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第二十三話 決闘〜討伐編〜


「あの……勉強を見てくれるのは嬉しいんですけど忙しいんじゃんじゃないんですか?」

「ん、ああ。今は相手の反応待ちだから割と時間は空いているんだ。まあ数日経ったら忙しくなるだろうがな」

「あ、そうなんですか」

「でもダンジョンの参加は先を行かれるのかー、できれば最初から参加したかったけどな」

「そもそも一般公開はまだまだ先だから諦めろ。それより今は真面目に勉強した方が後々役に立つだろ」

「それは分かってるけど……これ(魔法道具)があれば会話には困らないから緊急性をそこまで不便に感じないんだよ……」

「とは言え細かいニュアンスの違いが理解出来なかったりするのはやっぱり困るだろ。それに俺からの援助もいつまで続くか分からないし、やれることはやっておいた方がいいぞ?」

「それは勉強できるやつの言い分だよ……」


 少し時間が空いたので沙紀たちの様子を見に行ったら彼らはこの世界の標準語の勉強をしているようだったので時間が空いていた俺は少し教えてあげる事にしたのだ。

 俺が渡した魔法道具マジックアイテムのお蔭で会話には困らないが、それでも何らかのアクシデントなどがあった際を考えると自力で読み書きできた方がいいに決まっている。

 ネイティブレベルに話せるようになるのは難しいかもしれないが、この世界の言語は構成はかなり単純で覚えやすい形になっている為、ある程度勉強すればそれなりに読める様にはなるはずだ。現に康生と栞の二人は既に読めるようになっているようだし、後は彼らの努力次第だろう。

 最悪俺がスキルの付与で無理矢理覚えさせる事も可能だが、実験で知識系のスキルを無理に覚えさせようとすると知恵熱でぶっ倒れる。運が悪ければ最悪の死んでしまう可能性もあるのでよっぽどの事が無ければ使うつもりは無い。


 それと気になっている人も居るかも知れないから言っておくと、大樹が言っていたダンジョンで先をいかれるとはミスト族とヘラス族の事である。

 彼らとの交渉は最終的に決闘で蹴りをつけて貰うことになった。このまま話を合いを続けても埒が明かないと考えた俺の苦肉の提案だったのだ、が下手な対抗心からへステア王国へ譲歩し過ぎた彼らにとってはこの提案は渡り船だったのかもしれない。

 そしてその決闘の方法がダンジョンでのモンスターの討伐戦、多くのモンスターにスコアを設定しそのスコアの合計値で勝敗を競って貰うことにした。

 そもそも彼らの部族でも似たような風習があるらしく賛同を得るのは容易かった。だから今はこうして詳しいルールの交渉を行いながらも束の間の休息を楽しんでいるのだ。





 そして一月後、都市ゼスカの中央広場と呼ばれる地でフィリップとクラリスの二人が覇気を飛ばしながら向かい合っていた。

 両者共に褐色の肌に要所のみを守る革鎧、業物と分かる得物を身に着けている。代表者でのある彼ら二人も参加するようである。


「……こうも大勢の前でお前を下すことが出来るとは。ゼロ様もいい舞台を用意してくれた」

「寝言は寝て言え。これまで小細工ばかりで正面切っての戦いを避けて来たくせに」

「俺はお前らみたいな考え無しとは違うからな。簡単に手の内を見せたりはしないだけだ」


 お互い挑発を重ねるがこれでも前に比べたらマシな方なのだ。特にフィリップの方は陰険な性格をしている為、かなり際どい挑発を何度も繰り返していた。最初は威圧すれば大人しくしてくれていたのだが、俺が余程の事が無い限り直接手を出すことが無いと分かってからはそれこそやりたい放題だ。だが俺に対してはそれなりに畏まった態度で話すので、色々思う所はありながらも特に何も言わないままここまで来てしまったのだ。

 内心ため息を吐きながらも審判を買って出てくれる部下の一人に目配せをすると頷かれる。


「……ルールを確認します。互いに代表者五名によるモンスターの討伐戦、各モンスターごとに設定されたスコアが存在し一定時間の間に討伐したポイント数で勝敗を決します。今回の制限時間は8時間、武器種の制限は無しとなっております。また、危険だと判断した場合は騎士団の介入があり、その際はポイントにペナルティーを負ってもらう事になります。それではコイントスで左右にある扉の決定権を決めて下さい」

「左だ」

「……わたしは右か」

「ありがとうございます。ああ、特に左右の違いで有利不利はありませんので、ご健闘お祈りいたします」






「さて、どうなるかな」

「さあ、誰かさんの思いのままじゃないの?」

「失礼だな。今回は本気で何もしてないからな。精々どちらも」


 広場から少し離れた場所に位置取り、空中に投影された二つの映像に視線を向ける。映像では今まさにミスト族が影狼シャドーウルフを仕留めた場面のようだ。

 ミスト族陣営からは喜びの声とヘラス陣営からは呻く様な声を聞きながらノワールにそう返すと「そうなの?」と本気で疑問に思っているような声で聞き返された。お前、俺の事を何だと思ってるんだよ……


