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ダンジョンメイキング~吸血鬼と作るダンジョン王国〜  作者: 数独好き
第一章 ダンジョンマスターと吸血鬼
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第三十五話 竜の住むダンジョン


 それ(・・)は侵入者の存在に気が付き顔を上げた。ゆっくりとした動作だ。威圧している訳では無く、敵意を発している訳でも無い。だがそれだけの動作で侵入者は圧倒され逃げ出しそうになる。しかしその身に課せられた使命がそれを許さない。

 薄暗い空間でその僅かな動きに呼応するように赤黒い鱗の一枚一枚が淡く発行する。己の発する熱量に幾度となく焦がされたそれはおおよそ生物とは思えないような硬さと耐熱性を持っている。生半可な刃物では傷一つ付かず、専用の工房を用意しなければ加工する事も難しい。

 薄く目が開かれる。爬虫類特有の感情の起伏が読めない無機質な瞳だ。侵入者たち歯牙にも掛けていないような、いや実際に歯牙にも掛けていないのだろう。敵意以前に興味すら抱かれていない。徹底的な無関心、人が虫を相手に感情を出したりしないようにこの絶対者にとって侵入者はその程度の存在でしか無いと言う事をありありと示している。


 だが虫が視界に入ったりしたら煩わしく感じたりもする事もあるだろう。これから行われる行動はまさにその程度のものでしかない。


 GAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa


 それ(・・)が少しだけ声帯を震わせた。それによって行動で衝撃波が生まれ侵入者たちの身体を竦ませる。単純な声量とは別に根源的な恐怖。絶対者との格の違いを心の髄まで訴え掛けて来る声だ。直接目にしていない俺ですら気圧されてしまうのだ。眼前に居た侵入者たちの末路など言葉にするまでも無いだろう。

 それでも敢えて言うのなら……その声だけで半数が生き途絶え、残りの半数が体液を垂れ流しながら逃げ出した。侵入者たちは逆らえない命令をその身に刻んでいるのだが、この存在が与える根源的な恐怖はそんなもの簡単に塗り替えてしまうらしい。

 逃げ出した者たちは一瞥されたのち無造作に薙ぎ払われた、ちょうど人が目の前にいる虫を払うような動作だ。それだけで侵入者たちは身体を四散されその短い生涯を終えた。



「………………………」

「………………………」


 偵察に向かわせたゴブリンの部隊、そのあまりにも呆気ない最後に映像を見終えた俺とノワールはしばらくは間言葉を発せずにいた。


「なあ……」

「言いたい事は分かるわ」


 二人して遠い目をする。流石にドラゴンは無いだろ……

 ドラゴン。この世界で生態系の頂点に位置し、天災として称される事もある文字通りの化け物だ。他のモンスターとは比べ物にならない、比べる事すらおこがましい。一部の種族では神と同一視される事すらあるような存在だ。

 生半可な攻撃など通さない鱗に鉄をも砕く牙、それでいた優れた飛行能力まで持つ存在、それがドラゴンだ。単独で倒そうものなら英雄として語り継ぐれられる事が確実であろうし、そうで無くとも決死の覚悟が必須とされる。


「放置する事は……無理だよなぁ」


 あのドラゴンが存在するダンジョンは俺達が住むダンジョンと接している。既にいつ戦いを仕掛けられてもおかしく無い様な状態なのだ。あのダンジョンが出来てから数日と経っていなく、保有しているDPは僅かだと予想できるが、それでもダンジョンマスターだと思わしき相手があの(・・)ドラゴンなのだ。今まで考えていた戦略など全てが無駄になったも同然だ。

 普通のダンジョンマスターなら表に引きづり出したら戦いは終わったも同然だ。だが敵ダンジョンマスターの正体がドラゴンだった場合は引きずり出してからが本番と言うほどには差がある。


「アレの前に立ったら人もあのゴブリンと同じように死ぬのか?」

「意識を失うけど、死ぬ人は滅多に居ない筈よ。人は他の生き物に比べて生物的な本能が衰えているみたいだから」

「なるほど……普通に戦ったら勝てると思うか?」

「勝ち目が無いとは言わないけど、それ相当の犠牲を覚悟しないといけないわよ?」

「そうだよな、だがだからといって簡単に逃げ出すと言うのも問題だろ。今までのみんなの努力が無駄になると言う事だし、ガンガニア王国の事もある」


 フェスカの配下の妖精族がガンガニア王国へ情報を伝えにいっている。情報を伝えると言う事はその根拠となる前提、信用が必要となる。身元不明では信じる以前の問題だろうと考えガンガニア王国への使者にはへステア王国の名を告げる事を許していたのだ。

