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第二十四話 決闘〜決戦〜

 気が付いたら一月ほど空いてしまって居ました。更新再開します。


「認めない。認めて堪るか!! こんな形での敗北など俺は認めないぞ!!」

「だがルールとしてはミスト族側の勝利と言う決定変わらない。思う所はあるだろうが受け入れてもらう他ないな」

「ふざけるな!! 何だアレは最後無様に不意打を喰らったあげく最後は助けられていたでは無いか!!内容としてはおれ達の方が勝っていた!!」


当然の如くあの決闘の結果にヘラス族は納得がいかないようであった。だがそれも仕方が無い事だろう。一族の将来に大きく関わるであろうこの決闘で判定負けなど。しかも内容としてはヘラス族の方が僅かであるが優位であったのだから。

 ルールに穴があった事は認める。と言うのも今回が初めての試みだったのだからルールに穴があるのは当然だ。だがそれを含めてもこのような結果になる事は予想していなかった。時間切れと同時に助けが必要になるとは思って居なかったのだ。

 それに『助けが必要だと判断された時』と言うのも何とも曖昧で今回俺は救助の役をやってくれた騎士団の人間に一任していたのも荒れる原因と言えるだろう。もしも似たような機会があるとすればその辺のルール改正も必要だろう。

 だが、それは次回からだ。今回に限っては俺は事前に決めていたルールの通りミスト族側の勝利という判定は揺るがすつもりは無い。ルールに不備があったからといって、後から変更を認めては公平な立場とは言えないだろう。納得がいかなくとも決着は決着、その結論を揺るがすつもりは無い。


「……少し、いいだろうか」


 ふと、席に座ったまま無言で目を瞑っていたクラリスが呟いた。


「どうした?」

「遺憾だが、今回の決闘、内容としてはわたし達が劣勢であった事は否定ができない。だが、だからと言ってこのような勝利を甘んじて受ければそれこそ一族の名に恥じるものとなるだろう」

「そうか、だが俺としては今回の決闘はミスト族の勝利というのを変えるつもりはない。理由はどうあれ事前に決めたルールである以上、それを遵守しなくては今後も似たような状況になったときに揉める事が目に見えているからな」

「ああ、それについては承知している。あの戦いはわたし達の勝ちだ。納得はいかないがそれは受け入れている。是非ともへステア王国の一員として受け入れさせて貰いたい」


 その言葉にフィリップが何か言い募ろうとしたのを目線で制する。フィリップは頭に血が上って気付いていないようだが、クラリスの言葉にはまだ続きがあるようだ。


「だが、その上で一対一で雌雄を決する場所を用意して欲しい。わたし達は運が良かったから勝ったのではない。その事を証明しなくてはならないのだ」


 表情自体は冷静だがその言葉には熱いくらいの熱が込められていた。因縁ある相手に実力で負けていたが運で勝ったなど、認められないのは敗者だけでは無かったようだ。




 この提案にはフィリップも同意し、数日空けてから再び決闘の舞台を用意する事となった。正直な所俺はこの戦いにあまり乗り気では無かった。既にミスト族の同盟加入は決定されている。この戦いに勝てばヘラス族も同様となるのだが、そうなったら犬猿の仲と言ってもいい両部族がへステア王国国内に集まる事になる。それは出来れば避けて欲しい展開である。

 だがクラリスがそれを求めフィリップが同意した以上は、この展開は避けようのない事となってしまったのだ。


「……ルールを確認する。勝敗は二人に身につけて貰った二つのマジックアイテム、そのどちらかが壊れた時点で敗北とする。この二つのマジックアイテムは使用者の傷の具合を判断する効力と致死となる攻撃を受けた際に身代わりとなってくれる効力がある。どちらも役目を終えたら自壊する仕組みになってるから一定以上の傷を受けたり致死の攻撃を受けたりすれば負けとなるルールだな。ルールに依存は……無いようだな。それなら初めて貰おうか」


 決闘の場は二人の希望に沿い森をイメージして作りあげた空間となっている。数は少ないが猛獣の類も放しされていて彼らを上手く避け、それでいて敵に上記の条件を満たしたものが勝利となる。また、時間制限はない。食料は現地での自給自足を原則とするサバイバル戦である。


