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第七話 ダンジョン攻略


 ガッ、ガーガー


『こちら第一小隊、第四、第五の拠点を確保を終えました。本日はこのまま拠点の防備を固めます』

『只今交戦中!! 敵勢力は小隊規模のゴブリンが二つ、武器を所持している事から他のそれなりに危険度が高いと思われます!!』

「了解、援護を送る必要あるか?」

『問題ありません!! 順調に数を減らしています!!』

「分かった。討伐後は一旦第一拠点まで戻ってくれ。ダンジョン内だと分かり辛いが既に日が沈む時間だ。長丁場になる事が予想されるのでしっかりと休息と取ってくれ」

『了解しました!!』


 ダンジョンの攻略は順調だ。無線型のマジックアイテムを用いて定期的に連絡を受けながらマッピングを進め、敵戦力を削ると同時に情報を集めていっている。

 現在確認されたモンスターはゴブリン、ホブゴブリン、オークの三種類で出会う敵の殆どはゴブリン、ホブゴブリンは時折見かける程度、オークに至っては殆ど姿を見せる事は無いそうだ。


 ゴブリンは基本的に四、五匹の集団で行動しており、拙いながらも連携を行い、偵察のような行為を行っている事が確認されている。どうやら普通の固体よりも知能が高いようである。

 ゴブリンは単体では非常に弱い。単体では何の武術も習っていない大人でも勝てるの強さでしかない。だが武器を持つとその危険度は一気に跳ね上がる。人が武器の有無によって強さが大きく変わるのとのと同じだ。人型のモンスターも武器を持っているかどうかは重要な判断基準となる。

 今の所武器を持ったゴブリンの数は少ない。武器は単純なモンスターの召喚に比べてコストが重いからだろう。

 だが時折非常に武器の扱いが上手いゴブリンと出会ったという報告がある。これはスキルの付与を行っている、もしくは何らかの訓練を施したと言う証拠だろう。これだけで格下の筈のゴブリンがオーク相手に勝利出来た理由が分かったような気がする。


 俺のダンジョン攻略の基本方針はゴーレムによる制圧だ。数人規模の騎士団の部隊にアンダーコアを貸し出し、ゴーレムを召喚させて戦わせる。

 そして制圧が完了した地に防衛拠点を設置していく事で、敵ダンジョン内での支配力を増やしていくのだ。

 俺の仕事は外部からの支援となる。無線型のマジックアイテムで敵ダンジョン内部に侵入している勢力に情報や作戦を伝えたり、ダンジョンのマッピングをしたり事が俺の仕事となる。補佐官としてノートンやその弟子たちにも手伝って貰い、ダンジョン内の資料を作成、解析していく。

 立体型の迷路の地図を作ると言うのは想像以上に難しい。そんな時アンダーコアの存在が非常に役に立った。アンダーコアとは俺の能力の一部を委託したような物だ。その存在は意識すれば簡単に把握できる。これにより順調にマッピングを進めていく事ができたのだ。


 そして現在の制圧率は全体の一割ほど、ただ全体の面積の一割なので地下に空間が広がっている事を考える実際には数パーセントと言った所だろう。

 ゴブリンのダンジョンはちょっとした街くらいの規模はある。それが洞窟内に迷路のように広がっているダンジョンを攻略するには相応に時間が掛かるのだ。

 だからこそ、ダンジョンを攻略する際には万全の準備を心掛けなければならない。単独で攻略しようと考えたならそれこそ年単位での時間が必要になるだろう。そうなれば食料は相応な量必要になるし武器の消耗も馬鹿にならない。サンドニア王国などはダンジョン攻略を名誉な物として扱い、多くの冒険者にその攻略を推奨しているが、普通は個人でそれだけの物資を用意し、攻略に当たる事など普通は出来はしない。現実にはほとんど不可能な事をあたかも可能であるかのように世論を動かして命を散らさせているも同然だ。

 そんな行動もある程度はダンジョンの勢力を減らすことが可能であるし、そうした命知らずの行動こそが英雄と呼ばれるような一騎当千の活躍をする人間を生み出す土壌を整えているのだとすれば一概に否定する事もできないが。


「A班が地下に続く階段を見つけた様だ。やはり地下に道が続いている様だな」

「そうですね……糞尿などがまき散らされているようですが病気の対策などは大丈夫なのですか?」

「一応薬の類は一通り渡してある。それにしてもこれ、参考になるのか?」


 ダンジョン計画の参考に……と言って参加を表明したノートンだが、俺から見た感じだとダンジョン計画で参考になりそうには思えなかった。ゴブリンのダンジョン、一言で言うのなら洞窟にゴブリンが住み着いただけのようにしか見えない。

 地面は糞尿がまき散らされて不衛生だし、匂いもキツイ。病気の類も繁殖しているようだし、内部に侵入させておいてあれだが、正直俺は入りたくはない。時折白濁した液体もまき散らされていると言うし、衛生環境としては最悪の一言だ。


「十分に参考になります……そうですね。例えば人型のモンスターはダンジョン計画に不適格だとか」

「それ言ったら今回の遠征の意味を殆ど失うだろ」

「いえ、こうして客観的にダンジョンを眺める事が出来るのは非常に有意義です。普通はこのように安全な地で推測する事などできませんから」

「結局自分の知識欲を満たしたいだけか」

「すいません。こればっかりは性分ですので」


 済まなそうな様子でそう告げるノートンにはため息しか出ない。


「……人型のモンスターが計画に向かない理由をしっかり纏めておけよ」

「はい、それは勿論。ああそう言えばアルテリオさんにどうにか言って貰えません? 私が出した計画に何度も反対してくるのですよ。彼の意見は自然に反してます! いくら経済的だからと言って、こちらで管理する前提の環境をつくるなどあり得ません!!」

