第十三話 冒険者について
ダンジョンマスター生活十一日目。
この日は午前中は魔法などの訓練に当て、午後は狩りをすることにした。
昨日のである程度不自由ない生活が出来るまで家具類を揃える事が出来たので、本格的にDPを貯める事にしたのだ。目標であるノワールの仲間の救出だが未だにいい案は出ていない。何をするにも基本となるDPが足りていない。このままちまちまと狩り続けていても間に合わないのだが、現状では他に選択肢が無いので出来る事からやろうと考えているのだ。
「武器かマジックアイテム……選ぶとしたらどっちだ?」
「……安定を考えるなら武具でしょうね。マジックアイテムはランダムだから運要素が高すぎるわよ……家庭で使われるような物が出ても困るもの」
「だが、武器を用意しても使いこなせる人間がいないだろ……」
俺の剣の腕は素人以下だ。身体強化して無理矢理振っているだけに過ぎない。出力が高いからどうにかなってるがそれだけだ。強力な武器を手に入れても上手く扱えはしないだろう。
「それでも戦力自体が上がるのは変わらないでしょ。むしろ未熟だから強い装備で補うのよ」
「そう言うものか……だがそもそもマジックアイテムってどんなものがあるんだ?」
「それこそピンキリよ。家庭用の火を起こす物から戦争用の兵器。冒険者の道具まで数えきれないほどあるわね。魔力を含んだ、もしくは使う道具は全てマジックアイテムだからね」
「それは確かに博打だな……だが俺が武器を持って多少強化するより可能性はあるのか?」
「どうでしょうね……正直な所、博打に頼るのは時間的にギリギリになったらにしたいわね」
「可能性があるうちは堅実にか……まあ現状だと博打すら出来ないってのが正解だけどな」
「言わないでよ……」
マジックアイテムを手に入れるには一回1000pt、再びジャイアントベアー狩りをしたとして一日200ptと少し、ノワールの魔力や俺の血液量を考えると頻度は二日三日に一度といった所か。
「それにしても冒険者の道具……冒険者ってどんな職業なんだ?」
「冒険者はモンスターの狩ってその素材で生計を立てる人ね。文字通り冒険する者、危険は大きくて身を崩すのが大半で成功する人なんてそれこそ一握りよ。あまり勧められた職では無いわね」
「かなり辛辣だな。恨みでもあるのか?」
「人の国に入って国民を誘拐するような相手に好意なんて抱ける訳ないじゃない」
冷たい目でそう告げるノワールは本気で嫌ってるようだ。冒険者……悪い言い方をすると家の後を継げなかった人が職に困って選ぶ職業だという。結構な数が居るみたいだし金の為なら何でもするような人間も居るみたいだ。
「そんなのがたくさんいるなら治安とか平気なのか?」
「さあ? そもそも私のいた国にはいなかったもの。冒険者が居るのは人族の国のみ、人口が多いからそんな無謀な事をさせる余裕があるのでしょうね」
この大陸は人族……所謂普通の人間が勢力の大半を占めているらしく。他の種族は協力して生存圏を維持している状態らしい。
ノワールの国は人口僅か30万人弱、人以外で最も多いとされる獣人でも100万に満たないと言われてる。一方人族は分かっているだけで1000万以上、正確にはもっといるだろうと言われている。
全体的に数が少ないと感じるのは大陸自体がそれなりの大きさでしか無く、強力なモンスターの存在が人の生存圏の大半を奪っているかららしい。そんな状況でも戦争をするのが人間らしいともいえるが。
「まあ何をするにしてもまずはptを貯めないとな」
そうして予定通り午後はジャイアントベアー狩りに精を出したのだった。