第六話 魔法について学ぼう。
「魔法ね……言葉で説明するのは難しいのだけど……まず魔力を感じる所からね」
やる事を終えた俺はノワールに魔法について教えて貰っていた。理由としてはDPを稼ぐ手段を得る為だ。現状このダンジョンの定期的な収入は30ptしかない。その上切り詰めた食事で一日4pt、残りを最低限の居住環境造りに当てると考えるとノワールの仲間の救出には逆立ちしても間に合わないと言う結論が出てしまう。その状況をどうにかする為にも即急な収入源の確保は必要している。
そしてその為の方法の一つとして考えられたのが俺が戦闘手段を得る事だ。ノワール一人だととてもじゃ無いが周囲のモンスターの相手は荷が重い。だが魔法を扱える人間がもう一人居ればその能力次第では周囲のモンスターの討伐も選択肢に入るのでは無いかとの判断だ。
まあ、だが実際の所ノワールはあまり期待して無さそうだ。今できる事が少ないからやれることはやっておこうと考えてるみたいなのだ。これは俺には無理だと考えている訳では無く、単純に戦闘が可能なレベルの魔法を使えるようになるのは数年単位の時間が掛かるからのようだ。
魔力の存在を認識できるようになるのに一月、それをある程度扱える様になるのに半年、魔法として発現するまでに更に半年、それを戦闘中の極限状態で扱える様になるのになるまで更に数年の月日が必要になるのだという。しかも今言った時間は想定通りに進んだと仮定しての目安で実際にはそこに辿り着くまでに何度も躓くのが普通だという。ノワールの懸念は正しい考えだ。だが、他に出来る事が少ないという事も事実、それならば出来る事は片っ端からやっていくのは悪く無い選択だろう。
そして魔法の練習が始まった。まず最初にするのは魔力を認識する事だ。魔法には魔力を使う以上まずはその存在を知覚するとこから話しは始まる。だがこれは思いのほか簡単に終わった。どうもダンジョンマスターの能力と魔力は密接に関わっているものらしく、ノワールが指先から出した魔力を視認する。と言った内容の訓練だったのだが、最初から出来ていたのだ。
「見えるな」
「そうみたいね。なら次行きましょう」
次は魔力を扱える様になる事だがこれに苦戦した。と言うにも魔力を感じる所まではいいのだが、それを思うように動かすのは中々に難しい。手足が急に何本も生えてそれを同時に思うように動かせと言われてるのと似たようなものだ。
一応動かせはする。だが動きは遅くとてもで無いが正確とは言えない。ゆっくりと慎重に動かし、どうに扱う事が出来ているといったレベルだ。ノワールが言うにはとてもじゃ無いが魔法を扱えるレベルでは無いと言われたし俺もそれは自覚しているので練習あるのみだな。
「はぁ、もう限界だな……」
「結局、一日中練習してたわね。それに成果も凄まじい。これなら案外間に合うかも知れないわね……」
「そうなのか? まあ最初よりは出来る様になったが……」
「魔力の知覚は例外としても、たった一日で一月近い訓練に匹敵する程の成果を出してるわね。多分十年に一度くらいの天才と言ってもいいと思うわよ?」
「十年に一度って……何とも微妙な才能だな。普通はそれって百年に一度とかじゃ無いのか?」
「百年に一度なら誰にも習わずに感覚だけで成功させるわよ。ゼロは人と比べてかなり習得が早いけど、世界中を探せばそれなりに見つかるくらいだもの」
「そうか」
だが、才能が無いよりはよっぽどいい。魔力の籠った手を握り閉め、自らの成長を噛みしめたのだった。