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ダンジョンメイキング~吸血鬼と作るダンジョン王国〜  作者: 数独好き
第一章 ダンジョンマスターと吸血鬼
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第二十八話 吸血鬼救出作戦⑦〜脱出編〜

 オルスさんは行ってしまった。限りなく不利な戦いに。接近して斬りかからなければならないオスカさんに比べて、相手は念じるだけでオルスさんを殺す事が可能だ。もしも不意打が成功したとしても即死させなければ相打ちにまでもっていかれてしまうだろう。

 それなのに何故か安心できる。この人なら任せても大丈夫だと無根拠にそう感じてしまう何かを持っているのだ。


 そしてそれから程なくして、首輪を付けている一人から首輪の主との繋がりが消えたと伝えられた。あの人は当然の如く成功させたのだ。

 そうなったからには後は逃げるだけだ、だが、今の俺達の居る場所と指揮官の寝床はそれなりに離れた場所にある。オルスさんの合流を待つとなるとそれだけ逃げ遅れる人がでる事になる。

 オルスさんが引き受けてくれた役目はそれこそ作戦の成否に関係なく危険な役目なのだ。


「俺達も行こう。一人でも多く生き延びるんだ」


 ワーワーと外が騒がしくなり始めた。指揮官の死亡に加えて大量のモンスターが襲撃して来てパニックになり始めたのだろう。

 モンスターが襲撃してきたら普通は指揮官に指示を求める。だがその指揮官が突如死亡したらどうなるか?

 その結果がこれだ。どちらも非常事態、混乱から立ち直るにはしばらくの時間が必要になる筈だし、その時間は俺達に逃げ出すための猶予になる。


 着込んだ鎧を身に着けガシャガシャと音を立てて陣地内を走り出す。逃げ出す人全員にはここの軍隊に似た鎧を付けて貰っている。少しでも脱走がバレるのを遅くするためだ。

 逃げ出す人員の中には女子供もいたので本物の全身鎧だと走る事が出来なくなってしまうので、見た目だけの張りぼてだが。

 一応ある程度戦える人には名乗り出て貰い本物の鎧と剣を渡しておいた。基本は逃げ出すのが目的だがいざとなれば一戦行わなければならないからだ。俺のも一応本物だ。魔力で全身を強化すれば俺でも何の問題無く走る事が出来る。


「な、なあ、何が会ったんだよ」


 周囲のただ事で無い状況に寝起きらしい男が肌着だけで近寄って聞いてくる。俺はそれに焦った風を装って答える。


「森から大量のモンスターがやって来た」

「も、モンスター?」

「俺達は隊長に言われて他の奴らにもこのことを伝えなきゃならない。後から合流するから同じ隊員の奴らを起こして東側の陣地まで行って防衛に参加してくれ」

「わ、分かった」


 よく見れば不自然な点はいくらかあるだろうがまだ周囲が暗いと言う事と伝えた情報が情報なだけに特に疑いもせずに頷いて自らのテントの中に走って行った。多分仲間を起こしに行くのと、武器でも取りにいったのだろう。


 俺以外にも多くの人が道すがら襲撃の事を叫んで戦力を偏らせていく。指揮官の不在でこの混乱を早々に収める存在はいない。この混乱の中一気に逃げ出してしまおう。


 実際の所、召喚したモンスターたちの脅威はそれ程のものでは無い。確かに数は多い、だが統率は取れず、個々としてもそれ程強いモンスターは召喚出来ていない。そうするだけのDPの余裕が無かったからだ。冷静に対処されてしまえば簡単に殲滅されてしまう。

 この陣地に残っている多くの人間は傭兵や兵士といった戦いを生業にする人間だ。それらの存在を俺は舐めていない。寧ろ警戒し正面から戦わない様にしているくらいだ。

 モンスターと言う目に見えた危険があるからかこの世界の人間は俺が知るよりもよっぽど強い。人は武器を持っても肉食獣には勝てないと思っていたのだが、そんな常識はこの世界では通用しそうもない。


「おい、待て!」


 不意に声を掛けられて立ち止まる。ここで下手な真似をすると敵だとバレると思ったのだ。パニックになりつつも冷静な思考を残している人間と言うのは存在する。声を掛けて来たのはその内の一人なのだろう。


「伝令兵に確認させたがどうも襲撃してきたモンスターはさほど強力な奴では無かったらしい。だが、数が多いので鎮圧には時間が掛かりそうだ。俺も前線に出るから付いて来い!」


 それだけ告げて踵を返して歩き始める。どうも付いて来ると疑っていないらしい。着こんでる鎧も他より立派な物に見える。年齢は若そうだが、多分貴族の子弟とかその辺りの人間なのだろう。

 だが、ここで付いていったら逃げ出さなければならない方と逆に進むことになる。どうするか……


「おい、早く行くぞ……ん?何だその赤いのは……ぐぼぉ!?」

「ちっ!!」


 動かない俺に苛立ったのかこちらに振り返り再度命令しようとした時、モンスターに襲われない様に用意した赤色の目印に目を付けられたのだ。

 モンスターの知能の低さからこれくらい分かり易い目印を用意しないといけないのが裏目に出た。咄嗟に言い訳が思いつかなかった俺は目の前の男を全力でぶん殴る。


 魔力で強化された拳は、完全に油断していた男の顔面を思いっきり打ち抜く。その際何かが砕けたようば感触があったので多分鼻の骨は粉々だろう。

 だが一瞬だけ何かにぶつかった感触もしたので障壁を身に纏っていたのかも知れない。俺はまだ常時発動する程の技量は無いが、ある程度習熟した魔法使いは魔法障壁を身に纏って戦うと聞く。不意打の一撃で気絶してしまったがこの男、それなりに厄介な相手だったかも知れない。

 殺してしまうかもしれないと思ったが下手に手加減せずに殴ったのは正解かも知れない。


「お、おい今の……」

「やばそうなモンスターが襲撃してきたみたいだ。こいつは俺に死ねと命令してきた。俺はもう逃げる。起きたら殴った事で罰せられるからな……」


 咄嗟に思いついた嘘を吐きながら、お前はどうする?と視線で問いかける。手は腰にある武器に置いていつでも抜ける体勢だ。逃げ出すのを邪魔するなら殺す。と意思表示しているのだ。

 偶々見ていた男も巻き込まれて死にたくは無いのだろう。心地よく道を譲ってくれた。


「わ、分かった。止めないからさっさと行ってくれ」

「ああ、邪魔したな」


 時間を無駄にロスしたし騒ぎも起こしてしまった。運が悪かったと言えばそれまでだが……隠密性を重視して周りから見て不自然ではない速度で走ってたのが悪かったな。

 それなりに時間は経ったのでそろそろみんな陣地から逃げ出せている頃だろう。それなら俺もここに居る意味は無いと、全力で肉体を魔力で強化し、みんなの元に走るのであった。


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