「降参する場合は声をあげてくれればいい。それと腕に付けて貰った方のマジックアイテムは体調を著しく損なった場合でも壊れる仕組みになってうらから注意してくれ」

「ああ」

「分かった」


 俺の言葉に反応こそするものの、視線は両者共に相手を見据えている。……下手に声を掛けるには無粋だな。

 フィリップは一度悩むような仕草をしてからクラリスに言葉を掛ける。


「……感謝はしないぞ。あの戦いはおれ達の勝利だった。この勝いにってどちらを遇するべきかそれを知らしさせてもらう」

「感謝などそもそも望んで居ない。単純に誇りの問題だ、運が良かったから勝てた。などと揶揄われるのは我慢ならないからな」


 お互いそう言い放ちそれぞれ用意された扉の方へ向かって行った。





「死ね!!」

「そっちがな!!」


 今回の戦い両者の取った戦術は正反対のものだった。長期戦を見据え寝床や食糧、飲み水などの確保に向かったクラリスと最低限の飲み水のみを確保しその後は戦いに向け、動き始めるフィリップ。

 最初に二人がぶつかったのは動き始めてから三時間余りの時間が過ぎた頃だった。まだ食料の確保の為行動しているクラリスをフィリップが見つけ出し、それにクラリスの方も気付いた事で戦いが始まった。

 戦闘を優位に運んでいたのはフィリップの方だった。お互い手に持った荒々しく武器を振り回しぶつけあっていたのだが、男女差か単純な膂力でいうならフィリップの方が上のようで少しずつ傷の量に差が出て来たのだ。

 このまま戦いが決してしまうかと思いきや、お互い全力で打ち合い距離が出来たと同時にクラリスが逃走を開始、チャンスを逃すまいと後を追ったフィリップだがクラリスが前もって仕掛けておいた罠によって足止めをされ惜しくも逃げられてしまう。


 一方逃げ切った方のクラリスは正面切っての戦いが分が悪いと察したのか、これまで以上に罠の数を増やし傷の手当てをし食料の備蓄を蓄え始めた。完全に長期戦の構えのようだ。

 フィリップの方は逆に正面切っての戦いなら分がいいと考えたようで後を追おうとしたのだが、ここで運悪く放たれていた猛獣と遭遇、上手く戦闘は回避したが、追撃は諦めざるを得なよう状況にもっていかれた。


 夕方になるとフィリップの方も一日での勝利は無理と察したのか食料の確保に開始した。手慣れた動作で周囲の植物を見分け食べれる物を集めていった。

 備蓄は無いが十分な食事を取ることができ、武器を抱えたまま睡眠を取ろうといたフィリップだが、それを妨害するようにクラリスが奇襲を掛ける。フィリップの居る場所に検討を付け暗闇の中で弓を適当に放ち始めたのだ。このために先に食料の確保などを行い夕方に仮眠をとっていたのだからここはクラリスの作戦勝ちだろう。

 正確な場所は把握されて居ないとはいえ、敵が自分を探している状況で安眠を取る事などできないのか今度はフィリップが逃走を選択、前とは逆の立場に追いやられることとなる。


 フィリップは十分な睡眠はとれていないまま二日目となり、戦いはさらに苛烈化していった。クラリスの方が長期戦を見据えている事を察したらしいフィリップがさらに攻勢を強めたのだ。

 彼が取った行動は昨日出会った猛獣を誘導し、クラリスの罠が密集している地で暴れさせることだ。そして苦労して作り上げた罠を破壊されてはかなわないとクラリスが猛獣を追い払おうと出てきたところを見計らって強襲、クラリスに怪我を負わせることに成功する。疲労はフィリップの方が大きいが手傷はクラリスの方が大きい。ここにきて戦いは互角の趨勢を迎えたようだった。


「くそっ!!」

「動きが鈍って来たみたいだな」


 二度目の激戦、先手を取ったのはフィリップだが武器を交えての戦いになると優勢なのはクラリスの方だった。単純な実力ならフィリップの方が僅かだが上なのだろう。だが、地の利はその場を拠点としていたクラリスにあったのだ。

 大半の罠は破壊されてしまったものの未だ幾つかの罠は健在、それらを上手く生かして優位に立ち回っていたのだ。紐を切るような動作をする。例えそればブラフだとしてもフィリップは周囲を警戒せざるを得ない。怪我の度合いが大きいのはクラリスだが疲労はフィリップが上、素の器量はフィリップが僅かに上だがそれは地の利によって逆転した。

 この戦いは最終的にフィリップが逃げ出す事で決着となった。クラリスはそれに追撃を掛けるような真似はしない。地の利によって優位に戦えていたが下手に追いかけるとそれを失い掛けないと判断したのだろう。

 それにフィリップは既にかなり疲労が溜まっているようだった。最初から長期戦を想定した用意をしていたクラリスからすればこの展開は望むところなのだろう。これまでも食料、拠点、奇襲による疲労の蓄積と戦術的に立ち回っていただけあってかなり冷静な立ち回りをする。正面切っての戦闘力だけが強さでは無いという見本のような立ち回りである。

