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第十三話 魔法適性と道中にて


 遠征の目的であるダンジョン攻略を終えた俺達は帰路を歩み始めた。まだ今後における被害を減らす為にダンジョンから溢れ出したゴブリンを減らすという仕事は残っているものの、これから先は散発的な戦闘のみで本格的な戦闘はまず無いと思われるので幾分か気が抜く事も可能だ。

 なので帰り道の間、俺は沙紀たちの疑問や質問に答える事で今後における不安を取る除くために彼らの馬車に同乗するのであった。


「そう言えば二人の魔法適性って何なんだ?」

「私は補助系かな治癒系当にもそれなりに適性はあるみたいだけど、そっちまでは手が回ってないんだよね……」

「俺は強化系、ただそれ以外は適性が低いみたいで実際に使うのは厳しいって言われたな」


 話の間の雑談として聞いた話題に二人は何の疑問も持たず即座に返答を返して来た。魔法適性とはその名の通り個人の魔法に関する適性を示すものである。別に適性が低くても使えないという訳では無いのだが、その向き不向きによって必要な発動までの時間も消費する魔力の効率も大きく変わったりする。

 極稀に異常な適性を持つ者もいたりして、他者の十分に一程度の消費で十倍以上の効力を発揮する。などと言った例も存在する事もあるので、魔法における適性と言うのは時には魔力の過多や戦力差をひっくり返す重要な要素にも成り得るのだ。

 だからこそ魔法使いに取って得意魔法を知られる事は対策を取られる事にも繋がりかねないので極力秘匿する。適正とはそのまま得意な魔法を告げているのと一緒だ。万が一戦闘になった場合、その情報の有無によって勝敗が決まってしまう事も十分にあり得るからだ。

 雑談からもこうした簡単な講義に繋げてこの世界の常識を教え込みながら、ディアーネに視線を向ける。


「ディアーネの魔法適性は何だ?」


 ……ぷい。顔を背けられた。これが魔法使いとしては正しい反応である。まあ言わせるんだが。


「命令だ」

「……死霊術と錬金術、それと元素魔法も、他も一応適性が低いのは無い」

「……多才だな。寿命の方は死霊術でどうにかしたのか?」

「そう、魂を固定して肉体をそれに付随するものだと認識させた」

「なるほどな。生気は感じられるから死者の王(リッチ)になるのとはまた別の手法か」


 種族としては人族にあたるディアーネが幼い容姿のまま長い月日を生きている理由は死霊術によるものようだ。死霊術とは霊魂、所謂魂に関連する魔法の事である。

 簡単に言えばゾンビやスケルトンを生み出したり操ったりする魔法の事である。ちなみに俺は死霊術のて適性は皆無に近く。膨大な魔力を使えば一応発動はできるといった所だったりする。まあそこまで効率が悪いと練習する気すら起きないが。

 ダンジョンマスターの能力で大量のモンスターを召喚、それが倒されたそばから動く死体(ゾンビ)化させての飽和攻撃などといった戦術も考えたことはあったのだが、適性が低すぎるのと絵面を考えて断念したという事もあったりする。ただでさえダンジョンマスターと言うだけで排除対象になりかねないのだ。付け入れれる隙は少ない方がいい。

 まあ、それは兎も角としてディアーネの魔法について少し興味が沸いたので


「一度に操れる数はどれくらいだ?」

「三千くらい。ただあの杖をくれらば三割増しくらいにはなる」

「それはまた今度な。研究はテーマは?」

「完璧な人体の創造。参考になるかと思って文献に合った召喚術を試してみたけど外れだったし」

「おいこら」

「まぁまぁ……」


 無意識に煽るような言動をするディアーネとそれにキレる大樹、宥め役に沙紀と忙しい面子である。



「あーゼロさんは適性ってどんな感じですか? やっぱり元素魔法?」

「あ、私も知りたいです」

「そうだな……敢えて言うなら召喚系だな。それと付与魔法、元素魔法、強化魔法も特に苦手だったりはしないな」


 話を変えるように康生が俺にそう質問し栞もそれに追従する。ディアーネたちの諍いに巻き込まれたくは無いらしい。

 逃げ出すための出汁として質問された俺だが、話の流れとして来ることは何となく予想ができたので特に隠し立てする事無く素直に話してしまう。

 先程適性に関しては極力隠すように、と言ったがそれはあくまで利用だ。有名になると望まなくともそういった情報は世に出てしまうし、今告げた内容に関してもその類の例に漏れていない。


 俺のDPを消費してのモンスターの召喚、あれは分類するならば召喚魔法の一種として扱われる。俺が召喚したいと言う認識がトリガーになり、その認識とほぼ変わらない速度でモンスターが召喚される。その過程で魔力を消費し魔法陣まで浮き上がっているのだから分類としては完全に魔法である。種族としてほぼ本能に近いレベルで刷り込まれているようで殆ど反射に近い速度で発動できるようだ。

