも居て、難しい顔をして2人掛の椅子に向かい合って座っていた。ラシード侯爵は執務机についていた王に礼をとり、続けて秘書官とキシ公爵にも礼をとった。

 ラシード侯爵は、キシ公爵の隣に座り益々緊張していく。キシ公爵が居るということは【王の目】に関わることの可能性が高いからだ。


「ラシード侯爵、ロームズがカイ領のサイシスとヒブロに乗っ取られました。どうやら2人はギラ新教徒のようです」

「ええっ!ロームズ乗っ取り!」


ラシード侯爵は秘書官の話を聞いて、驚きのあまり立ち上がってしまう。


『た、大変なことになった。サイシスが、あのサイシスがロームズを乗っ取った?しかもギラ新教徒だと!』


 なんという不祥事、これは只では済まされないだろうと思うと、全身からよく分からない汗が噴き出してくる。ゴクリと唾を呑み込み落ち着かなければと椅子に座る。

 その時ドアをノックする音が聞こえ、もう1人領主が入室してきた。


「王様、火急の御呼び出しとは、何か起こったのでしょうか?」


今日も普通に大臣室で、法務大臣の仕事をしていたマサキ領のマサキ公爵は、レガート城の1階から4階まで急いで上がってきた。王の執務室に秘書官の他に、キシ公爵とカイ領の領主が居たので、あれ?っと首を捻った。どういう組み合わせなのだろうかと。

(マサキ公爵は、イツキの上級学校の先輩であり執行部の副部長である、ヨシノリ先輩の父親である) 


 カイ領のラシード侯爵はマサキ公爵に正式な礼をとり挨拶をする。

 法務大臣までやって来たと言うことは……厳罰な処分が下されるということか……ラシード侯爵の顔色は益々悪くなる。


「ロームズがギラ新教徒に乗っ取られた。4日にレガート軍の中隊を向かわせたが、今月中にはハキ神国軍と戦争になるだろう」


バルファー王は厳しい顔をして、ロームズの現状を伝える。


「ええっ!ハキ神国軍と戦争ですか?何故、何故ロームズは乗っ取られたのですか?」


秘書官の隣に座ったばかりのマサキ公爵は、驚いて立ち上がった。


「乗っ取ったのは、カイ領の伯爵サイシス、準男爵ヒブロ、そしてマサキ領のロイス男爵だ。3人はロームズの住民を奴隷のように働かせ、レガート国であるロームズに、あろうことかハキ神国の第1王子オリの別邸を建設している。この3人はギラ新教徒であることが判明した」


「「・・・」」


秘書官の話に、マサキ公爵もラシード侯爵も言葉を失う。そんなことが現実にあり得るのだろうか……?いやそこじゃない、自領の貴族がとんでもない大罪を犯したのだ。これは大変なことになったと、2人の領主は青い顔から血の気が失せ白くなっていく。


「実はロームズ統治官から、住民に反乱の疑いありと報せが届いたのは4月末だった。直ぐに【王の目】の2人を確認に行かせたが、その時既に統治官や警備隊の隊長、町長達は幽閉されていた。住民の反乱は住民を殺す為の口実だったのだ。統治官に代わり統治していたのが先程の3人だ。その確認が届く少し前、我々はブルーノア教会からロームズの危機を知らされていた。そこでギニ司令官は、秘書官補佐のフィリップと技術開発部部長のシュノー、国境軍副隊長を含む25人の先発隊を、5月18日に向かわせた」


キシ公爵はこれまでの経緯を要点だけ説明していく。

 2人の領主は、秘書官補佐のフィリップとシュノー部長が向かったと知ると、益々緊張していく。秘書官補佐が動いただけでも緊急性を理解できたが、技術開発部の部長までが動くということは、武器に関係しているはずなのだ。


「先発隊はレガート軍が4月に開発した、投石機キアフ1号を設置するため国境軍を中心のメンバーにした。そして先日ブルーノア教会経由で届いた知らせにより、ロームズの詳しい状況が発覚し、犯人とその背景が分かったのだ。今日この時間にも、ロームズでは戦争が起こっているかもしれない」


キシ公爵は話を続け、お前のとこの貴族は、何てことをしてくれたんだ!とは言わないまでも、ハーッと大きく息を吐き、どうすんだ?的な視線を2人の領主に向けた。

 2人の領主は顔を見合わせ、どうしたらいいんだー!と目で会話する。


「ああ、今日2人に来て貰ったのは、別に責任をとって領主を辞めろと迫るためではない。マサキとカイにギラ新教徒が居るという現実を、今後どうするかを話し合うためだ。当然反逆者の3人は爵位剥奪、家族や一族も捕らえ厳しく調べねばならない。明日の領主会議後、カイ領にはキシ公爵が【王の目】を率いて向かうことになった。マサキ領には、【治安部隊】を率いてソウタ指揮官が向かう。お2人には全面協力と領地内のギラ新教徒壊滅作戦の指揮を執っていただく」


レガート王はそう言って執務机に両肘をついて手を組むと、ヤマノ領のギラ新教徒との戦いの真実を、2人の領主に向かって語り始めた。そこに【治安部隊指揮官補佐】として、上級学校に潜入しているイツキの……いやキアフの名前が登場した。





 6月20日午前9時、レガート城の3階に在る会議室で、領主会議が行われた。

 出席者は国王、秘書官、ギニ司令官と領主8人の計11人だった。

 冒頭ギニ司令官は、ロームズの現状とハキ神国との戦争について話した。当然何も知らなかった6人の領主は驚き、マサキ公爵とラシード侯爵の方を向き、責めるような視線を向けたが、声を大にして責任を問う領主は居なかった。

 4月30日に行われた、上級学校の校長会議の報告を受けていた領主達は、ギラ新教は貴族なら誰でも洗脳するようになったと聞かされていた。それがどんなに怖いことなのか、そして自分が狙われて洗脳される可能性もあるのだと、今は思えるようになってた。


「またギラ新教徒ですか。うちは前領主をギラ新教徒に毒殺され、リバード王子までも毒殺しようと企んだ、とんでもない極悪人が領内に居ました。全てはギラ新教について何も知らなかった、私の無知が招いた失態でしたが、王様の温情によりこうして領主の座に居座り続けています。ギラ新教の恐怖を身を以て体験した私は、ギラ新教徒はまだ国中に居ると思っています」


出席者の中で1番若い領主であるヤマノ侯爵は、は~っと息を吐きながら自虐的に自領の話をし、ギラ新教徒の恐ろしさを伝え、マサキ公爵とラシード侯爵を責めるより、自分の領地は大丈夫ですか?との意味を込めて語った。


「それで、ロームズは大丈夫なのですか?」(マキ領主)

「たった150の軍勢で、守りきれるのでしょうか?」(ホン領主)


「ロームズが負ければレガート国は、8,000の民も守れない国だと笑われ、私はハキ神国の王子にまんまとロームズに屋敷まで建てられた、無能な王だと笑い者になるだろうな。私はどんなに笑われても構わないが、我が民の血は、1滴たりとも流させたくはない!今は、フィリップ秘書官と我が国の武器を信じるだけだ!」


バルファー王は、怒りを込め語気を強める。そして、私が部下を信じているのに、お前達は信じられないとでも?という感じで、領主達に1人ずつ視線を向けていく。  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

続きは11日迄に投稿したいと思っています。

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