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エメネア王城潜入

 夢の始まりは、小さな嘘だった。


 母を亡くした幼い翔太に、悲しげに微笑む父が告げた言葉。


――お母さんは遠い遠い空にいて、翔太のことをいつも見守っているから


 もはや三流ドラマでも言わないような、使い古されていて、ありふれていて、だけど愛に溢れた嘘。『死』という概念を理解できず、大好きな母の不在を嘆く翔太を気遣う、父の優しさだった。


 その日から翔太は、ふとした時に空を見上げるようになった。


 いなくなってしまった母の姿を求めるように。


 翔太を見守っているという母に、自分の元気な姿を見せるように。


 そして、いつか空を飛んで、母に会いに行くことが翔太の夢になった。


 父に「お母さんに会いに空に行く」と言ったら、酷く悲しげな顔をされたが。


 とはいえ、さすがにそんな父の言葉をいつまでも盲目的に信じるはずもなく、小学生に上がってすぐくらいには、翔太は母の死を理解できるようになっていた。どんなに空を探しても、母はどこにもいないということも。


 だが、真実に気付いたあとでも、不思議と翔太の空への想いが消えることはなかった。母の姿を探して空を見上げているうちに、いつのまにか空そのものに惹かれていたのだ。


 壮大で美しい、あの空に……


 それに……もしかしたら翔太は信じていたのかもしれない。


 一度、自身の死を迎え、リオンとして転生した今でもなお、心のどこかで……


 あの空の向こうには天国みたいなところがあって、母はそこから翔太をずっと見守っているんじゃないか。空を飛べば、そんな母に近づけるんじゃないか、と……自分が成長した姿をもっと見てもらえるのではないか、と……


 現実的で合理的な普段の自分には似合わない、酷く子供じみていて、夢見がちな空想。


 だが、それでもいい。それでいい。


 どんなに夢見がちで馬鹿げた空想だとしても、翔太が夢を、そして空を求めた気持ちは空想なんかではないのだから。


 そして、その夢も今は……





「計画通り、城門の警備は南門に集まってるみてぇだな」


 エメネア王城の北、手薄になった内壁の門を睨みながら、ジェイグがほくそ笑む。


 反乱軍の主力は王都の南部から侵入し、真っ直ぐに王城を目指す。


 その計画を反乱軍から事前に入手していたリオン達は、警備が手薄になるであろう北門から城への潜入を画策。当初の読み通り、反乱軍を迎え撃つために城門の警備兵のほとんどが南門に向かってしまっている。しかも外壁門の爆発騒ぎや、騎士宿舎に仕掛けた下剤の効果により、警備そのものの人手が足りていないようだ。


 その結果、北門に残っているのは騎士が四人に一般兵が十人程。その程度の人数なら、今のリオン達が短時間で制圧することは容易い。


「ファリンが動くのを合図に飛び出すぞ。ティアは弓で狙撃を頼む」


 ファリン以外の四人が無言で頷く。それを確認したリオンも物陰に身を潜めて、静かにその時を待つ。


 門を守る警備兵に不審な動きはない。緊張の面持ちで周囲を警戒している。敵の戦力のほとんどが南門に向っているとはいえ、この非常時だ。警備兵の焦りや不安が、離れたところに隠れ潜んでいるリオン達の許まで伝わってくる。


 だが、連中は気付いていない。


 その頭上で、辺りを照らす魔導灯の光を避けるように近づいた小さな闇が、自分達を見下ろしているということに……


 ザシュッ、という不快な音が響く。


 そんな得体の知れない音の発生源を探して、警備兵は警戒と焦燥を強める。それぞれが武器を構え、周囲の気配を探っている。


 ただ一人を除いて……


「がふっ!」


 騎士の一人が、突然、苦悶の声と共に夥しいほどの血液を吐き出した。周囲を警戒していた騎士も兵士も、全員が声を耳にした瞬間に、その騎士の方へと視線を向け……そして凍り付いた。


