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第八話 魔法使いとダンジョンマスター

 昨日投稿するのを忘れてしまっていました。


 手紙を送ってから数日経たずに返信が来た。少し難しい文面なので簡単に要約すると『研究の邪魔をするな、素直に帰って寝てろ』だ。読んで早々理解した。この手紙を書いた人物も確実に癖が強い。

 若干イラつきながらも再度手紙を出した。今度はへステア王国とこのダンジョンの関係、被害状況を示した手紙でこのダンジョンを討伐する事は既に決定されている事で出来れば直ぐに立ち退くならある程度の配慮も考えようといった内容だ。


 そして再び返信が来た。『帰れ』


 戦争が始まった。この地を去る意思を持たない魔法使いを敵対者として認定したのだ。



「まずは徹底的に情報収集を行う。騎士団は砦に待機し俺の護衛を、現状最も危険なのは奇襲によって俺の命が危ぶまれる場合だ。肝心な情報収集はゴーレム部隊を差し向け、映像や音声を録画、録音しノートンらに纏めさせる。今回の戦いあくまで目的はダンジョンマスターの捕縛、もしくは討伐だ。魔法使いに関しても警戒は必要だが、優先順位を間違えるな!!」

「「「はっ!!」」」


 戦いの定石は敵を知る事から、それはダンジョン攻略でも変わらない。敵勢力、地形、戦術、それらを分析し、解析し、対策を立てる。戦いの基本にして本質である。

 ダンジョンを根城にしている魔法使い、まず確かめなければいけない事は、ダンジョンマスターがどうしているという事だ。ここのダンジョンマスターがゴブリン、もしくはその上位種である事はほぼ間違いない。そいつと魔法使いのどのような関係性なのか、これによって攻略難度は大きく変わる。


 最も厄介なのは全面的な協力体制、これに関しては言うまでもない。利害の一致かそれ以外か、何にしろ協力し全力で抗われたなら非常に厄介な相手である。

 魔法使いは基本的に拠点の防衛と相性がいい。種類によっては準備に時間が掛かる魔法も待ち構える形であれば確実に活かすことが出来るからだ。

 それが召喚能力に特化され、無限にも近い魔力リソースを持ったダンジョンマスターと組んだとなれば

その攻略は非常に困難なものとなるだろう。

 次点での関係は条件付きの共闘、これもある種の利害の一致だが、全面的な協力に比べたらまだマシだ。この場合指揮系統がバラバラとなるので、片方に対して負担を強いる作戦を行えい仲間割れを狙う事も出来る。厄介なのには変わりは無いが、最も楽で策略を掛けやすい状況でもある。

 最後がどちらかが従わされている場合だ、可能性としては魔法使いが従わせている場合だろう。この場合指揮系統が統一されているのは厄介だが、総合的な戦力では最も低い。意思に反して従わされているのなら、その能力を十全に生かす事は出来ないからだ。



 手を変え、策を練り、俺はダンジョン内に戦力を投入していった。召喚するモンスターは基本的にゴーレムに限定している。ダンジョンマスターは倒したモンスターを自らも召喚出来るようになる。敵に戦術の幅を広げさせない為にも召喚するモンスター種を限定するのは戦術の一つである。

 俺がその一種にゴーレムを選んだのはその対応力の高さからである。ゴーレムは非生物型、魔法鉱物種とも称されるモンスターで、他のモンスターに比べて無理が効きやすいのだ。

 呼吸の必要は無く温度変化にも強く、命令にも従順、モンスターの一種ではあるが厳密に言うと魔法生物なので扱いが簡単なのもある。

 欠点として挙げられるのは繁殖力の欠如やややコストが重い事だが、それを含めても軍事行動に最も適したモンスターとして俺がゴーレムを選んだのだ。


 繁殖力を考えると効率的な戦力とは言えないのかもしれないが、食事なども必要無く一度召喚すれば最低限の維持費で一定の使い道があるという面では非常に有用なモンスターである。

 その使い勝手の良さから、各地の街の防衛戦力として常に待機状態で保持されたり、農村などに貸し出して土地の開発や収穫にも利用する事になっている程だ。


 そんなへステア王国の主戦力であるゴーレム、今回はそれに様々なスキルを付与して、敵の対応を知るための練習相手にさせて貰っている。

 今回の様な機会は貴重だ。人死にを出すことなく、本気で抵抗してくる敵と戦う事が出来るのだから、しかも基本的には理性が無いであろうダンジョンマスターの能力を用いる敵がだ。

