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ダンジョンメイキング~吸血鬼と作るダンジョン王国〜  作者: 数独好き
第一章 ダンジョンマスターと吸血鬼
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第三十二話 会議


「改めて名乗ろうか、俺はゼロ、このダンジョンのダンジョンマスターをやってる」

「私はノワール。ノワール・エルランド、元エルランド王国の王女よ」

「クリストンと申します。元ですがエルランド王国で騎士をしていました」

「アルテリオです。まあ下っ端ですが財務に携わっていました」

「お前らみたいに特にこれといった肩書なんか無い……クルトだ、元農民だが呼ばれて来た」


 外では街造り進められている中、今後主要となりそうな人間を一度集めて話し合うことにした。これまでは忙しかった事もあり、お互い顔を知りつつもどのような立場の人か今一理解していない状態でもあったので、それをハッキリさせるといった意味合いも含んでいる。

 選出方法としては街造りを行っている中頭角を現した人や、ここに来る前に重要な地位に就いていた人物、今後必要とされるであろう技能を持っている事などを基準としている。


 そして選ばれたのがこの5名だ。自己紹介した順に説明していくと、まずここのダンジョンマスターである俺、エルランド王国の元王女であるノワール、そこで騎士をしていたと言うクリストン、下っ端とは言え城仕えの役職に就いていたアルテリオ、ダンジョン内の人族からの人望が高かったと言う理由で選ばれたクルトだ。

 クルトには個人でなく人族の仮の代表と言った側面も存在していて、意見をまとめ上げて貰うと言った事も期待していたりする。


「それで今回集まって貰ったのは今後における方針の決定と、俺達の関係性をハッキリさせたいと考えての事だ」


 まず最初に口火を切ったのは俺からだ。収集を掛けたのは俺なので進行役は自ずと俺が行う事になる。


「関係性?」

「そうだ。今のままだと俺達はただの寄せ集めに過ぎない。だが俺がやった事はサンドニア王国に喧嘩を売ったようなものだ。早い内に組織として行動できるようにならなければいけない」


 ノワールの仲間の救出、それは軍隊に奇襲を掛けて戦果をかすめ取ったようなものだ。今後敵視されると言う事は容易に想像できる。


 「それでまず俺が求めたいのはここに居る全員に俺が主であると認めて欲しいと言う事だ。これから先、組織として動くとなればその頭目となる人物が必要になる。その役目を俺に任せて欲しい」


 ここがダンジョンである限りダンジョンマスターである俺は統治者としてこれまでに無いくらい優秀な能力を持つことになる。召喚されるモンスターによる使い捨てに出来る軍事力、召喚能力のよる資源を生み出す力、どちらをとってもこれ以上に無いくらいに優秀だ。何せ時間さえあればほぼ自動的に街を潤すことが可能なのだから。

 だが、統治者として優秀な能力と、統治者として優秀というのは似ているようで決定的に違う。何故なら能力だけが優秀なら別に俺が統治しなくても結果は変わらないからだ。

 別の誰かが統治し俺がその補助に回る。それでも結果は変わらない。俺が優秀なのではなく、俺の能力が優秀なのだ、統治者として優れた人物を据えれば総合的にはそちらの方が上なくらいだ。


 それでも俺に引く気は無い。もし仮に俺以外がトップに立ったらどうなるか。まず確実に俺の能力を利用するだろう。俺の能力は軍事や経済その両方で大きく役に立つ。放置されると言うことはまずない。

 そして利用するとすれば俺から自由を奪おうとするだろう。なにせ絶対に失ってはいけない存在だ。常に目が届く場所で監視しときたいと思うのも無理はない。だがそんな事、俺には許容できない。


 周囲の反応を伺う。まず異論が無さそうなのはノワール、クリストン、アルテリオの三人だ。ノワールには予め話を通してあるし、残りの二人はノワールに従うつもりのようだ。

 そして残りはクルト、何か考えるような表情をしている。反対とまではいかないが何か言いたげではありそうだ。


「お前は、あー王様になりたいって事か?」


 言葉に迷いながらもクルトはそう問いかけて来た。


「まあ、そうなるな」


 特に否定もせずに頷く。実際ノワールの望みを叶えつつ俺の希望を叶えようとすると、このような結果に落ち着くのだ。ノワールの仲間を助けつつ安全を保障する、それでいて俺の自由も害さない。それは簡単なようでいて思いのほか難しい内容なのだ。