 なのでそう遠くない時期にガンガニア王国とは何かしらの関係が生まれる。敵対か中立か、それとも同盟か、どうなるかは分からないが接触する事だけは確かだろう。

 そうなった時に簡単に調略できる戦力だと思われる訳にはいかない。圧倒的格下では対等な立場にはなれない。せいぜいが使い捨ての戦力、いいように使われるだけだ。

 せめて一筋縄ではいかない戦力であると証明しなければならない。そのためにある程度発展した土地の存在は必要不可欠だ。そのため街を捨てて逃げ出すと言った手は難しいのだ。

 だがそうするとドラゴンをどうにかして退けなければならない。今後の展望を考えると一度で討伐まで行くのが理想だ。


「どうしたものか……」

「そうね……」


 二人して疲れたようなため息をついた。


 嘆いていても仕方が無い。俺達は現状をどうにかするために動き出した。まず最初に行ったのは戦力の確認だ。ドラゴンを相手にするとなれば生半可な戦力では一蹴されてしまう。倒せるだけの戦力を用意する事が出来るのか、それともこれまでの全てを失ったとしても逃げ出すべきなのか。

 その結果ドラゴン相手に戦力になりそうなのはクリストンを始めとする元騎士団の人間が40人と妖精族100人弱、後は戦費としてDP10万ptだ。ここでの10万ptとは食事などの諸経費を除いたドラゴンと戦う為に使えるDPだ。

 戦争を仕掛けられるまでにもう少し貯まるかも知れないが、ドラゴンの住むダンジョンと俺達の住むダンジョンはそう離れていない。早ければ数日以内に戦いを仕掛けられ、一週間後には戦いが始まる。と言った状況も考えられるので残りは時間が出来てから考える事にする。


「ドラゴンですか……」

「ああ、クリストンはドラゴンとの戦闘経験があると聞いたからな。現状の戦力でどうにかなりそうかどうかの意見を聞きに来たんだ」

「そうですね……ドラゴンと戦う際に最も厄介なのはその頑強さです。生半可な攻撃では傷一つ付かないのですから、ですが彼方から出向いて来ることが分かっているなら十分に勝算はあります」


 ノワールからクリストンはドラゴンとの戦闘経験があると聞いたので先に他言無用と言いつけてから話を聞くと、ダンジョン内の戦力でも十分に勝算があると告げた。

 ドラゴンの特徴は数十トンを超える巨体にも関わらず飛行する事と、その巨体に見合うだけのパワー、火などを始めとする特殊なブレス、そして何より生半可な攻撃では傷一つ負わない頑強さなどだという。これと言った弱点が存在せず単純に生物として強い。それだけで生態系の頂点に位置する存在なのだ。

 だがそんなドラゴンも完全無欠と言う訳では無く、極少数だが討伐されたと言う記録も存在する。単独で討伐しようものならそれこそ英雄と呼ばれるような偉業だが、防衛戦となればその難易度は大きく下がると言う。


 待ち受けるドラゴンをこちらから出向いて討伐する事は難しい。だが襲撃してくることが分かっていて、対策をするだけの何かがあるのなら十分に対処できる相手でもあると言う。

 分かり易く言うのなら城壁に大量の古城兵器を設けたりすることだ。人が剣などの武器を用いて戦った場合はこれ以上は無い強敵だが、防衛戦ならば大砲などの古城兵器を用いる事で対処は可能となる。

 普通は襲撃を知ってからの準備など到底間に合わないのだが、今回の場合俺がいる。クリストンには能力全てを話している訳では無いのだが、城壁を用意できるのだがら古城兵器も用意できると考えているのだろう。そしてそれは正しい。


「それなら早めにこの事を広めて兵を募らないとな。クリストンも信用出来そうな人間から少しずつ広めてドラゴンとの戦いに備えてくれ」

「分かりました」


 早速だが今回の自体の解決策も見え始めたので内心安堵する。ドラゴンについて俺は伝聞と資料でしかその存在を知らなかったので実際に戦闘経験があるクリストンの存在が今は心強かった。

 クリストンとは実際に戦った経験を生かしてのアドバイスを聞いてから別れた。やらなければならない事は多いが無謀な戦いでは無いと分かるだけで幾分気は楽になる。

 今回の敵はただのドラゴンでは無くドラゴンをベースにしたダンジョンマスターなので他にも何かしらのモンスターを召喚して来ることが予想できるが、それは俺が当初人型モンスターを召喚できたことから竜種、亜竜の類が召喚可能と考えて対策を練った。


 会議を開いて現状の報告とそれに対する対処などを話したり、実際に古城兵器を運用する上での問題点、試行実験などを行いながらも慌ただしい日々を過ごしながらもその日は来やってきた。


 徐々に勢力圏を広げていた竜が住むダンジョンが、俺達のダンジョンとの空間を繋いで来たのだ。



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