 その騎士の背後には、まるで寄り添うように闇の塊が佇んでいた。魔導灯の灯りの下において、その光の全てを飲み込むような闇。そして、騎士の胸からは金属の刃が……


 突然の事態に思考が追いつかない。その騎士本人も、周りにいた仲間も、何が起こったのかわからないといった様子で呆然としている。


 それが致命の隙であることすら気づかないままで……


 ヒュッヒュッという甲高い音が、空気を切り裂くように飛来する。


 それは騎士たちにとっては割と耳慣れた音のはずだった。日々の訓練の中で、弓を扱うこともあったのだから。だが胸を貫かれた騎士の姿に呆然としていた警備兵たちが、その音の正体に気付くことはなかった。


 矢で頭部を貫かれて絶命した兵士。その他の騎士や兵士たちも、呆然としていたそのわずかの隙に接近していたリオン達の手によって、あっさりと討ち取られている。ある者は首を飛ばされ、ある者は上半身と下半身が分かたれ、ある者は先の騎士のように胸を貫かれて。


「あっけないわね~」


 兵士の胸を貫いていたナイフを抜き取りながら、ミリルが拍子抜けしたとでも言いたげな表情でぼやく。ミリルの本来の武器は魔銃なのだが、発砲音が響く銃は暗殺には向かないので、今はナイフを使っている。


「まぁファリンがこいつらの注意を引きつけてくれたからな。そうでなければ、もう少し手間取っていたかもな」


 それでも警備兵の全滅は変わらなかっただろうが、下手に応援を呼ばれると面倒なので、速やかにことを運べたのは上々だ。


「そうニャそうニャ。このファリンちゃんの手際の良さを、もっと褒め称えてくれても良いニャよ?」


 そんな上機嫌な声をあげながら、警備兵達の中心に今も佇んでいた闇の中からファリンが姿を現す。漆黒のマントに身を包んでいるので、ちょっとわかりにくいが。


「ああ、助かったよファリン。このあともこの調子で頼む」

「ニャフフ。まっかせるニャ!」


 リオンがフード越しにファリンの頭を撫でると、ファリンがゴロゴロと嬉しそうな声を上げる。フードを押し上げる猫耳と相まって、まるで本物の猫のようだ。


 それを見ていたティアが、何か羨ましそうな視線を向けてくるが、今は気付かなかったことにしよう。


 ちなみにさっきの闇は、ファリンの属性である闇の魔法だ。


 闇属性は他の属性と違って直接的な攻撃手段には乏しいが、隠密行動にはとんでもない効果を発揮する。その闇は外部からの光を吸収するだけでなく、中からの小さな音や匂いも吸収して外に漏らさない。しかも使用者自身はその闇によって視界を遮られたりはしないという優れものだ。


 もっとも、中からの気配遮断の効果は完璧というわけではなく、使用者本人の隠密としての実力が無ければ宝の持ち腐れになってしまうのだが。それに明るい場所では逆に目立つので、使いどころは限られるだろうが、それでも今回のように奇襲をかけるにはうってつけの力だ。


「ここからは作戦通り、ミリルとファリンは別行動だ。大丈夫だとは思うが、十分気を付けてくれよ」

「「了解ニャ」」


 騎士の一人が持っていた通用口のカギを奪った二人が、先行して内壁を潜り抜けていく。このあと二人は、城内へと続く門とは別のルートで城内へと潜入することになっているのだ。


 二人を見送った残りの四人は、城の北正門を正面突破し、一直線に国王の下へと向かう。


「一気に駆け抜ける。遅れるなよ」


 リオンの号令を合図に四人は一斉に駆け出す。


 王城を囲う内壁と、城門の間には人の気配はない。


 城門付近に見張りが二人ほどいるようだが、さすがに内壁を越えて侵入者が来るとは思ってもいなかったようで、注意が散漫になっている。漆黒のマントを被り、夜の闇に紛れて駆け抜けてくる四人に見張りが気付いた時には、すでにティアの弓の射程内。黒塗りされた矢を見切ることもできずに、見張りの一人は心臓に矢を受けてあっさりと倒れた。


 もう一人の見張りが侵入者の存在を知らせようと動き出すも、すでに遅い。


 四人の中から疾風迅雷の勢いで飛び出したリオンが、瞬く間に城門までの距離を駆け抜けると、そのまま見張りの兵士に一閃。見張りの兵士の体を斜めに両断する。


 見張りの兵士からすれば、自分の身に何が起こったか全くわからなかっただろう。この五年の修行でリオンの居合は、もはや神速と呼んでも過言ではないほどの速度を誇る。抜刀から納刀までを一瞬のうちに終わらせるため、並の実力では視認すらできないのだ。斬られた相手は自分が何に斬られたのか、そもそも自分が斬られたことにさえ気付かないまま、その命を絶たれるだろう。