 権力が欲しいかと言われるとそうでは無いが、俺が自由を得るにはそれが必要となる。


「……何でだ? 俺の勝手な思い込みかもしれねぇが、お前特に権力とかそこまで欲してる様には見えねぇが」

「欲しい訳では無くても、必要となる事はあるんだ。理解は出来なくてもそう言うものだと思ってくれると嬉しいな」


 簡単に事情を説明するとやはりと言うか、分かったような分からないような微妙な表情をされたが

一応の理解は示してくれた。他の人達はノワールが反対しないなら……と消極的賛成のようで特には何も言ってはこない。



「特に反対は無いようだな。なら次はこれからの事について話し合うか……そうだな、知らない人もいるだろうからまずはこの大陸の戦力図について説明しよう」


 大陸の全貌が描かれた一枚の地図を机に広げる。正確な地図を言うのは軍事機密らしいのだが、DPで換算すると大した量で無かった。どのような基準で決まってるのだろうか?


「まずこの大陸の存在している国はサンドニア王国、ガンガニア王国、オスカ連邦、ユグドラシルの四つだ。少し前まではエルランド王国と言う国も存在していたのだが、今はサンドニア王国に占領されてるな」


 線を引いて大陸を五つに分ける。その後エルランド王国と書いた場所の上に占領とメモする。

 これに苦い顔をするエルランド王国出身の三人、彼らにとってはまだ半年も経って無い出来事だからだ。


「そして俺たちが今いる場所がここ、サンドニア王国の南部にこの辺りだな」


 地図の一点に丸を書き現在値と書き込む。不明けの森はサンドニア王国とエルランド王国両方の土地に面した場所にある。その中でも俺のダンジョンはサンドニア王国寄りの場所である。

 

「サンドニア王国ってのはデカいのな」

「そうね、ついでに言わせて貰うと人口でも圧倒的よ。だから残りの国々は同盟を組んで対抗しようとしていた」


 ノワールが五つに分けられた大陸の四つを結んで同盟と書き込む。同盟を結んでいる四つの国の国土全てを合わせてもサンドニア王国には届かないのだ。その巨大さが分かるだろう。

 大雑把な人口で言うと吸血鬼の国エルランド王国10万、獣人の国オスカ連邦で100万、エルフの国ユグドラシル50万、ドワーフの国ガンガニア王国70万と言った所だ。これがサンドニア王国を除いたこの大陸の国家の人口である。

 だがサンドニア王国は分かっているだけで人口1000万を超えている。サンドニア王国以外の国すべての国の人口を足してようやく五分の一を超える程度だ。

 人口が少なく感じるのはこの大陸自体がそこまで大きく無いのと、人類の生活する事が出来る生存圏が少ないからだろう。不明けの森のように強力なモンスターが住む土地では人は生き残る事が出来ない。点在する村などはいつ壊滅の危機が訪れるか分からないし、街と言えるような規模にする為には人々を守るための城壁が必須となる。食物連鎖の頂点が人間ではない割と人には優しくない世界なのだ。それでも戦争を辞めないのもまた人間なんだが。


「この戦力差で何故戦いになっているかと言うと、それはサンドニア王国の政治形態のお蔭なの。サンドニア王国と名乗ってはいるけど、実際は多くの都市国家の集まり、正式な王と呼べる存在はいないの。それぞれが独自の考えで動くから纏まりが無い」


 サンドニア王国に幾つかの丸が書きこまれる。その一つ一つが孤立した都市、それぞれに長となる人物が存在し表向きは協力しつつも潜在的には敵対している。

 お互いを警戒してるが故に思い切った行動に移すことが出来ず、この戦力差にも関わらず拮抗した戦いを演じてしまっていたのだ。


「だけどその戦いも今回で終わってしまった。小出しに出された戦力でもエルランド王国は耐え切れなかったの」


 エルランド王国滅亡の理由、それは長寿種が故の出生率の低さだ。聞いた限りだと人族に比べて10分の1とかそこらしか無いと言う。

 短い期間で散発的に繰り返される戦争は確実にエルランド王国の戦力を削っていった。戦いが起きれば人は死に、その死は国力に直に直結する。エルランド王国もただやられていた訳では無いが、それでも根本的に数が違い過ぎたのだ。