 戦場の空気になれるのが目的だったのだが、常に優勢に立ち回る事が出来た事で少しだけ欲が生まれたのだ。単純に成果を挙げると言った意味ではもっと違うやり方があるだろう。だが、戦術面での思考を鍛える敵として今回の相手はもってこいだとも考えたのだ。


 どのような対処をしてくるのか? 何を考えているのか? 戦況からそれらを読み取り対策を講じる、言葉にすれば簡単だが現実に行うとすれば非常に困難だ。今後激化していくであろう他国との争いや不確定要素が多いダンジョンマスターとの戦い、未来を見据えると俺もまだまだ成長の余地が必要だろう。


 砦の一室で椅子に身体を預けながら、報告書に目を通していく。


「魔法に対する高い耐性を付けたゴーレムには物理的な攻撃手段で破壊、騎馬に載せ機動力を高めたものも狭い道に誘導され機動力を奪った上での撃破か。敵ながら冷静な対処だな」


 戦術面での攻防はやや有利、これは取れる手段の多さからくるものだろう。しかも所々手作業で行ったと思われる形跡もあった、これを理由に慢心するわけにはいかない。

 情報面で言うのなら、一つ、重要な情報を手に入れた。どうも相手はダンジョンマスターの能力を十全に使えてるとは言い難い様だ。精々可能なのはモンスターの召喚と、簡単なスキルの付与程度だろう。しかも召喚出来るモンスターはゴブリン種に偏っている。ダンジョンマスターと魔法使いは従属関係の可能性が高そうなのだ。

 ブラフの可能性もあるが、それにしては敗戦を重ね過ぎている。敵もそこまで余裕がある訳ではないだろう。

 と、思考に耽っていると扉のノックした音が鳴り響く。扉の外からの入室を求める声に許可を出すと、部下の一人が入室してくる。


「失礼します。解析班からなのですが、どうも敵戦力の中に一般人かもしれない人物がいるようです」

「本当か?」

「はい、これを聞いてみて下さい」


 解析班……調査員であった筈のノートンやその弟子に回していた音声記録が渡される。


 スイッチを押し、音声を再生する。届けてくれた部下は気を使ったのか俺の数歩後ろで静かに待機してくれる。


『ガ、ガガガ……ちょーザッー……大丈夫なーー?』

『問だーザッ……思う……』

『何そーーザッ……ントにーザッ……ーーザッー……』

『思いの他ーーザッ……上手く……』

『無理ーーザッ……連れてーー……』

『運がーーザッー……悪かったね』

『ザーザー……ザザッー』


 かなり聞き取りずらい。話の大部分は全く理解することが出来ない。が確かに連れて来られたという単語が聞こえた。これだけで一般人だと判断していいのかは疑問だが、それでも可能性がある以上見過ごせないか……


「……ゼロ様」

「ああ、それでどうやってこの音声を録音する事が出来たんだ?」

「ハッ!破壊され鹵獲されたゴーレムの録音機が機能を保っていたようです」

「そうか……分かった。一旦下がってくれ」

「ハッ!!」


 部下に下がって貰い一人になって考える。助け出すかどうかだが……当然助ける方向で話を進めていくしかないだろう。正規軍が拉致された一般人を見捨てたなると流石に外聞が悪過ぎる。足を引っ張る事が好きな人間とはいるもので、そう言った連中に隙を見せない為にも、ここは表向きだけでも助け出す為に動いていく方がいい。

 そうなると考えなければいけないのは、拉致された人の現状だが……聞こえた声に力が残っていた。そう悪い扱いをされている訳ではないように思える。声の感じから言って女性、それもかなり若い。ゴブリンの生態と合わせて最悪の状況を想像してしまったが、現状ではそこまで酷い状況では無いようだ。


 この話をみんなに伝え出来れば保護するように伝達する。そんな所か、今戦っている相手もそんな甘い相手ではない。現にこれまでの戦いでは戦術的には互角の進行だ。制圧した地こそ増えているものの、戦果をDP換算するとやや負けている。敵戦力はモンスターこそ大した強さでは無いものの、魔法によってそれを上手く援護されているからだ。

 一般人が捕まっている事と、それを助け出そうとした過程こそが重要なのであって、結果はそこまで重要でも無い。出来れば助け出せた方がいいが、最悪見捨てる事も視野に入れておく必要もあるだろう。