「ねえ、疲れた。辞めていい?」

「後三時間位だ。頑張れ」

「無理やだ部屋に帰りたい」

「あそこはお前の部屋じゃ無くて研究室なんだがな。まあ仕事なんだからしっかりやれ」


 空中に投影されている映像はディアーネの魔法によるものだ。カメラのような物を仲介させてダンジョンに外に投影させているのだ。

 これは不正防止の面と勝敗が分かり易くするためであるし、また一般の市民たちの反応を見る為でもある。ダンジョン計画は既に実行間際の所まで来ているが、市民がどう反応するか未だ理解しきれていない。今回のこれでどうにもならないほど強い拒否感情があるようなら対策を考えないといけないと思ったのだがその必要は無さそうだ。むしろこの映像自体が娯楽として扱われているようにすら感じられる。確か普通モンスターと戦う姿など早々見る事は出来ないが、それをこうして安全に見れるなら娯楽として機能するのも考えられる事だったかもしれないな。

 これは使えるかもしれない。そう内心考えているとそれを見透かしたらしいノワールが声を掛けて来る。


「ねえ何か面白い事でも思いついたの?」

「ああ、今やってるこれを討伐者ハンターを主役にして定期的に開催するのもありかもしれないと思ってな」

「そうね。周りの様子を見るのかなりの反響のようだし。ある程度人数が集まるようなら誰が優勝するかを予想した賭け事を行うのも面白いかもね」

「ああ、優勝賞金を高めに設定すれば討伐者ハンターへ支援する後援者パトロンも生まれてくるかもしれない」

「そうで無くとも元々モンスターの素材を定期的に回収出来る事で供給される需要に伴って需要も拡大するでしょうし、国の経済的にはかなりの収益が見込めるでしょうしね」

「現状だと武具の類はあまり需要が無いから鍛冶職人の勧誘がとかはし辛かったがそれも改善されてくだろうしな」


 俺が思いついた内容を告げるとノワールも同調しトントン拍子で話の規模が大きくなっていく。ただでさえ足りていない人材をさらに過労死させかねないような提案だが、十分に行う価値はあるだろう。

 簡単に思いつくだけで面白そうな案が二つも三つも思い浮かぶあがっていく。多分だがこれを告げたらアルテリオ辺りが嬉しそうに悲鳴を上げてくれるだろう。


「はぁ、帰りたい」


 非常に疲れた様な様子でディアーネがため息を吐いていたが、それは無言で黙殺した。




 俺が次の事業を楽しく悩んでいる内に肝心の決闘も終わりが近づいて来た。現在のポイントは145対128でヘラス族優勢のようである。だがこの程度の差なら中型一体か小型の群れを倒せば十分に追いつけるような差でしかない。

 残り時間は10分程上手くモンスターと出会えればいいがその辺は運も絡むのでどうなるのだろうか。ヘラス族は既に傷も多く満身創痍、先程まで戦っていたモンスターはそれなりに手強い奴だったのでそれなりに苦戦していたようだ。

 見ていて思ったが彼らはシンプル且つ効果的な戦い方をする。まずは索敵、モンスターの足跡や糞などから大雑把な敵の生態や大きさなどを予測し追跡する。そして出会ったら全員で奇襲を行い一撃で仕留めにいく。その際仕留めきれなかったら戦闘に突入するのだが、これまでの手際を見ているとまともに戦闘になったのは数える程だ。しかもその内の数回は群れとの遭遇で初撃で数体仕留めていたので実質的には一回か二回だけ。モンスターの戦いは何時でも命懸けなので確かにこれは理にかなっている方法だろう。

 俺はモンスターの痕跡から後を追うなどできはしないし、どちらが勝つにとしてもこうした技術は討伐者ハンターを目指す人の広めて貰えるとありがたい。勝った方に技術指南をお願いするのも面白いかもしれないな。


『きゃぁぁぁ~~』

『何ッ!?』


 両者共に新たなモンスターに出会う事が出来ず、このまま決着が着くと思われたその時、ミスト族の方がモンスターに接触した。

 いや、正確に言うなら奇襲を受けたと言うべきだろう。時間が迫り、少しでも成果を求めるあまり上空からの警戒を怠ってしまっていたようだ。

 接敵したのは下級翼竜レッサーワイバーン、今回の競技の中ではそれなりに上位に入るモンスターだ。翼竜ワイバーンの更に劣化種で身体が一回り小さくしたものと思ってくれればいい。だがそれでも人を超える体長と飛行能力を有している事から魔法を使えない人間からしたらそれなりに厄介なモンスターである。

 下級翼竜レッサーワイバーンはクラリス達をただの獲物とみているのか、上空から襲い掛かると同時に彼らのうちの一人を足で掴み空へ飛んで行った。


 だがそれを許すミスト族の人間では無い。リーダーであるクラリスが声を荒げて弓を用意させる。誤射もあり得たかもしれない状況だが彼らは迷わず弓を撃ち。その内の一つが翼に突き刺さった。

 下級翼竜レッサーワイバーンは力を失い失墜し、当然それに捕まっていたミスト族の一人も空に放り出される。と、同時に鳴り響く終了の合図、危険だと判断したのか待機していた騎士団の人間が救助に向かう寸前の事だ。

 下級翼竜レッサーワイバーンの討伐ポイントは25ポイント、時間的にはギリギリ逆転だがここで先程介入した騎士団の人間事がある。一応ルールとしては時間が切れた後の事なのでポイントには関係ないのだが、部族の存亡を掛けた戦いでルールによる敗北など彼らは認めてくれるだろうか。


 ここに来て競技としての未熟さが仇となった。試行を重ねていない分曖昧になってしまったルールが勝敗にケチを付けてしまった形だ。






 一月ほど更新ペースが落ちるかもしれません。

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