 この日の夜もクラリスによる散発的な奇襲が行われながら時間は過ぎて行った。


 三日目、遂に疲労が限界を迎えつつあるフィリップと疲れている様子はみせるが未だ健在のクラリス、勝負の行方は見えたかのようにみえた。

 だが、ここで疲労が限界に近いフィリップは無駄な行動を辞めた。体力の回復の為か木を背にして目を瞑り少しでも距離を詰められたら距離とる。といった戦法を取り始めたのだ。

 一方クラリスの方は決着を付ける為か、かなり積極的に行動をしているようすである。足跡などから位置を探り追いかけている。

 無言での追いかけっこが始まる。移動しては身を隠し体力の回復に努めるフィリップとそれを追いかけるクラリス、最初とは攻守が入れ替わった真逆の展開だ。凡そ半日もの間それを繰り返し、遂に決戦の時は訪れた。


「遂に追い詰めたぞ」

「……………」


 疲労の為か碌に返事も返さずに武器を構えるフィリップ。疲労の色は濃いが最後の力を振り絞るかのように目線の力は強い。

 一方クラリスの方も手負いの獣を相手するかのような油断ない目つきでフィリップの方を睨んでいる。


 睨み合いは数秒、遠くから獣の呻き声が聞こえると同時に両者踏み込む。


「お、おおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

「あああああああああああぁぁぁぁぁ!!」


 荒々しい仕草で武器を振りかぶる。ガン、ガン、ガン、耳障りな音が耳を劈く。数度の激突の後、フィリップの武器が弾かれる。が、次の瞬間には武器を落とさせたことによって生じた一瞬の隙を突きフィリップはクラリスの武器を持った方の腕を掴み物凄い力で縛り上げていく。


「くっ!!」


 これには溜まらずクラリスも武器を放してしまう。空いている方の腕で必死に抵抗していたが、疲れているとはいえ未だに膂力ではフィリップが上のようだった。

 だがクラリスもたたではやられず、身体を浮かせて捻る様にしてフィリップの顔面目掛けて蹴りを放つ。これにはフィリップも思わず顔を抑えてしまい拘束が解ける。

 いい一撃が入った様で顔をに手を当てたフィリップにクラリスは追撃を掛けた。視界が戻っていない相手に対して容赦なく男の急所を狙った蹴撃、当人でなくとも思わず肝が冷える攻撃だ。だがこれは咄嗟にフィリップが飛びのいたお蔭で何とか当たらずに済む。

 視界が戻ったフィリップはクラリスの方へ掴みかかった。体格差を活かして拘束してしまおうと考えたのだろう。ここ三日の戦いでお互いの武器は既に消耗しきっている。同じ無手なら体格差があるクラリスでは一旦捕まったら逃げ出す事は至難の業だろう。

 接近を許さずにヒット&アウェイ戦法をとるクラリスとその攻撃を堪え必死に追いすがるフィリップ。お世辞にも優雅とは言えない戦いだ。泥臭く荒々しい。だが目が離せない。目を離すことが許されないような熱が戦いから感じられるのだ。


 疲労は上の筈のフィリップは執念か遂にクラリスを捕まえる。攻撃を避けるを辞め堪えた末に勝ち取った好機だ。

 捕まえた状態で身体を持ち上げ、腕を組むようにして首を絞める。クラリスは苦しむような声を上げ、ミスト族陣営の方から悲鳴のような声があがる。だがクラリスも必死の形相で苦しみながらも頭を思いっきり後ろへ逸らすことによってフィリップの顔に後頭部で頭突きを喰らわす。


「ぐっ……!!」


 二度目の顔への攻撃、しかも今度は鼻に直撃したようでねじ曲がる。血と泥が見ていて見ているこっちが痛くなりそうだ。

 だがそれでもフィリップの腕の拘束を外さなかった。腫れあがった顔をそのままに鬼気迫る表情で腕の力を強めていくのだった。

 やがて、クラリスの抵抗は辞むと同時にパリンと何かが砕けるような音が鳴る。致死を肩代わりしてくれるマジックアイテムが壊れたのだ。

 勝者を告げる声が響き渡る。それと同時に力なく横たわっているクラリスに救助が送られた。


 三日間の激戦を制したのはヘラス族、戦術的に追い詰められながらも執念で見事勝利を得たのであった。

 これによりヘラス族もへステア王国への帰属の権利を得る。これでへステア王国は犬猿の仲ともいえるような二つの部族を受け入れる事となったのだった。両部族がへステア王国に与える影響は未知数、これからどうなっていくのだろうか。





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