 比較対象として召喚術士と呼ばれるような術士と比べると、そんな彼らが操れるモンスターは十体前後で習熟した者でも百を超える程度、千を超えるような数を操れれば伝説に残る程だ。それなのに俺、と言うかダンジョンマスターは万を超える数を簡単に操る事が出来る。改めて考えるとダンジョンマスターって種族は色々と性能がおかしい。

 ついでに付与魔法が得意なのはスキルの付与がそれに分類されるからのようである。ただし普通の付与魔法は一定期間の間特定の属性を付与すると言ったものに対して、ダンジョンマスターの能力はほぼ永続的である。未だ完全には使いこなせている能力とは言えないものだが、それでも色々ととち狂った性能であるといえる。


「はぁ、僕たちも魔法が使えればな……」

「うん……やっぱり少しは憧れるよね」


 魔力が乏しい組からしたら魔法は使いたいものらしい。俺も今は手段として割り切っているが最初に使える様になった時はかなり嬉しかった記憶があるからその気持ちは分からなくはない。


「一応は魔力が無くても魔法を使う手段も研究しては要るんだが、中々上手くはいっていないしな」

「そうなんですか?」

「ああ、魔力も言ってしまえばエネルギーだからな。代わりとなる何かを消費して魔法を使えないかって研究は国が出来た当初から試してはいるんだ」

「へぇ? あ、これって聞いてもいい事なんですか?」

「一応機密になってるからあまり触れ回って欲しい事では無いな。まあ言ってしまえば魔力の代わりにカロリーを消費して魔法を使えないかと考えたんだ。結果は失敗だったがな」


 カロリーと言う単語に反応する沙紀と栞、何と言うか女の子ってこういった単語に過敏に反応するよな。ノワールも気にしないように見えて陰で色々やっているし、正直俺には理解できない世界だ。


「どんな感じに失敗したんです?」

「エネルギーの転用までは上手く行ったんだが、その後の魔法として発現するに問題が起きてな。発動に必要なカロリーが高すぎたんだ。望んだ効力の魔法を発現するために志願してくれた人間は栄養失調で倒れる結果となった。それから研究も続けている様だが成果が出たとは聞かないがな」


 科学技術発展と同じく大抵の魔法は先人の試行錯誤の末に発達してきた。一代を賭して大した成果を残せない人も居れば、大きな発展を齎した人も居る。中には閉塞的でディアーネの様に人知れず研究を重ねる人物もいるだろう。

 重要なのは成果を出すには日々の積み重ねが重要であると言う事だ。そのため希望者を集め魔法の研究も行ってはいるのだが、未だ目立った成果を出す事は出来ていない。まあ一夕一朝で成果が出るものでは無いと分かって居るのでしばらくは様子をみていくしかないだろう。


「とまあ質問があるなら今の内にしてくれ。へステア王国まで戻ったら会う機会は殆ど無くなるからな。今の内に疑問が解消できるならそのほうがいい」


 毎日が殺人的な仕事量を熟している自覚はあるのでしばらくしたら彼らと会う事は出来なくなるだろう。最後まで面倒が見れないのは心苦しく思うが何事も物事には優先順位がある。これは仕方が無い事だろう。


「それならへステア王国の政治体制とかを聞いてもいいですか?」

「……康生の質問は色々とアレだよな。普通は着いた後の生活とかだと思うんだが……まあいい。一応仕組みとしては立憲君主制を採用してる。法により王の統治の正当性を示すって奴だな。行政側の立場の筈の俺が立法側にも深く関わっていたりと、政治機構としては未成熟極まりない有様だがな」

「絶対王政にしなかったんですか? その方が色々と都合が良かったりしませんか?」

「わざわざ古い時代の統治方法を採用する理由はない……とか言えたら良かったんだが、俺の目的を考えるとこの形に収まったんだ。それに俺に権力を集中させればさせるほど引退が難しくなるという厳しい現実が存在してな……有用過ぎる能力を持っているとそんな問題が出るって初めて知ったよ。それで将来的に後腐れ無く引退するために前もって明文化しておくことにしたんだ」


 何故か全員から「うわぁ……」ってちょっと同情交じりの視線を貰った。移動中も肌身離さず仕事の道具を持っているような俺に向ける彼らの視線はワーカーホリックを見るそれだ。

 これで明文化したといっても穏便に引退できるか半々だと言ったらどうなるのだろうか? 取りあえず正式な後継者の存在をつくり、俺の能力無しでも国が回る仕組みを作るのは俺が引退する最低条件だったりする。ダンジョンマスターは長寿種であるが故に年齢による引退が存在しない。下手したら国が亡ぶまでが任期となる可能性も存在して居たりするのだ。


