第十二話 リフォーム
「思ったより上手く行ったな」
「ええ、あまり特殊な動きをしないモンスターを選んだしね。威力は高いけど動きは単調だし防御を抜ける攻撃さえ出来ればそう手こずる敵では無いわよ」
「そんな物か」
あんな凶暴な熊が手古摺る相手じゃ無いとかとんでもない世界だ。文明レベルや使われている武器はともかく魔力……魔法の存在によって個人の戦闘力で言うなら元の世界とは比べ物にならないらしい。
ただモンスターの方もそれに合わせたかの様に強力で結局の所、人と野生の生き物の強弱関係は変わらなそうだ。いや、街を滅ぼすモンスターが存在する事を考えるとこっちの方が酷いのか?
「それよりDPはどれくらい入ったの?」
「今調べる……36ptだな。元々が18ptだったから、残りが54ptになるな」
ダンジョン内で生物を殺すと死体を回収するよりもDPが多くなる。一種のズル防止だだろうか? DPを貯めたければ殺せと言われているような気がする。
ちなみにジャイアントベアーの召喚に必要なDPは72pt殺すの召喚コストの半分のptになるらしい。
そしてこの後も同じことを五度繰り返し、合計六頭ものジャイアントベアーを討伐する事に成功した。216pt、今までの約七倍近い数値だ。
ダンジョンマスター生活十日目。
昨日のでノワールの魔力が大分減った事もあり、今日の狩りは中止にした。俺の魔力を渡すにも魔力自体は膨大だが血液の量は一般人と変わらないので吸血も頻度は考えないといけない。体調不良で一撃喰らいましたでは笑い事にならない。
「さて、昨日貯めたDPを何に使うか」
今日の分も入れて264ptまで貯まっているので出来る事はそれなりに多い。武器を買い足してもいいし、家具を揃えてもいい、殺風景なダンジョンだ、欲しいものはいくらでもある。
「取りあえずベットが欲しいわね。それと出来れば部屋の内装も」
「……そうだな。まずは最低限の生活環境を、このままだといつか気を病みそうだ」
真っ白な部屋にずっと居ると言うのは思いの他精神的に辛いものがある。あまりの酷さに変化を求めて危険だと分かりつつも外に顔を出してしまうと言えばどのくらい酷いか分かるだろうか?
取りあえず部屋の改装をすることに決めた。リフォームだ。
まず先に俺の部屋からする事に決まった。話し合いの結果使っていいDPはお互い100ptだ。
まず部屋の壁を一気に模様替えする。ダンジョン全てでなく個室のみで20pt、真っ白な壁から洋風の壁に和風には少し割高なので諦めた。その後20pt使ってベットを出す。更に本棚とクローゼットを召喚し漫画や雑誌、などの娯楽本の類も揃えいく。それでも残ったDPは少し考えてテーブルゲームにした。ノワールが暇そうな時間が多いので誘ってやってみようと考えたのだ。
「それは何?」
「将棋、オセロにチェス、囲碁、とメジャーなテーブルゲーム一式を揃えてみた。暇してる時間が多そうだから一緒にやろうと思ったんだが?」
「……それはありがたいわね。正直出来る事が少なすぎるのよ」
「だろうな」
俺は魔法の練習をしてるからいいけど魔力に限りがあるノワールはそうはいかない。俺に教えると言っても魔法の練習は基本反復練習を繰り返すだけだから暇だろう。
仲間の救出方法も現状ではそれ以前の問題だ。まず俺達だけでは森から脱出する事すら難しい。DPの収入源を増やすにも地道にモンスターを狩る以外には思いつかず手詰まり感がある。気分転換の道具は悪く無い選択肢の筈だ。DP的には誤差の範囲内だし。
「合計94ptか……6pt余ったけど現状だと欲しいものがあっても足りないな」
「次は私の番ね」
俺の部屋を出てノワールの部屋に移動する。部屋はさっきまでの俺の部屋と同じ真っ白な部屋だ。端っこに転がってる毛布に違和感を感じてしまう程だから末期と言えるだろう。
「何が欲しいか決めてあるか?」
「取りあえず細かい所は後で言うからゼロの部屋と同じ風にしてくれる?」
ノワールの指示に従って部屋を模様替えしていく。基本は俺と同じだが家具類は俺のより少し上等な物を選び、追加で鏡台も手に入れていた。
正直、見た目の好み云々言ってるノワールには共感出来なかった。家具なんてある程度丈夫で壊れなければいいと思ってしまっている。
その後は幾つかの本も欲しがった。実用書や学術本が中心で本気で日本の知識を覚えようとしているみたいだ。後で俺も貸して貰おう。
最後に浴室に移動し残ったDPを使って風呂も新調し浴室も模様替えしていく。石鹸やシャンプー、風呂桶なんかも追加で用意する。ドラム缶は廃棄した。