「ジェイグ、頼む」

「おう」


 絶命した二人の兵士を一瞥さえせずに、リオンは追い付いてきたジェイグに素早く指示を出す。


 内容のほとんどを端折った指示だが、事前の打ち合わせ通り、ジェイグは淀みなく城門へと近づいて行く。


「そんじゃ、これを設置してと……よし、オッケーだ。皆、下がってくれ」


 城門下部にソフトボールくらいの大きさの魔導具を設置し終えたジェイグ。魔導具に繋がった魔力を伝達する糸、導魔線を握ったまま、他の三人の許へと駆け寄ってくる。


「あとはファリンたちの合図があるまで待機だな」

「ああ。大丈夫だとは思うが、念のため、周囲の警戒は怠るなよ」


 ティアの光魔法で姿を隠すことは可能だが、闇魔法と異なり、四人の人間の姿を隠し続けるのは相当な集中力と魔力を必要とする。これからの戦いを考えれば、あまり魔力を浪費するのは避けたい。よって、魔法は使わず、魔導灯の範囲外に身を潜め周囲の気配を探る。


 もっとも、人手の多くは反乱軍を迎え撃つために南側の内壁に向かっているため、北側には人が向かってくる気配はなかったが。


 それから数分、四人は息を潜めて、突入の合図を静かに待っていた。


「来た!」


 城を挟んで反対側から轟く爆音。それに続いて城内のあちこちからも爆発が起こる。


 南側の爆発は反乱軍と内壁南門を守る騎士たちの戦いが始まった証。今頃、ミリル特製の小型魔導具が騎士や一般兵を相手に猛威を振るっていることだろう。まぁ騎士ならば魔法を使って回避することもできるだろうが、それでもその威力は十二分に脅威のはずだ。


 そして城内の爆発はファリンとミリルだ。


 これは城内への出入りに使う通用口や、南の城門の内側を瓦礫によって塞ぐことで使用不可能にし、城の内部を孤立させることが目的だ。外からの増援を防ぐと同時に、標的を逃がさないためでもある。


「ジェイグ!」

「おう! 派手に行くぜええええ!」


 合図を確認したジェイグが導魔線に魔力を込める。


 魔鉄で作られた細いワイヤーを、ジェイグの魔力が伝う。それが魔導具に到達した瞬間、目も眩むような閃光と、耳をつんざくような爆音が轟いた。離れた物陰に隠れていなければ、リオン達も少なからずダメージを負っていたかもしれないほどの爆風が通り過ぎる。衝撃が収まった頃を見計らって物陰から身を覗かせると、五十センチ近い厚さの城門に、人が二、三人通れるくらいの穴が開いていた。


「相変わらず、ミリルの魔導具の威力は半端ねぇな……」


 ぽっかりと開いた穴を見つめながら、ジェイグが苦笑いを浮かべる。


「気持ちはわかるが、ボーッとしている暇はない。急ぐぞ」


 そんなジェイグの背中を軽く叩いて急かすと、リオンは真っ先にその穴を潜り抜けて城へと入っていく。アルとティアもその後ろに続き、ジェイグがそれを追う。


 ぶち破った城門を潜り抜けた先は、赤いカーペットが敷かれた幅広い廊下だった。壁には豪華な装飾を施した魔導灯と、エメネア王国の紋章である龍を刺繍した旗が並んでいる。入り口の脇に置かれた龍の銅像が、招かれざる客を威圧するようにこちらを睨んでいた。


 最後に門を通り抜けたジェイグが、土の魔法で穴を塞ぐ。簡易的な物なので、壊すことはできるだろうが、それなりの時間は稼げる。敵の侵入口から外に逃げようとするものはそういないだろうし、正面からの敵はリオン達が逃がさない。なので、外からの増援を少しの間防げればそれでいいのだ。


「王のいる場所まで、一気に駆け抜けるぞ」


 ジェイグの魔法が完了すると、リオンが号令をかける。


 どうやら廊下の先からこちらに向かってくる人の気配がするが、それは想定通り。城のあちこちで爆発を起こしたので、そちらに向かった者も多いだろう。むしろ想定よりもこちらに来る敵の数は少ないくらいだ。


