統哉、初めての異世界の宿屋!
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-とある街道の端-
「おい! お前何で嬉しそうなんだよ!」
「え? あ、いや、そんなことは......」
あかねは顔を赤くしてうつむいてしまった。しかしここで気付かない統哉では······ あった。全く気にしない統哉であった。鈍感系勇者の主人公とは...... くっ、羨ましい。
上記の通りあかねは、元の世界にいた頃から統哉のことが好きだった。 まぁ、そんな統哉が自分の上司的な立場になって、また一緒に居られると思ったら嬉しくてしょうがなかった。 ドンマイ三波! 全く意識されて無いね!!
「俺が勇者、か······ よし! じゃあ町に行くか!」
「町って、ここからはとんでもなく遠いよ?」
「は? 俺達を召喚した国があるだろ?」
キョトン、統哉はまさにそんな顔をした。
「お前、本当なんも知らんのな、その国はもう無いぜ?」
「そうそう、それで私達の記憶が戻ったんだよね」
「記憶、なんのことだ?」
さらにキョトンとする統哉、もう顔が点だけみたいになっているけど、一応話を聞いてはいるようだ。
「あー、この話は、私達が統哉君を追い出すのを止められなかったことにも繋がってくるんだけど、統哉君が出ていく時に、私達の統哉君に関係する記憶を封印? みたいにされてたの」
「で、でも、ね、国、が、なくなって、私、達の、物、を、探してた、ら、思い、出し、た、の、全部」
「という訳」
「ふーん、じゃあ召喚した目的も、黒幕が誰かも、解らないってことか?」
「う、まぁ、それは面目たたないです」
「と言うか黒幕が居るってわかるのか?」
あかねにマインドアタックする統哉にもっともな質問をする三波
「いや、だけど居るって仮定して注意して動いた方がいいかと思ってね」
「それもそうか」
「で、あの町は無い訳だけど、どうするの統哉君?」
精一杯可愛らしさを出したあかねが統哉に聞く。 効果は無いようだ!!!
「うーん、三波、ここから一番近い町までどのくらいだ?」
「ん? 宿がある村だったら、俺が走って二時間くらいのところにあるぞ、名前は忘れたけど」
「お前が走って二時間か、なら俺が走って一時間だな、あかね、風音は俺に捕まれ、三波は自分で来い」
「統哉酷い!!! 俺だって楽したい!!」
だだっ子のような三波に、統哉とあかねは冷たい目線を向け、
「「二人乗りだ (よ)」」
「うわー!!!!!!」
三波は走った、その村へ向かって······
統哉は、あかねをお姫さまだっこ、風音をおんぶして走った。三波より速く。
ドンマイ三波! 非リア充な上にパワー、スピードでも負けたね!! 一つでも勝てる事があるといいね!
一時間二十分後
三波の場合......顔を青くして息を切らせていた、大丈夫? なんかいろいろヤバいよ? 顔とか。
統哉の場合......軽く息を調えるにとどまった、統哉、圧勝。
あかねの場合......頬を赤く染めて自分の世界にダイブ!! よかったね! 好きな人にお姫さまだっこして貰えて!
風音の場合......背中で揺られて乗り物酔い。おろろろろろ。
村の門番は、モンスターが入らないように見張っているだけのようで、統哉達と挨拶を交わし、通した。
宿屋の場所は、入ってすぐだった為、迷うことはなかった。
宿屋の名前は«妖精の酒場亭»カウンターに居たのは、ザ·宿屋のおばちゃん 、といった風貌のおばちゃんだった。
「一泊したいんですけど」
「あいよ、何人部屋で泊まるんだい?」
「二人部屋二つ空いてますか?」
「ああ、空いてるよ、料金は朝食付で銀貨二枚、無しなら銀貨一枚と銅貨二枚だよ」
「じゃあ朝食付でお願いします」
と三波が銀貨二枚を渡した。
「まいどあり、これ、部屋の鍵ね、この奥だよ」
「分かりました、ありがとうございます」
三波は鍵を受けとると、統哉達と部屋に向かった。部屋割りは、男女で分けた。部屋に入ると、三波が統哉に話かけた。
「なぁ、統哉、お前どうしてそんなに強くなってるんだ?」
「ん? ああレベルのことか? 俺のユニークスキルのせいだな」
「そのスキルって?」
「悪い、今日は疲れたからもう寝る、その話はまた今度な」
「あ、おい! 本当に寝るこたぁ無いだろ」
その時、三波が小さく舌打ちしたのを聞いた者はいなかった......