「アルテリオからもお前をどうにかして欲しいって嘆願が来てるんだが……二人とも立場が違うから意見が衝突するのは分かるんだが、俺をそれに巻き込まないでくれ」


 ダンジョン計画の実行に当たって顔合わせをしたアルテリオとノートンの二人は意見が合わないのか事あるごとに衝突している。

 より経済的に、効率的に運用しようと意見を出すアルテリオと、より自然に沿った環境をつくるべきだと言うノートン、どちらの意見も視点が違うだけで正しく、一定の理解を示すことができる発言だからこそ難しい。

 経済活動としては見ればアルテリオの意見が正しいのだが、生命活動の観点から見ればノートンが正しい、ノートンはバランスが崩れる度に修正する形で手を加えるべきなのであって、手を加える事前提での環境は認めたくはないのだという。

 もう二人で話し合ってくれと無いと思うのだが、何故か二人とも俺に同意を求めて来るのだ。いやまあ気持ちは分からないでも無いが。俺が片方に賛成すればもう片方はそれに従わざるを得なくなるから……


「いえ、ですから私の意見の方が正しいとあの分からず屋に一言行って貰えればそれで済むのですよ。そんな歪な仕組みなど認め無いと」

「……俺はどちらの意見にも一理あると思うから何とも言えないんだが。それに人の手で管理されている時点で十分に自然とは言えないと思うんだが……」

「だからこそ、最低限の秩序は守るべきなのです!!」


 柄にもなく熱くなっているノートンに俺を巻き込むなと切に言いたい。

 普段も物腰こそ柔らかいが、知識欲には忠実でかなり頑固な面もあるから非常に面倒な人物なのである。嫌いでも苦手でも無く、ただただ面倒、グランベル翁も厄介な人材を寄越したものだ。能力面では有能な所が特に……





「魔法による罠を発見した?」

『はい。それと魔法生物に分類されるモンスターの存在も確認できました。どう対処するべきでしょうか』

「……一度軍議の場を設けたい。悪いが一旦砦まで戻って来て貰えるか?」

『了解しました!』


 さらに二月程の時が過ぎた。攻略は順調に進み既にダンジョンの制圧率も予測だが七割を超えただろう。数多くの拠点が設置され、そろそろ終わりが見え始めて来た頃である。


 予想外の報告が上がって来た。基本的に出会うのは変わらない。ゴブリン種を中心としたモンスター群である。変わったのはそこに異形化したゴブリンや魔法生物……生まれる過程で何らかの魔法を用いたモンスター、ゾンビやスケルトンがこれにあたる。が混ざり始めたというのだ。

 それと不衛生極まり無い環境から、人が生活できる環境へと様変わりしたのだ。これも地味だが重要な変化と言える。人が住めるような環境に変わりつつあるという事は人が住んでいる可能性があるともいえるからだ。

 端的に言ってしまえば魔法使いが住み着いた可能性が高い。それも高位の。そこまで思考を重ねてから即座に戦力を撤退させた。高位の魔法使いは数の優位を簡単に覆し得る。碌な対策もしないまま攻略を続けたら手痛いしっぺ返しを受ける可能性も十分にあり得る。


 ただの魔法使いで無く、高位だと分かったのはここに住まう魔法使いが何らかの実験を行っているように思えたからだ。異形化したゴブリンなど普通は滅多に生まれてきたりはしない、実験の失敗作だと考えるのが妥当だろう。そして実験を行うような魔法使いはそれだけの知識を持っていると言う事だ。教科書を読む側で無く書く側、学ぶ側で無く研究する側である事が分かるのだ。戦闘能力が高いかは不明だが、それでも油断していい様な相手では無い事は確かである。


 撤退させた騎士団の人間を労い、休息を取るよう言い含めながらも考える。この問題にどう対処していくべきか。

 まずダンジョンの攻略を諦めるという選択肢は存在しない。騎士団を動かして負けたと言う事実はそれだけで民衆に不安を与えてしまう。それに軍事力と言うのは抑止力と言った意味合いもあるので、不安が原因となり内乱が起きてしまう可能性もある。国に所属する一番の理由とはその庇護を求めるからだ。外敵から身を守ってくれない国など逃げ出されてしまっても文句など言えない。

 それに俺も一応は英雄の名で呼ばれているので、戦いもせずに逃げるという選択肢は取る事が出来ない。英雄のプライドなど欠片も存在しない俺だがその名は便利であるのは色々と利用させて貰っている手前その義務も果たさないといけないのだ。

 一度戦う事前提に考えて行こうか。いざ戦うとなれば重要なのは勝てるかどうかだ。これに関しては敵の技量次第としか言いようが無い。あり得ない程強いかもしれないし、それとも大した事は無いかもしれない。結論としては情報不足としか言いようが無い。

 逆に考えよう。そもそも戦う必要があるのかだ。俺達の目的はダンジョンの攻略、魔法使いの討伐では無い。素直にこの地を去ると言うのなら別に無理して追いかける必要など無い。だがこのダンジョンはゴブリンを外に排出し、へステア王国に害を成している。魔法使いにその意思が合ったのかは分からないが、関わっていたのなら野放しには出来ない。


「……手紙でも出してみるか」


 取りあえずは相手に意思の疎通を行う気があるかどうかだな。その出方によってこちらも動きを変えて行こう。


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