 敵の接近にも構わず、リオン達は一斉に走り出す。長い廊下を三分の一ほど進んだところで、ようやく敵の姿がはっきりと視認できた。


 エメネア王国の上級騎士鎧を身にまとった男が三人。得物はおそらく両刃直刀のミスリル製騎士剣サーベル。王国騎士の中でも上位の者にしか与えられない装備で完全武装した精鋭達だ。


「ティア!」

「任せて!」


 後ろを走るティアに指示を出すと同時に、リオンが速度を上げる。そのリオンの速度に付いてくる気配は間違いなくアルだろう。リオンほどではないが、その身のこなしは他の五人の中でも群を抜いている。


 騎士達は剣を正眼に構えてリオン達を迎え撃つ腹積もりのようだ。リオンとアルの接近速度を目にした以上、下手に動くよりはそれが正解だろう。


 だが、電光石火の速度で走る二人さえも追い越して、煌めく尾を引きながら光の矢が騎士たちに迫る。


 それも九本も同時に。


「なっ!?」


 その光景を目の当たりにした騎士達の驚愕の声がリオンの耳にも小さく届いた。


 その光の矢はティアが放った魔法矢である。五年前には三本が限界だった魔法矢の同時射出は、今のティアは最大十五本まで同時に放てる。連射や精密性を求める場合は、本数は減らさざるを得ないが、九本くらいならば前方を走る仲間を避けて、敵のみを射抜くことは容易い。


 もっとも、ある程度腕の立つ魔弓使いでさえ、十本を放つくらいが限界なことを考えれば、どれだけ今のティアの実力が突出しているかは容易にわかるだろう。


 そして、騎士達が驚愕する理由も。


「くそっ!」


 まるで意思を持っているかのような軌道を描き、三人の騎士に魔法の矢が集束する。一人につき三本ずつ向かってくる矢を剣で弾き、あるいは飛び退ることで、どうにか全ての矢を回避する騎士達。


 だが、その隙に至近距離まで接近していたリオンとアルへの迎撃は間に合わず、左右両側の騎士二人がほとんど同時にその首を刎ねられていた。


「貴様らぁ!」


 生き残った中央の騎士が、仲間を切り殺したリオンとアルに憤怒の叫びをぶつける。しかし、リオンとアルはそんな騎士には目もくれずに、二人の騎士を斬った勢いのまま、廊下を駆け抜けていく。


 思わず振り向いて追いかけそうになる騎士だったが、燃え上がるような熱い殺気を感じて咄嗟に剣を頭上に掲げる。


 そこには鉄塊と表現すべき大きさの大剣。騎士のサーベルとは比べ物にならない程の大きさのジェイグのツーハンデッドソードが、恐るべき速度と威力を伴って振り下ろされていたのだ。


 騎士のミスリルサーベルとジェイグの魔鉄製大剣のぶつかり合う金属音が、広大な城の廊下の隅々まで響き渡る。


 通常、ミスリル製の剣と、魔鉄の剣が激突した場合、込めた魔力にもよるが、ほとんどの場合はミスリル製の剣が勝利する。さすがにたった一度の激突で折られるようなことはないが、それほどミスリルと魔鉄の強度と魔力融和性には差があるのだ。


 だが、ジェイグの大剣は、リオンの刀の製法を応用し、高価なミスリルを刃鉄はがねの部分だけに用いることで強度の差を埋めている。


 そんなジェイグの力作とその重量、そしてこの五年で爆発的に成長したジェイグの膂力をもって振り下ろされた一撃を、咄嗟の防御で受けきることなど騎士の力をもってしてもできるはずがなかった。


「ガハッ……」


 圧倒的な力を持って、受け止めた騎士の剣ごと強引に押し込んで、騎士の体を縦に両断する。騎士の手から無傷のミスリルサーベルが、赤い絨毯のうえにポトリと落ちる。


 大剣を振り切った残心も一瞬のこと。追い付いてきたティアと共に、すぐにリオン達の後を追う。


「ジェイグ、その剣どうするの?」


 走り出す瞬間に、騎士の持っていたミスリルサーベルを拾ったジェイグにティアが声をかける。


「せっかくのミスリルだからな」


 こんなときでも鍛冶師としての性分が顔を出してしまったようだ。まぁ拾う動作は一瞬だったので、走る速度には影響はないし、大剣を留めていた背中の金具に装着すれば戦いの邪魔にもならない。それに強力なミスリルソードは、何かの役に立つかもしれないと思ったのだ。