 エルランド王国は消耗し、その限界を悟ったサンドニア王国は本腰を入れた部隊を編成、それがエルランド王国の滅亡に繋がったのだと言う。前回の軍隊、あれは幾つかの都市の混成部隊で今までと比べても

かなりの数投入していたのだと言う。

 ノワールの父であるエルランド王国国王は戦力差を理解すると即座に亡命を決断、大陸唯一の他種族国家であるオスカ連邦に多くの難民を抱えて逃げ込んだ。国としての形を失いつつも多くの人を生き残らせることに成功したのだ。


「……長くなったが説明はこんな所か、これから俺達が取るべき方針を決めようか」


 全員が現状を正しく理解したと判断し、ようやく本題に辿り着く事が出来た。国家間の関係、現状の説明など、全て話すだけで数時間も掛かってしまった。


「まず決まってるのはダンジョン内に街を作り上げる事と、そこの統治は俺が行うと言う事だ。それを考慮した上で他国に対してどのように接するか、それを決めなければならない。それぞれの意見を聞かせて欲しい」

「そうね、私からの提案は、オスカ連邦、ガンガニア王国、ユグドラシル、その同盟に私達も入るべきだと考えるわ。現状のままだと戦力が足りてない。今のままサンドニア王国と敵対したらこのダンジョンは滅びてしまうわ」

「だが、それは戦力的に難しいくないか? 俺達は現状600人程度しかいない。今のままだと同盟に入ると言っても上手く使われるだけだと思う」

「だよな。おれには国がどうのこうのとか言われてもピンとこねぇが……他の所は最低でも数十万って数がいるんだろ?」

「現状では無くて将来的にはの事よ。ゼロの能力なら養うだけならいくらでも可能でしょ? それを利用して少しでも多くの数を揃えるの。そうすれば他の勢力も放置できなくなるわ」


 話し合いは長引き、それこそ深夜にまで続いた。誰もが現状の不味さはよく理解しているのだろう。色んな意見が出て、その全てについて詳しく話し合った。メモに使った紙も書き込みで一杯になり後で別の紙に内容を整理し直す必要があるだろう。それくらいには濃い内容の会議だった。


「そう言えばこの国の名前はどうするの? いつまでも無名のままって訳にもいかないでしょ?」

「国? いやまだ国というような規模では無いだろ」

「何処にも属して無い勢力なのだから、国を名乗っても構わないと思うわよ。それにあまり引きのばしたりすると、色んな所から妨害が入ったりするでしょうからね」

「そんなものか」


 ノワールが言うには、国家の樹立、それが他の勢力からして好意的に受け止められる事はまず無いらしい。国同士の関係とは極論リソースの奪い合う敵だ、自国の資源や技術を狙ってくる敵、そんな存在が増える事を良しとする国など中々居ない。

 しかも俺はダンジョンマスターと言うハンデまで背負ってしまっている。

 能力的にはこれ以上無いくらいに魅力的だが、その名は悪い意味で有名だ。人類の敵、モンスターの主、地下に住まう悪魔、このような二つ名が大陸中で呼ばれる程度には。

 そんな俺が外の勢力と関わった後に国を名乗ろうものなら、ダンジョンマスターである事を理由に全力で妨害、排斥されるだろう、とまで言われてしまう。

 それならいっそ、勝手に国を名乗ってしまい、認めない国は無視を決め込み、攻め込んで来たら全力で抵抗する事で無理矢理、認めさせればいいとノワールは言う。一度関係を作ってから対話で国として認めさせるより、そちらの方が遥かに楽らしい。


「そうだな……ヘステア、ヘステア王国とでの名乗ろうか」

「ヘステア王国……それはどんな意味が込められてるの?」

「ヘスティアという神の名前から来てる。その神は『炉の女神』……『家庭の守護神』と言われているんだ。それを広義に受け取って『国民を守ってくれる国』と言った意味からとってる」


 ヘスティア神は少しアレな伝承が多いギリシャ神話の神の中では屈指の人格者だ。広義に受け取るとしても、少し解釈に無理がある気がするが……まあ、いいだろう。




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