第四話 現状の把握
取りあえず十話までは毎日投稿する予定。
「聞きそびれていたがノワールは何が出来るんだ?」
「そうね……まずは魔法ならそれなりに自信があるわよ。高度な魔法は無理だけど簡単なのは一通り。後は交渉や書類作業もそれなりに得意ね」
「ノワールってホントに王女か? 少しイメージと違うんだが」
基礎的な魔法を一通り……DP換算で数千ptといった所か、それに交渉や書類作業、王女と言う肩書に対して得意分野がどうにも偏ってる。
「王女に対してどういうイメージを持っているかは知らないけど、これでもそれなりにお父様の仕事を手伝っていたのよ? それに魔法も王族となるとそれなりに魔力を多いからそれを使わないのは勿体無いわ」
「そんなものか、ならそれなりに戦えると考えてもいいのか?」
「近寄られなければね。ただ、武器の扱いはさっぱりだし、接近されたら何も出来ないから好んで取りたい手段では無いわね。誰か前衛を熟せる人間が居ればいいのだけど……」
「俺がやるにしても直ぐには無理だろうな。あのドラゴニスだったか? あれを相手に戦うのは正直厳しい」
「分かってるわよ。せめてゼロに魔法が使えたらね……」
「そっちは後回しだな。興味はあるんだが、それよりはまず現状の把握からだ」
魔法と言う単語に心を引かれつつもそれより先にまずはノワールに知る限りの情報を教えて貰う。まずは外の森、あそこは不明けの森と呼ばれている場所らしい。太陽の光を遮る程の木々に囲まれ、強力なモンスターが多い事から滅多に人が寄り付かないらしい。
あの恐竜擬きはドラゴニスと呼ばれるモンスターで強さとしては上級寄りの中級らしい、ただあの固体は子供だったらしく、大人はもう二回りは大きいのだとか……
しかも現在地は不明けの森の中でもそれなりに深い場所で簡単には森から出る事が出来ないという。ノワールも見つからない様に慎重に動いたけどここまでこれたのは奇跡だと言ってたくらいだ。
「それにしても何でそこまで深くまで進んだんだ?」
「浅ければ浅いほどモンスターも弱くなるからよ。逃げ切るには多少のリスクを負う必要があったのよ。まあそれでもドラゴニスに見つかったのは運が無かったけどね……」
「そうか……」
所々脱線しながらも話を進めるが、それでもやはり上手くDPを稼ぐ手段は見つからない。ノワールの存在により一日30ptは約束されているが、それでは俺とノワールの食費、それと生活必需品などを揃えていくだけで簡単に消えてしまう。
DPがあれば色んな事が出来るダンジョンマスターだがDPが無ければ何も出来ないのだ。DPを稼ぐ基本的な方法は、ダンジョン内に俺以外の人を住んで貰う(普通は監禁)、人類を殺す。モンスターを殺す。この三つだ。一つ目は達成しているが維持費にしかならない。二つ目は俺がやる気がない。また近くに人が住んでいない。残ったのは三つ目のみ、だがそれもノワール頼みでしかも確実とは言い難いものなので最終手段でしかない。
「……そう言えば一応モンスターの素材もDPに換算出来た筈だったな」
「そうなの?」
「ああ、でも効率がかなり悪いらしく殆ど気休め程度らしい」
「それでも無いよりマシよ。取りあえず取りに行きましょ」
ふと思い出した事を呟くと、少しでも足しになるならとドラゴニスの死体を回収する事になった。ちなみにオーガの死体は消えてしまった。ダンジョンで生み出されたモンスターの死体は外では死ぬと消えてしまうみたいだ。
ドラゴニスは見た目からして推定数トンはあるので、俺とノワールで運ぶのは無理なのでダンジョンコア片手に回収に行く。
「よし変換するぞ……」
「お願い……そろそろ私はお腹の限界……」
「俺も腹減ったし何か食べたいよ……」
座り込んで話しながらもダンジョンコアに触れ恐竜擬きをDPに変換する。
『10ptのDPを獲得しました』
「たった10ptか……確かに効率悪いな」
オーガ二体で消費100pt。それで得たポイントが10pt。90ptの損失か……まあノワールを助けるための必要経費って考えるしかないか。
「いやまあまだ希望はある。召喚出来るモンスターが追加されたかもしれない」
「ゼロって割と前向きね……」
ダンジョンコアに言って追加されたモンスターを確認する。
・ドラゴニス……100pt
竜種の分岐進化の一つ。より陸上での動きに特化された結果、後ろ脚が発達し翼と前足が退化した。繁殖能力は非常に低い。肉類が好物。
「100ptオーガの二倍か。オーガ二匹でちょうど相打ちだった事を考えると妥当なのか?」
「いえ、あの固体は子供だからそんな単純なものでは無いと思うわよ。大人の固体ならオーガ二匹ではとてもじゃ無いけど勝てないわ」
「……なら繁殖力か。それと食欲も旺盛そうだな。強い代わりにデメリットが多いのか?」
「かもしれないわね。それでも取りあえずは夕食にありつけそうね」
「そうだな」
どちらとは言わないがお腹からきゅ~と音が鳴ったのだった。