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ダンジョンメイキング~吸血鬼と作るダンジョン王国〜  作者: 数独好き
第一章 ダンジョンマスターと吸血鬼
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第二十六話 吸血鬼救出作戦⑤〜作戦開始〜


 二日後、予想通り軍隊はやって来た。ここは彼らの帰還場所まで直線上にある場所なのでよっぽどの事が無ければここを経由すると分かっていたのだが、何らかのアクシデントがあって違うルートに行ってしまった、などと言う事が無くて一安心だ。


 これから俺は人を殺す。


 ノワールの仲間を助け出す。言葉にすればこれだけだが、その方法には時間を稼ぐためにモンスターに襲撃させると言うものが混ざっている。どう考えても死者が出るだろう。

 俺自身に特に何かをしてきた相手でも無い。ノワールの為に……いや違うな。俺がそうしたいが為に俺は人を殺すのだ。


 この戦争で俺が知っている事はノワールから聞いた事しか存在しない。情報源がそれしか無いから仕方が無いのかも知れないが、視点が偏ってるとしか言われたら反論する事はできない。

 だが知ってしまったのだ。ノワールがどれだけ必死なのか、それを見て俺は決めた。ノワールの味方をすると。

 この行動が今後にどのように転がるかは分からない。だが決めたのだ。身勝手と言われるかも知れない。だがそんなの関係ない。俺は俺がそうしたいから戦争に介入する。


 太陽が茜色になり軍隊は野営の準備を始めた。俺達が隠れていた森からは多少離れているが、それは仕方が無いだろう。普通モンスターが出没する森に野営をしたりはしない。

 だが目視出来る距離にあるとも言える。モンスターが襲い掛かって来たら対処するだけの時間はあるが、それと同時に脱走者が出たら同時に対処するには少し厳しいだろう。


 いくつも張り巡らされたテントは喧騒で騒がしいが、それも長くは続かない。数時間も経たないうちに軍隊は静かになっていった。幾つかの明かりが見えるがそれだけだ。さっきまでの騒々しさは収まり、大半の人は寝たようだ。


「よし、作戦開始だ」


 まず、大量のモンスターを待機させている場所に向かう。森のそれなりに深い場所だ。探そうとしなければ簡単には見つからないだろう。その数は万を超える。単純な数だけならあの軍隊も超えている。


「これが鳴ったらあの野営地を襲え、その時はこの腕輪をしてるやつは襲うなよ」


 腕に着けてる赤い腕輪を見せながら命令する。モンスターに個人の判別なんか出来ないので、こういった分かりやすい目印を付けなければいけないならない。戦闘中そこまで判断する力は無いかも知れないが保険程度にはなるだろう。一応実験では上手く行っていた。

 それと開始の合図として遠隔で音が鳴らせるマジックアイテムを置いて置く。価値としては最底辺だが当たったからには有効利用しよう。

 命令を伝え終えた俺はモンスターたちから離れて再び野営地の方に歩き始めた。ここからが正念場だ。




 ざく、ざく、ざく、


 何ともないただの足音が無駄に大きく聞こえる。隣で見えなくなって歩いてるノワールの呼吸の音さえ鮮明に聞こえてくる。今は妖精たちに透明になる魔法を掛けて貰っている。正確には光に干渉して目に映らないようにしているらしいのだが……まあそこはいい。

 問題は音は消えないって事だ。当然のように道が整備されているという訳では無いので地面は砂利で一杯だ。出来る限り静かに歩いても多少の音はなってしまう。


 更にはそこらかしこに男たちのいびきや寝言なども聞こえてきて、その度に起きて来るんじゃ無いか不安になってしまう。ここは敵中のど真ん中。見つかったらただじゃ済まないだろう。

 幸い見つかる事なく野営地に中心近くまで進み吸血鬼たちが居るテントまでたどり着く事が出来たのた。

 実際には10分も掛かって無いのだろうが体感では無限のようにも感じた。ノワールはこんな状況でも落ち着いてる。俺にもその強心臓を分けて欲しい。


「やれやれ、見張りしてろ、だなんてお貴族様はこれだから」

「ホントだよ。お高く止まりやがって。どうせ逃げやしねぇよ。あれだろ?大半の奴らは例の首輪を付けられてるんだろ?」


 見張りだが、会話からして貴族では無い。よって魔法は使えないと考えていい。

 隣に居る筈のノワールの服を引っ張って仕掛ける事を伝える。事前に決めてたように俺が右でノワールが左だ。

 音を立てない様に静かに後ろに回り込み、隙を見て片腕で首を、もう片方の手で口を塞いだ。


「んんー!!」


 脱出しようともがくが、魔力で強化された俺の腕は外せない。念のため口にも手を当てているが多分言葉を話すことなど出来ないだろう。もごもごと何かを言おうとするが言葉にならないまま男は静かになった。殺してしまったかと思い口元に手を当てると、フューフューとやや擦れた呼吸音が聞こえてほっとする。見苦しい事に俺は自らの手で男を殺していないことにほっとしてしまう。これからもっと人を殺すと言うのに。


 深呼吸して気分を落ち着かせてから、気絶した男をテントの近くにある椅子に座らせる。居眠りしてるように見せかけて少しでも時間を稼ぐためだ。

 ノワールの方も上手くやったみたいで気絶した男が倒れていた。魔法を使ったノワールの腕力は成人男性よりよっぽど強い。心配する必要も無かったか。


「上手く行ったな」

「そうね、今の内にテントに入ってみんなに状況を伝えましょう」


 小声で小さく呟き合った後、テントの中に入っていった。




 テントに入った俺達は、取りあえず妖精たちに透明化の魔法を解除して貰った。そして代わりにテントの中に防音魔法を張って貰う。外に音が漏れないようにだ。

 急に現れた俺達に外の物音を聞いて起きたらしい数人が驚いたような表情をした。そしてその中にノワールがいる事が分かると表情を更に変えた。


「……ひ、姫様!!」

「静かに。助けに来たのよ。……悪いけど現状を教えて貰える?捕まってるのは何人?首輪を付けられたのは?怪我人は?首輪の主人に登録されてるのはどんな人物?」


 咄嗟の状況にも驚いてはいるようだが、声を抑える事はしている様だ。防音魔法と言っても万能ではない。うるさすぎる様なら黙らせることも視野に入れてたのだが問題無い様だ。


 問いかけて来た吸血鬼の男が落ち着いてきたのを見て改めて周囲を見渡す。テントの作りとしては他のより少し大きい程度か。捕まってる吸血鬼も特に縄などで縛ってる感じはない、ただ、全員が首元に同じ首輪を付けられている。あれが奴隷の首輪か……


「つ、捕まってるのは364人です。その内首輪を付けられてるのは200人弱、怪我人は60人程です。首輪の主はここの指揮官で初老の金髪の男です」


 よし、後のノルマとしてその指揮官の男の殺害だな。首輪とは服従させる為のマジックアイテムで登録した人間の意思で好きに首を絞める事が出来ると言うものだ。これをどうにかするには主人に登録した人をどうにかするのか特定のマジックアイテムを使うしかない。

 そして俺達はそのマジックアイテムを持っていないので指揮官をどうにかするしかない。そっちを優先しなかったのは首輪の主が誰かと言う確証が無かったからだ。ただ主になるには首輪を付けてから目の前でそれに魔力を注ぐ必要があるので聞けばわかると考えていた。


「それでそのぉ……そっちの男の人は誰なんですか?」


 ああ、そういやまだ説明してなかったな。






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