 それに予想だが敵対している魔法使いは真の意味で生粋の魔法使いと呼べる人種だ。

 ただ魔法を使うだけの人では無く、魔法使い。俺が魔法を戦闘手段として使って居る為分かりずらいかもしれないが、生粋の魔法使いは戦闘者では無く研究者である。

 彼らが魔法を使うのは魔法を研究するためであり、戦うためでは無いのだ。強いか弱いかと言うのなら強いかもしれないが、戦闘に長けているかと言われればそうでは無い。

 高度な魔法を扱えその技量も高い。だが戦闘者では無い為、不測の事態には弱いと言った欠点も抱えている。これが生粋の魔法使いである。

 言わば魔法と言う名の兵器の開発者で、使い手では無いのだ。使える様にするのが目的で、使う事が目的では無い。魔法を戦闘の為の手段とし戦闘に組み込むことを前提に考え学ぶ人間とは根本からして違うのだ。


 彼らの厄介な所は非常に理性的であり無理をしない事だ。なにせ本質からして研究者である。思考し、対策を練り、対処する。これが彼らのやり方であり、ある意味俺と似通った考え方をする人種でもある。

 だからこそ負けそうな状況に陥った時は何の躊躇も無く逃げ出すし、人質を取る事も厭わないだろう。敵に出くわしたら、それと相性が良い魔法を用いて、もしくは開発して対処してくる。敵に回すとかなり厄介なタイプである。

 幸い戦術面に長じた思考を持っている訳では無さそうなので、此方が優位に事を進める事が出来ているが、戦術を変えしばらくすると、それに対応され、そこでまたこちらが戦術を変える。戦いは鼬ごっこのような様相を迎える事となっている。

 それでも格下であるゴブリンが数を揃え、魔法による援護を受けたからと言って格上であるゴーレムを倒すというのはDP換算で言えばマイナス収支である。地形の利、迎え撃てると言った利があるとは言え、それは好ましい展開では無い。

 徐々に地の利こそ奪って言っているが、敵のDPは増え続け追い詰めれば追い詰める程守りの密度が増え、強固なものとなるだろう。

 そうなった時、敵の取る手段だけが不安だ。人質を盾にするかもしれないし、逃げ出すかもしれない。何にせよ、出来る限り思考を読み、対処していかなければならない。





「最終エリアが見えて来ました!!」

「ようやくか……このまま戦力を送り続けて戦場を膠着状態に持っていく。その後は騎士団を投入。人質の救出を行って貰う。詳しい作戦内容は各自に渡しておくから目を通しておいてくれ」

「ハッ!!」


 じりじりと戦線を押し上げていった結果、ようやく終わりが見えて来た。敵は強かった。いや上手かったと言うべきか、後出しで対策され続け、結果的に多くの戦術を引きずり出されてしまったのだった。

 だが先に王手を掛けたのは此方であった。差が生まれたのは単純に兵力、軍事力の差だ。ゴブリンを強化し何とかゴーレムを倒せるとは言え同時に多数の場所で戦闘を行われたのなら当然援護は間に合わなくなる。

 確かにDPだけ見れば此方が敗北していた。だが戦いとはそれだけでは無いのだ。戦術的に有効な土地を占領していく事は、徐々にだが確実に戦況を優位に運びやすくなっていく。

 それにDPの消費量で負けていたとしてもまず俺とゴブリン側のダンジョンではそもそものDPの総量が違う。しかも此方は絶えずに回復し続けているのだ。そもそも正攻法で戦っている限り敵に勝機は存在しなかったのだ。

 ここまで追い詰められると一度に展開できる勢力もかなり制限される。そうなれば後は戦力の質の勝負だ。温存してしておいた騎士団を投入し一気に決着を付ける事になるだろう。


 作戦の最終段階として、最低限の護衛のみを残して全勢力を敵ダンジョンに投入した。百名近い騎士団とそれに従う大量のゴーレム、これまでに得た情報から綿密に対策をした戦力だ。


 そして決戦に向け勢力を投入してから四日後、三か月にも及ぶ戦いは遂に決着を迎えた。死傷者ゼロ、最終的な戦果はゴブリン1000体、ホブゴブリン200体、オーク40体、ゴブリン種のダンジョンマスターの捕縛、その他に無所属の魔法使いの捕縛と民間人四名の救出。

 初の部隊を率いての行軍にしてこれだけの戦果を挙げた事は俺の名声を更に高めるのだった。


 だが、完全に予想外な事が起きた。助け出した四人の民間人、彼らはなんと俺と同郷であるようなのだ。彼らにどう対処するのか、俺が休みを取る事が出来るのはまだまだ先らしい。




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