 何しろ、この先に待ち受けているのは国王を護衛する精鋭中の精鋭。いくらジェイグの自信作とはいえ、誰かの武器が使えなくなる可能性だってあるのだ。持っていて損はないだろう。


 そんな短い会話を終え、二人は先を走るリオンの背中に追い付いた。


 急いでいるとはいえ、二人とあまり距離が離れないように、リオンもある程度速度を落としていたし、ジェイグ達も全力で追いかけていたのだ。


 だが……


「出過ぎだ、アル! 一人で先に行くな!」


 先を走るリオンよりも更に前を、単独で先行するアル。


 幸い、今は敵の姿は見えないが、この先はさっきの騎士達よりも手強い相手が待ち受けているはずだ。アルもかなり強くなったとはいえ、一人で立ち向かうには危険すぎる。


「大丈夫! 心配ない!」


 後ろを振り返ることなく、リオンの声にアルが応える。


 ジェイグやティアがリオンと同じように声をかけて制止するも、アルは聞く耳持たない。戦いの間、魔法で強化している聴力によって、「オレが仇を討つんだ……オレが」というアルの呟きがリオンの耳に届いた。


(クソッ、アルの奴、焦り過ぎだ! 何とかして追い付かないと……)


 声を掛け合わずとも、他の二人もリオンと同じ考えだったようで、ほとんど同時に走る速度を上げる。敵の気配を十分に探れる速度を維持していたのだが、こうなってしまっては仕方がないだろう。


 先行するアルが長い廊下の先の階段を駆け上がっていくのが見える。階段の先は国王の謁見の間であり、その先に国王の居室がある。


 アルから少し遅れて、三人が階段を一気に駆け上がる。二階に上がるにしては随分と長い階段を登ると、一際大きな扉が姿を現した。謁見の間に通じる扉だ。外に通じる城門と異なり、まるで国王の威厳を示すように、大きな龍の装飾が施されている。


 そんな大扉が、今はアルの手によって開かれようとしている。かなり大きな扉だが、人一人が通れる程度に開くだけならば、今のアルの力なら簡単だろう。現にたった今、リオン達の目の前で扉がわずかに開き、その隙間からアルが中に入っていく。


「アル!」


 しびれを切らしたように、ジェイグが必死の形相でさらに速度を上げる。リオンとティアも同じように一気にアルとの距離を縮める。


 幸いにも、謁見の間の大きな扉は開くのにも少し時間がかかったのだろう。アルと三人との距離は先ほどよりもかなり縮まっていた。


 謁見の間を走り抜け、玉座の近くまで迫っていたアルの背中にもう少しで追い付く。


 そう三人が考えたまさにその時だった。


 玉座の斜め後方、王の居室へとつながる通路を隠すカーテンの陰から、突如現れた人影が、玉座に向かってひた走るアルを目掛けて猛然と突進してきたのだ。


 その様は、まるで砲弾のよう。


 あっという間にアルとの距離をゼロにして――


 銀色に光る刃が、アル目掛けて振り下ろされようとしていた。


闇魔法初登場です。

闇って聞くと、ゲームなどの影響か、悪役のイメージ満載ですが、

この物語では、そんなことはありません。

まぁ暗殺者に都合の良い魔法ではありますが、

相手の実力によっては、殺気を放った瞬間にバレることが多いです。

決して万能ではないということですね。

余談ですが、適性属性と本人の性格は一切関係がありません。

続きが書かれないことで有名な漫画の某能力のように、オーラの系統で性格診断ができたりしません。

まぁメインキャラの設定では、多少イメージを意識してたりはしますけどね。


次回は、いよいよ宿敵との決戦です。

そして、私の中二な感性がちょっぴり顔を出したりしますww

明日の22時過ぎに投稿予定です。


感想、ご意見、誤字脱字の報告等お待ちしております。

厳しいご意見なども真摯に受け止めさせていただきます。

よろしくお願いいたします。

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