「他にはあるか?」

「あーなら俺からも聞いていいか?」

「構わない」


 いつの間にか言い争いを辞めていた大樹が少し気まずそうに聞いて来たので構わず許可を出す。大樹は『それなら』と前置きを置いてから質問してきた。


「色々気に掛けて貰ってるのに悪いとは思うんすけど、正直直ぐに就職どうこうって言われても実感が湧き辛いんすよ。でもこのままだと迷惑を掛けるって事も分かるんで、部活で言う仮入部みたいな事って出来ませんか?」

「……それは場合によっては帰還を諦めるって事か?」

「そう言う事になります。正直な所まだ帰りたいとは思ってるんですけど、それが厳しいってのは何となく分かってるんですよ。でも帰りたいって希望は残したままでいたいんです。別に無理なら無理で構いませんが状況が変わって地球に帰れそうなら帰る。そういった事って可能ですか?」


 大樹の言葉は如何にも敬語に慣れていない学生といったものだが……要は自ら積極的に帰還を目指すわけでは無いが、世情が変わって帰還が現実的になれば帰えりたいと言う事か。


「それだと恐らく帰る事は出来たいと思うんだがそれでいいのか?」

「構いません。だたの意思表明みたいなものですから。あ、でもホントに帰れそうならお願いしますよ」


 そう口角を上げて笑いながら告げる大樹に強いな、と内心称賛する。

 最も早く帰還の可能性を捨て話を持ち掛けて来たのは康生だがあれはどちらかと言えば諦観と保身からくる提案であった。栞もそれは同じ、可能性が低いから無理だと諦めた故の事である。

 それに比べて大樹は帰る事が出来る可能性が低い事を知りつつも、それを諦めてはいない。それでいて

俺の立ち位置も理解して配慮してくれているのだ。これを強いと言わずして何と言う。俺の中での大樹の評価がかなり上がったがそれは極力表には出さずにただ受け入れる事で答えを示した。


「そうなると後決めていないのは沙紀だけだな。丁度いいし、いっそ今ここで決めてしまうか?」

「え? 私だけ?」

「ああ、他の二人に関しては既に個別に相談を受けて移民を決定している。大樹の方も今決まったから後は沙紀だけだな」

「え?……ホントなの?」


 驚いたような表情で康生と栞に問いかけると二人とも無言で頷く。少しだけ気まずそうな栞に比べて何も悪い事はしてませんとも言いたげな康生はかなりいい《・・》性格をしている。真っ先に話を持ち掛け出来るだけ良い仕事を紹介して下さいと言って来たにも関わらず何事も無かったかのように振る舞っているのだから。

 わざわざ彼らの関係を悪化させようとは思わないが黙っているが、彼に関しては少し痛い目を見た方がいいかもしれないな。

 分かり易く落ち込んだ動作をする沙紀を前に慰めるようにして栞が近いて言い訳染みた説明を始める。終わるまで待ってあげても良かったが、それだと話が進まないので少し水を差すことにするか。


「まあ他人の面倒をみる前にまずは自分の事をどうにかするべきだと言う事だな」

「うぅ……ああもう!……分かった。私もへステア王国に移住する」

「いや、急かした俺が言うのも何だがもう少しゆっくり考えた方が……」

「でも帰りたいって思っても帰れないんでしょ? それならどっちにしても変わらないよ」


 清々しさすら感じさせられるその言葉に思わずため息を尽きそうになるが、その後に小さく呟かれた『それに戻ったって誰も居ないしね……』と言う言葉にそれを引っ込めざるを得なかった。

 改めて観察すると、その表情には何一つ未練は見受けられない。簡単に決めているようでいてその実日本への未練は薄さから来る決断なのかもしれない。それならそれで構わないだろう。


「そうか、それなら後はどんな仕事をしたいかだな。まあこれに関しては移民を決めて貰った今なら直ぐでも無くて構わない。しばらくは生活に困らない程度のまとまったお金と住居を手配するからゆっくり決めてくれ」


 全員辛い決断をしてくれたのだ。少しくらいは俺のポケットマネーから出して上げても構わないだろう。幸いにして使う機会が無いからかなりの額が貯まっている。休みが少ない事がこんな時に役に立つとはな。いや、役に立つとは少し違うか。

 どんな仕事がいいのか、それは自分に合っているのか、ワイワイと騒ぎながら時折俺に質問してくる様を眺めて内心苦笑する。

 彼らの将来に幸あれ、などと言う無責任な発言をすることは出来ない。なにせ彼らの帰還を諦めさせたのは他ならない俺だからだ。情報の秘匿、文明の格差がある世界との繋がりなどへステア王国に取って百害あって一利もないと思っての事で、その判断はそう間違ったものでは無いと思って居る。だがそれによって彼らに将来の道を狭めてしまった事は目を背けてはいけない事実である。

 彼らがこっちに残って良かった。そう思えるような国にするべく努力をしていかないといけないな。そう珍しくも感傷に浸りながらも馬車に揺られるのであった。



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