第二十二話 吸血鬼救出作戦①〜準備編〜
アンダーコアについては一先ず決まった。奔放過ぎる妖精たちに自由にさせる事への不安はあるが、悪い事にはならないと思っている。
これで妖精族との約束である住居や食事、娯楽についてはこれで十分だろう。住居としては世界樹のレプリカ、食事はアンダーコアで制限はあるものの自由に出せる。娯楽も玩具類を二百近く渡した。
これからのDPはノワールの望みである吸血鬼たちの救出に使う事になる。具体的な方法についてはこれから煮詰めていく必要があると思うが近い内にダンジョンから出る事にはなるだろう。
不明けの森を抜ける方法は妖精族の誰かについて来てもらう事で解決する。息をするように魔法を扱える妖精が一人いるだけで問題無く森を突破する事が可能になるのだ。
出立は三日後を予定している。時間を掛ける程に戦力が整うが時間を掛け過ぎれば敵軍は本拠地に到達してしまう。軍の移動手段は徒歩だが、既に一月近い時間先に進まれているのであまり時間に余裕がある訳でも無い。寧ろよく間に合う目途が付いたものだ。
救出メンバーは俺とノワール、それと妖精族の中から志願してくれた二人だ。俺がいなければ圧倒的な兵力差を埋める事は出来ないしノワールがいなければ助け出そうにも信用されない。妖精族からは二人しか出ていないのは隠密性を考えての事だ。妖精族は数が集まると自然と騒がしくなる。二人が大人しくさせる事が出来る限界だろう。
これはあくまで俺とノワールの問題なので妖精族には協力して貰える報酬としてDPを渡すことになっている。
作戦内容は救出からの逃走、警戒具合によっては一度か二度戦う必要も出て来るだろう。正面切っての戦いで勝つのは難しいが俺の能力を上手く使えば撹乱させる事には可能な筈だ。戦いにならないのが一番だが状況によってはそうなってしまう事も視野に入れなければならない。
妖精達に外のモンスターを狩って来て貰いながら、俺とノワールは地図を睨め付けながら意見を出し合った。大まかな方針、作戦については予めある程度決めてあるのだが、具体的な方法、移動手段や想定される問題、その解決法などは出来る限り考えておく必要がある。
俺がいるから食事や睡眠の場所については悩む必要が無くても基本的に旅慣れていない俺には分からない事が多い。ノワールも俺よりはマシだがそれでも基本的に部下が用意してくれていたらしくあまり詳しいとは言えなかった。
色々な本を読み漁り、問題点を考え出しても思わぬ落とし穴が生まれてしまう事はよくある事なのでいくら考えても考え過ぎると言う事は無いものだと思っている。
そして話し合いに一区切りついた所でノワールに疑問に思っていた事を聞く事にした。
「それにしても、ノワールは戻らなくてもいいのか?」
ノワールの居た国、エルランド王国は戦いが始まる前に戦争が始まる前に、敗戦濃厚だと考えて早々に逃走を開始していた。敵の目的はエルランド王国の首都を手に入れる事だ。なので早々に逃げ出してしまい他国へ亡命して被害を減らそうと考えたようなのだ。国として滅びようとも国民を守り戦力を維持すれば再起は可能だと考えていたのだろう。
だが、逃げ出す相手をそのままにしてくれる程、敵は優しくはない。当然の如く追撃部隊を出した、逃げ出すと言っても当然の如く生活の為の荷物なども持ち出さなければならないので足が遅くなる。追撃部隊に対処するために足止めを用意する必要があった。そのための足止め部隊、ノワールもそれに参戦していたらしい。
そして当然の如く負けた、そもそも時間稼ぎが目的なのでそれを考えれば仕方が無いのだが。それでも負けたのだ。その時多くの人が死んだが生き残った人間も居る。ノワールもその一人で、生き残りはしたものの捕まり捕虜となったのだ。幸いだったのは正規の部隊に捕まったため非道な真似をされる事が無かった事だろう。戦利品として国に連れ帰られる事が決められ、その帰還の途中に隙を見て逃げ出した。後は知っての通り不明けの森に逃げだし俺と出会った。
ここで俺が言った戻るとは他国へ亡命したノワールの国の人間の所へと言った意味だ。エルランド王国自体は滅びてしまったが、そこに住んでいた人の多くは健在だ。ノワールもそこの姫君だったのだから戻れば歓迎されるに間違いないだろう。
「戻る気は無いわね。それよりもここに居る方が今後の為に繋がるもの」
ノワールが言うには亡命先で歓迎されるかは分からないから、その場合の受け入れ先を俺に求めていると言うのだ。本当に色々考えているのだと感心してしまう。
二日目、この日は妖精達の協力により召喚出来るようになったモンスターの確認をする事にした。妖精達に聞いても漠然とした事しか分からないので実際に召喚してみて確かめるのだ。
この時に移動に適したモンスターを探し出して、それに騎乗してみたりもした。いざとなったら不格好でも荷物の様に自らを積み込んで移動しようとしたのだが、思いのほか上手く乗れてそんな真似をせずに済んだことを喜ぶのだった。
それ以外にももしかしたら、と言う可能性に賭けてマジックアイテムを召喚したのだが殆どは役に立ちそうにない物ばかりだった。
一番使えそうなのがマジックバックと言う見た目以上に物を入れる事が出来るバックだが、その性能はピンキリで今回当たったのはそのキリに分類される物だった。
それでも嵩張る上に俺の弱点でもあるダンジョンコアの持ち運びが楽になるので全く役に立たなかった訳では無いが……
三日目になり、作戦決行の日がやってきた。相変わらず木々の所為でよく見えないが天気は快晴、移動の妨げになる事もなく余計に体力を消耗する事も無い。
騎馬の代わりにバルコンと言うモンスターを二体召喚し乗り込む。バルコンはトカゲに似たモンスターで体長五メートルを超え、人一人乗せても揺るがない安定した走りを見せてくれるモンスターだ。
これの背中に鞍を載せて口元に手綱を付け、俺の命令も併用すれば優れた乗り物になってくれるのだ。
「さて、行こうか」
「ええ、行きましょう」




